宵の月 28日 サラ・クニークルス
宵の月 28日 サラ・クニークルス
師匠。お久しぶりです。
師匠のお屋敷を出てからもう2カ月が経ちます。そちらは大事ありませんか?
サヤードは、まだ温かいですが、これから北に向かえば寒さが増してくるでしょう。
それと・・
今日変な男に出会いました。
名前をノゾーミと言います。黒髪のひょろっとした変な奴です。
第一印象で、私は直感しました。
あんまり出会いたくないタイプの人間だ、と。
こういったタイプの人間との出会いは人生時間の浪費です。
しかも男!男は嫌いです。
どんなに嫌いでも、出会ってしまいました。助けてしまいました。
助けたといっていいのでしょうか。その男は小型のグールに追いかけられているうちに森で迷ってしまったようでした。
野党にでも襲われたのか、荷物らしいものは何も持たずに森の中にいたのです。
街道のすぐ横なのに・・あえて、森で迷うなんて変です。
その男は、森に迷っているのだと涙目で私に助けを求めてきました。
グールは追い払いました。そんなこと子供でもできます。グールはとても臆病な動物ですから。
とにかく助けたので、私はその場を立ち去ろうとしたら、その男は私にしがみついてきました。
しかも泣きながらです。男のくせに!
もう、関わりたくないと思いました。
でも、その時に師匠の言葉を思い出したのです。
「困っている者がいれば、手を差し伸べろ。それがたとえどんなクズでも!」
この言葉は、私の座右の銘です。杖にもしっかりと刻んでいます。
そうです。相手がどんなクズでも。助けてあげなければいけないのです。
師匠。とりあえずこの男を町まで送り届けます。
私の邪魔をするようであれば、吹き飛ばすだけですのでご心配なく。