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生存戦争

生きることとは、戦う事なのだと言った者がいた。

まあ、間違いではないだろう。生きるということは手を変え品を変え、何かと戦う事だ。それは明確な捕食対象との生存競争だったり、同族での(ランク)付け、資源(リソース)の奪い合いだったりする。或いは、己自身との戦いである場合もあるだろう。

何故人は争うのか、と問うのは愚かなことだ。同族とだろうが、己の利害と対立すれば争わない生物の方が少ない。同族でないのなら、争わない理由の方がない。

何故争うのか、そんなものは、戦わなければ己の利益を得る事も守る事も出来ないからに決まっている。多分、得るために戦う人間よりも、失わない為に戦う人間の方が多いくらいだろう。中には、その失いたくないものが狸の皮であるものもいるかもしれないが。

だから、争う事そのものは悪ではない。寧ろ、争うことを忘れれば人はどんどん堕落していくばかりだろう。問題はその先だ。どう争うのか、ということ。武器を以って争うばかりが戦いではない。流血のない争いだってあるし、それがすなわち"平和的な"争いという訳ではない。寧ろ、そんなわかりにくい戦いの方が性質が悪い場合もあるだろう。フェアではない事が多いからだ。

勿論、本当にフェアな戦いの方が少ないだろう。人は皆同じではない。同じでない以上、各々に条件が違うのは当然の事だ。けれど、フェアじゃないにしたって、戦い方がわからない、戦いである事がわからない、というのは不当な事になるのではないかと思う。

己の利益の生むだけを見て、弱者を見捨てるのは、卑怯な事でないのだろうか。そりゃあ、その余裕もないものに助けろと言ったって無理だろうが、それができるだけの力があるのならば。もし、手が空いているのであれば。少し、立ち上がる為に手を貸す位の事は、してもいいんじゃないだろうか。

合理的でない判断ができることが、人の人たる所以なのだから。

おそらく、理想論の類だろう。だが、理想が無ければ夢もない。現実だけを見るのはいきぐるしい。夢に逃げるのは愚かな事だが、夢を見る事自体は許されていいはずだ。それで再び立ち上がれるのであれば、時には足を止めて休むことだって必要だ。常にベストを保つなんてことはできない。生物はそんな風には出来ていない。だから、調子が悪い時には休むことが必要だ。

争いには様々な形がある。競う事だってその一つの形だ。ある意味、最も穏便な争いの形なのかもしれない。だが、競うというのは、争いの前段階でもある。争いの準備としての競いがある。それは、仕方のない事だ。

不思議な事に、競いに順位を付ける事を止めようという動きがあったらしい。負ける子が可哀想だから勝負をつけない事にしよう、と。頭がおかしいんじゃないかと思う。勝てた筈の勝負で勝てないなんて、勝つ子が可哀想じゃないか。

一つを否定するのであればそれに類するものも同じように否定するべきだ。でなければフェアではない。それが別のものだと判断しているのが主観であるのなら、なおさらのこと。主観による判断というのは大抵が不完全で共有されていない。同じ事象を全ての者が同じように捉えていると考えている者がいるならそいつは馬鹿だ。他者にも己と異なる意思があることをわかっていない。

先の話であるなら、それは確か、運動会のかけっこの話だったが、かけっこで順位を付けるのをやめるなら、テストで順位を付けるのもやめるべきだ。だって、負けるのは可哀想なんだろう?テストで点数が出るのは学習の理解度を測る上で必要な事だが、順位は競争心を煽る為のものだ。別に無くたって何が変わるわけでもない。

だけど、勝利がモチベーションに大きく影響するということは、大抵の人に同意してもらえる事だと思う。それも、決まり切った勝利ではなく、敗北の可能性をねじ伏せて得た勝利であればその価値は何ものにも代えがたい。強大なライバルに打ち勝って得る勝利程喜ばしいものはないだろう。

当然と思っているものの価値は低い。それが勝利であれ、敗北であれ、当然と思っていればあまり心は動かない。寧ろ、当然の筈だったことが崩れた方が大きく感動するだろう。そして、どうなるかわからないことが一番面白い。どちらの可能性もあると考えてこそ、挑戦する価値がある。どちらに転ぶかわからない時こそ、その実力がうかがえるというものだ。時の運というのもあるとはいえ。




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