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閑話 それぞれの旅立ちと目標

 無事にクエストを終えた四人。

 翌日。

 ギルドへの報告は、ルカリオとミランシャが行くことになった。


 ギルドへの報告を済ませ、報酬をもらい受ける。

 口止め料なのか、少し多めの報酬をワキルから受け取った。


「どうだい、面白いクエストだっただろう?」


 にやにやと笑いながらのワキルに言われ、こいつもグルか!と思わず睨み返してしまった。


 何とも煮え切らないクエストだった。

 解決はしたものの、肝心の幻覚魔法の術者は特定できないままだった。館の主のハンブルック卿だけでなく、執事のクローク、メイド達まで調べたが、魔法の痕跡すら全く感じ取れなかったのだ。


「ハンブルック卿の事は心配するな、今回の依頼で最後、そう言っていたからな」


 少しだけ罪悪感があるのか、ワキルが言い訳がましく言った。


「まったく、望とサラには正直なことは言いにくいですね」

「何にしても、被害はなかったんですから、良しとしましょう」


 ミランシャの言葉を聞きながら、ルカリオはため息をつく。ハンブルック卿は決して悪者ではない。少し破天荒なところはあるが、これからこの湖の都を支えていくこの都の領主なのだ。


「私は・・・この都が好き」


 ミランシャがポツリと呟く。

 その言葉の意味を、ルカリオはそのまま素直に受け取った。




 都の中央「酔魚亭」でルカリオ達はサラたちと合流した。

 ギルドへの報告の内容を聞きながら、話の内容は今後の事へと変わっていく。


「サラ様はこれからどうするんですか?」


 果実酒をちびりとやりながら、ミランシャがサラに話を振ってきた。

 今回のクエストを最後に、この都を出発しようと話をしていたからだ。


「私は、一度魔法学園に戻ろうと思います」


 しっかりとした口調で、望を見つめながら、サラはその言葉を口にする。


 秋も深まり、もうすぐ冬が来る。その前に、学園に戻って今回の修行の成果を報告しなければならない。

 近隣は寒さが厳しく、雪が降りだしてしまえばしばらく動くことができないからだ。


「ルカリオはサラ様についていくんですか?」

「いえ、僕は・・できれば別行動を取りたいと考えています」


 ルカリオはサラと望を見つめる。


「三百年・・その間に世界がどう変わったのかを、この目で確かめたいんです」


 城と共に過ごした三百年、今呪縛から解き放たれルカリオは自由の身となった。

 竜族にとっては一瞬にも等しい時間だ。しかし、その一瞬の間にも世界は大きく変わっている。


「ノゾーミはどうするのですか?」


 サラは遠慮がちに望へと声をかける。

 もともとは、すぐに別れるつもりだった。成り行きで一緒になり、生活の術を教えるつもりでクエストを受けそれで終わりにするつもりだった。

 異世界から来たと狂言を言う男とずっと一緒にいるなどと考えもしなかった。

 だが、状況は変わった。

 激変したと言っていい。

 ルカリオを含め、もはや一心同体。魂の繋がり「結魂」


「んーー、どうするかなぁ・・」


 肉にかじりつきながら、望は宙を見つめる。


「最初に俺は・・この世界から逃げ出すことばかり考えてた」


 日常からの逸脱。知らない世界、理の異なる世界。

 言葉以外は何もわからず、右も左も分からなかった。


「オレは何も知らない。この世界の事も、自分自身の事も」


 闇雲に力を使ってきたが、今更になってその力が恐ろしい。


「オレも世界を見てみたいと思っている・・」

「ぞ、そうなのですか・・」


 目に見えてサラがしおれた花のようになっていく。


「では、ノゾーミとはここでお別れなのですか?」

「いやまて、なんでそうなる!」

「えっ?ノゾーミは世界を周る旅にでるのではないのですか?」


 望はサラの言葉にぶんぶんと首を振った。


「おいおい、ナメてもらっちゃ困るなぁ。自慢じゃないが、オレはこの世界のこの世界の新米住民だぜ。そんなレベル1くらいの平民を、お前は見捨てるっていうのか?オレにはまだまだ知らないことがたくさんある。何ができて何ができないのか、この世界にはどんな人種がいてどんな文化があるのか・・そんなのまだまだ知らないことばかりだ」

「それじゃぁ・・・」

「もし、お前が良ければ、その魔法学園ってのを見てみたいんだが・・・どうだ?」


 サラはうつむいた。

 また一緒にいられる。

 それがどうしょうもなく嬉しい。


「しょうがないのです。ノゾーミが一人前になるまでしっかりと教えてあげるのです」

「よろしく頼むよ。先生」

「はいなのです」


「ミランシャはどうするんだ?」

「私、私はこの都に残るよ」

「そうか・・クエストも終えたし、この都に残るのも・・・」

「「「残る?」」」

「そうよ。わたし昨日の館で雇ってもらうことになったの」


 淡々とした口調で、ミランシャは語りだした。

 昨日、執事のクロークから帰り際に声をかけられていたらしい。 

 内容はいたって簡単。


 ハンブルック卿を躾けて欲しい。


 ミランシャは吟遊詩人、各地を旅しその見聞はかなり広い。そして、護身術にも長けている。

 ハンブルック卿の教育係としてこれ以上の人材はなかった。


「給料もいいみたいだし、メイドさんもいっぱいいたし」

「おい、最後に欲望がにじみ出てるぞ」

「・・・とにかく、私はしばらくあの館で働くことになりました」


 あまりにもあっさりとした口調に、望とサラはぽかんとしたまま。ルカリオは思うところがあるのか、納得したように頷いている。


「それぞれが、各々の道を進むことになりましたが、道は必ずどこかでつながります。私たちの出会いが、今後の人生で大きな意味を持ってくることは間違いないでしょう」


 ルカリオがゆっくりとした口調で語る。


「僕も明日にも出発するというわけではありません。クエストの報酬もありますから、しばらくはこの街でゆっくりしたいと思います。その間にみんなでこの街をゆっくり観光したりするのはどうでしょうか?」


 ルカリオはサラに向かってウインクする。


「私も・・私たちも旅の準備をしないといけないのです!」

「おお、そうなのか?今までの装備で十分じゃないのか?」

「冬の旅をナメてはいけないのです!」


 サラが「にぎしっ!」と拳を握りしめた。


「入念に入念に装備を整えなければいけないのです」

「・・・はい、よくわかりました」


 頷く望に、サラは満足したようだった。


「私は明日から館に行かないといけないから、今夜が最後になります」


 残念そうな声でミランシャ。

 望とサラが心配そうにミランシャの顔を覗き込んだ。


「ですから今夜、サラ様と二人で忘れられない思い出をつくろうと思います!」


 輝く笑顔で、サラは宣言した。

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