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梟の月 9日 最弱勇者と幽霊伯爵の館 その15

 二階部分は大広間になっていた。

 その端の方に、大仰な扉が一つ。

 周囲を警戒しながら、四人は扉に近づく。

 

「いいか、何が出てくるかわからない、慎重に扉を開けよう」

「さずが、数々の罠にまんべんなく引っかかった者の言葉は重みがあるのです」

「サラちゃん、地道に傷つくからやめて!」


 扉のノブに手をかけたその時、扉が勢いよく開けられた。


「さぷら~いず!」

 がずん。

「げふっ!」


 内側から開けられた扉が、望の顔面を直撃する。


「ぬおおおぉぉぉぉ!」


 痛みに堪えかね、床の上を転げ回る望。


「・・・・」

「・・・・」

「・・・・どんまいなのです」


 待つことしばし、鼻を抑えながら望がゆっくりと立ち上がった。

 目に涙を浮かべ、瞳は怒りに燃えている。


「おいおい、これはいったいどんなサプライズなんだぁ?」


 今にも飛びかからん勢いで、目の前の男を睨みつけた。

 望の前には、高級そうな服に身を包んだ男と、その後ろに控える執事、クローク。


「いやはや、驚かすつもりが逆に驚かされてしまいました。まさか、扉の向こうに人がいただなんて!」


 煌びやかな衣装、いかにも成り上がりな感じの青年が、四人を出迎えた。


「まさかと思うが・・・あんたはもしかして・・・」


 望がふるふると震える指で、青年を指さした。


「御明察通り、私はこの領地の領主、ハンブルックです」

「・・・・は?」

「・・・・どういうことですか?」

「嵌められたんじゃないのか・・この領主の道楽に!」

「僕たちはまんまと騙されたんですよ」


 サラとミランシャの顔が一瞬で般若顔となる。


「一体何のためになのです?」

「ひっどーい」

「それは本人に聞けばわかるだろう。なぁ、ルカリオ」

「そうですね、ここまでの努力を考えれば、当然聞く権利はあります」


「おい、お前たちはいったい何を言って・・・」


 蒼白になりながら、ハンブルック卿は後ずさりする。

 ルカリオと望は固く拳を握りしめた。


「暴力・・・反対」


「「「「お前が言うなぁ!」」」」


 四人の拳が同時にハンブルック卿にさく裂した。

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