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黎明の月 8日 大海原と大海賊 その2

 海賊襲来!


 帆船の甲板は一気に緊張に包まれた。


「海賊旗確認しろ!」

「船員配置に着け!客は邪魔だ!船室に退避させろ!」

「おらおら、ここからは俺たちの出番だ!お客様は船内に引っ込んでな!」


 怒声が甲板に響き渡り、船員たちの動きが慌ただしくなる。


「海賊って本当にいるんだなぁ」

「物語の中だけだと思っていたのです」


「おいおい、のんきなこと言っている場合じゃないだろ」


 船員に激を飛ばしながらロワイユ船長が、顔を引きつらせながら嘆いた。


 客には船室に下がらせているが、サラ達に船内に行けとは言わなかった。

 他にも何人かは甲板に残っている。

 甲冑をまとうもの、魔法の杖をかかげる者がほとんどだった。

 皆冒険者だった。

 海の上で、海賊に襲われれば生きるか死ぬかしかない。

 危機に瀕した際には助け合う。それが海の掟であり、冒険者の務めだった。


「海賊旗確認!あれは・・ウェーバー海賊団です!」


 ロワイユ船長の顔が緊張に強張る。


「すごい海賊なのですか?」

「この辺りを縄張りにしている海賊団だ。最近、警備船団と戦闘してかなりの痛手を受けたと聞いて安心していたんだがなぁ」


 船員の一人が、歯ぎしりする。


 望たちの見ている前で、海賊船はみるみる近づいてきた。


「大きい・・・」


 海賊船は望たちの帆船よりも一回り以上大きかった。


「手旗信号確認!」

「信号読み上げろ!」


 マストの上、双眼鏡で海賊船を確認していた船員が信号を読み上げる。


「「航行中の帆船に告ぐ、直ちに降伏せよ」です」


 その声を聞いた望ははっとしてロワイユ船長を見た。

 海の男、ロワイユ船長はにやりと笑う。


「・・・・まさか・・・・この流れは・・・・」

「ノゾーミどうしたのです」


 心配げなサラ。


「返信はどうします?」


 ロワイユ船長の隣に立つ副船長と思われる男が、船長に言う。その顔は、半ばあきらめたような表情だった。

 無理もない、冒険者が乗っているとはいえ、この船は帆船でしかない。

 軍艦でもない船が、海賊に勝てる道理はなかった。


「バカめと 言ってやれ」

「は・・・?」

「「バカめ!」だ!」


 ロワイユ船長の言葉を聞いて、副船長は天を仰ぎ、望はぐっと拳を握りしめた。


「つまり、どういうことなのですか?」


 サラが問う。それは問いかけというよりも確認だった。


「なぁ~に、簡単なことだよ」


 望は周囲の冒険者たちを見渡す。


「つまり、海賊をやっつけるってことさ」

「はいなのです!」


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