梟の月 9日 最弱勇者と幽霊伯爵の館 その10
暗がりの中をサラとルカリオは進んでいた。
歩く度に床板がぎしぎしと鳴り響く。
そこは屋敷の廊下だった。床に空いた穴に落ち、途中まで望とミランシャと一緒だったが、運悪くはぐれてしまい。二人は廊下へと放り出されたのだ。
廊下はどこまでも続いており明りの届く範囲では果てが見えなかった。
どうやら、魔法で空間がねじ曲がっているらしいということまでは分かったのだが、どうすればいいのかまでは分からなかった。
「いっそのこと、破壊してしまいましょうか?」
「・・・止めましょう。どんな魔法がかけられているのか分からない以上、結果がどう転ぶか分かりません」
サラの提案を、ルカリオはやんわりと退ける。
「それにしても、これはどこまで続くのですか・・」
歩くことに関しては特に問題ないが、こうも同じ廊下ばかりを歩いていると気がめいってくる。
何の目的で、このような魔法がかけられているのか皆目見当がつかなかった。
廊下に罠はない。
扉もなければ窓もない。
暗がりの中、サラの杖の先に灯った魔法の光だけが煌々と輝いている。
「かなりの年月が経っているみたいですね」
床に張られていたであろう紅のカーペット、壁の白い塗装は色を失い木の壁が露出していた。
床もいつ抜けるか分からない程に傷んでいる。
「早くここを抜け出して、ノゾーミたちと合流するのです」
サラの言葉に、ルカリオは静かにうなずいた。




