梟の月 9日 最弱勇者と幽霊伯爵の館 その13
「「いいかい、これから意識を集中してみるから」」
ルカリオx2が目を閉じて、瞑想に入った。
全員がルカリオに集中し、固唾を飲んでその挙動を見守る。
しばらくすると、ルカリオは、
「「ああ、そういうことか・・・」」
と、一人納得したように呟いた。
静かに目を開け、サラx8と望、ミランシャを見回す。
それから、ゆっくりと周囲を見回した。
「何か分かったのか?」
「どれが本物なんですか?」
「「ここにいる全員が本物だよ。そして、今僕たちがいるこの場所は、目に見えているのもとは違うんだ」」
ルカリオの言葉に全員が??となった。
「「僕と手をつないでくれるかな? そうすれば分かるよ」」
言われるがまま、望はルカリオと手をつないだ。そして、目をつむり「ああ・・そういうことか」と嘆息する。
「え? どういうこと?」
ミランシャとサラは置いてきぼり状態だった。
「みんなで手をつなぐんだ。そうすればわかる」
すでにルカリオx2と望は手をつないでいる。そこにサラx8が手をつないだ。
サラも手をつなぎ
「「「「「「「「なる程・・」」」」」」」」
と、唸り声を上げる。
ミランシャだけが意味が分からず、ムスッとなる。
「分かりました、私も手をつなぎま・・・」
ミランシャが声を詰まらせた。
ひたひたひたひた。
廊下の奥から、四つん這いになって迫る女の姿が見えた。
こちらに迫ってくる。ゆっくりと確実に。
「望!あの女が近づいてくる!」
「気にするな、それよりも手をつなぐんだ!」
「でも・・・」
ミランシャは絶句したまま動けない。全身が硬直し、意思に反して動こうとしなかった。
「動け・・ない・・・!」
のどがからからになり、声がかすれた。
目の前に迫った女がゆっくりと立ち上がった。紅の双眸がミランシャを睨みつける。
「望・・・助けて!」
「ミランシャ!」
動けないミランシャの腕を、望が強引に引き寄せた。
「あ・・・」
視野の端に、飛びかかる女の姿をとらえながらミランシャはきつく目を閉じる。
同時に目まいに似た感覚に襲われる。
意識がぼんやりとなり、周囲の音がこもって聞こえる。
ふらつきそうになる彼女の身体をしっかりと支えてくれる腕があった。
望だ。望がミランシャを支えてくれている。
「ミランシャ、大丈夫だ」
ミランシャは望の声をとても頼もしいと思った。




