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梟の月 9日 最弱勇者と幽霊伯爵の館 その4

 同じ街にある屋敷に向かうということで、四人の装備は軽装だった。

 サラは昨日のドレスを期待と駄々をこねたが、何が起こるか分からないのでとりあえずは普段の恰好になってもらった。普段の姿になってもらったのには理由があった。

 これは、依頼主に対する牽制。つまりは手を抜かないという意思表示だった。

 ただの依頼であれば、これほどの事はしない。

 しかし、今回は事が事だけに相手方に不信を抱かれてはいけないということに対する配慮と、相手の油断・動揺を誘うための方法だった。

 普段であればここまで込み入ったことを考えなくても良かったのだが、今回はルカリオも望もかなり警戒している。

 というよりも、事件性が高いと踏んでいる部分があった。

 何故そう思うのか、サラとミランシャが理由と問いただしたが、二人の意見は「行けば分かる」というだけで明確な答えは得られなかった。

 先入観を持つと細部を見落とす可能性がある。

 それが望の意見だった。

 なる程と、ルカリオは望の意見を尊重した。

 望はこの事件に関してかなり慎重に対処していた。

 些細な事にも気を配り、見落としがない。

 まるで、このような事件に何度も遭遇したかのような鋭い洞察力。

 今まで見てきた人間とは一味も二味も違うと感じた。

 だから人間は面白い。興味が尽きない。


「さて、着いたぞ」


 望の言葉に、サラとミランシャは顔を上げる。

 サラとミランシャの目に飛び込んできたのは艶やかなメイド服に身を包んだ、文字通りのメイド達だった。

 そのメイドが六人、門の前で四人を待っている。


「すっごーい、これが噂にまで聞いた。お屋敷のメイドなんですね!」


 ミランシャが目をきらきらとさせて叫んだ。


「わ、分かるのか・・この服の良さが!」


 望の言葉にミランシャは大きく頷く。


「当たり前です!いいですね。そそられますね!ふふふふ!」


 望はミランシャを見つめた。ミランシャは同じく望を見つめる。

 見つめ合う二人。

 がしぃ!

 二人は固く握手する。

 ここに「メイド服同盟」が誕生した。


「さあ、サラ様。あの服に着替えましょう!」

「なんでそうなるんですか!」


 サラは赤面しながら叫んでしまった。

 ルカリオは小さくため息をつく。

 ・・・大丈夫だろうか。先ほどまでの自分の確信を疑いたくなってしまった。


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