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矮星の静寂 3

 『忌応体きおうたい』。それは、数奇な運命を辿る者らの総称なのかもしれなかった。 

 この國では、皇の人間が生まれるごとに、三歳差までの子供達が六歳時に適性審査を受ける。

 皇族おうぞくの人間の御身に何か起きた場合、処置を施せる身体を探すためだ。

 すなわち、それが 移植をするための臓物提供者――忌み嫌われる適応の身体、『忌応体』である。

 提供者は王族の緊急にいつでも対処ができるよう、城の巨大な敷地の一角に住むようになる。近辺を出ることを許されない代わりに、衣装住を与えられ、なに不自由なく暮らす。世俗から隔離され、提供となる王族の御身が崩御するまで暮らしは続き、御身の血肉になることを教育され、その日を待っているのだ。

 身を捧げる皇族と面会することは適わない。ましてや、傍で仕えるなど生涯叶わない。

 ――それが何故、最も近しい場所に居るのか。




笹目ササメ、やめてぇっ!」

 『忌応体』の目を尖剣レイピアで突こうとした笹目の前に、諸手もろてを広げ制止した者が居た。

 あどけない、十二になったばかりの少女。今にも泣き出しそうな顔で、懸命に手を広げている。

 たった一匹を拘束するために作られたうまやは、獣の匂いに満ちていた。肉食獣のいやしい唸り声が聞こえてくる。さかしい生き物は、得物えものを抜く人間を外敵と見做みなすらしい。恐らくは、厩を包囲している外の軍勢に反応しているのだろう――笹目の一言があれば、彼らはいつでも厩に進撃できた。

 十離れた主君である少女を前に、筆頭側近である笹目は沈着として言い払った。

不可いけませんね。紗銀サギン嬢、こんなことをしては」

 『忌応体』と黒天馬の前に立つ紗銀が、びくりと震える。

 昨夜に降った雪のせいで、屋敷の庭にこしらえた広大な庭園は、薮椿やぶつばき牡丹ぼたんの花のみを残して、一面白く染まっていた。芝生の緑も覆われ、池泉に掛かる橋にも雪が積もっている。

 この埋め尽くす雪の所為せいで、第六皇嗣者だいろくこうししゃである紗銀の足跡は消され発見が遅れた。有ろう事か、接触することのない『忌応体』管理敷地内に踏み入っていたのだ。

 笹目は見た。敷地内の厳重な作りの厩。声のする方を覗いて見れば、幼い少女が 鎖で雁字搦がんじがらめにされた黒天馬のあぎとを擦っていた。ブルル、とその見目麗しい漆黒の馬は、両目を塞がれているにも関わらず、心地良く鼻を鳴らす。やや離れた箇所で、その様子を年上の少年が見ている。気怠けだるそうにしながらも、目を細めて、見守っているように。

 壊しては不可いけないと感じる程の、静謐せいひつで安穏とした空気だった。

 少女がこの國の第六皇嗣者でなければ。馬が漆黒の翼を持つ肉食獣でなければ。『少年』が、少女に献上する臓器を持つ『忌応体』でなければ。

 鳥肌が全身で立つのと同時、覚醒した笹目は抜刀する。優美にして辛辣しんらつ、繊細にして豪胆。殺傷力が低いとされる尖剣を、笹目は自軍に『怒れる尖右せんう』と呼称されるまでに使いこなしていた。斬り込みのはやさ。急所を一動作で貫ける的確さ。何度も突き刺す非情さ。周囲にも畏怖され、敵を殲滅、圧倒してきたのは、笹目の血筋と類稀なる天武の才に他ならない。

 抜刀から相手の体を貫くまで三呼吸も必要としないはずだった。場面を見つけて声を掛けるよりも早く、叫ぶでもなく、諭すでもなく、笹目は 有無を言わさず尖剣で『忌応体』の頭蓋裏まで貫こうとしていた。

 だが、先程の 立ちはだかる紗銀の一言で、動きを止めたのだ。

「ちがうの、笹目……喬地キョウジはなにも悪くない……っ!」

「何が違うと言うのですか? 『忌応体』が國の崇高人あがめびとである第六皇嗣者を、野蛮な肉食獣の厩に監禁した。不可侵ふかしんを犯した存在は、奇禍きかとして処断されるだけのことです」

 紗銀の背後に潜む『忌応体』は、衣食住を保障されているはずが、何故か暮露服ぼろふくで、前髪も目が掛かる程に伸び切っていた。未だ主としての命を発令できない年の主をじっと捉えながら、笹目はえて淡々と話す。

「……貴女は知らなければなりません。まず十人はこの城を追われ働く事も出来なくなるでしょう。部屋付数人と……忌応体管理の数人と」

 抜いた尖剣を眼前に構え直した。紗銀が庇う存在、『忌応体』の様子は窺い知る事が出来ない。この状況で、慄然りつぜんとしているのか、あるいは諦観しているのかさえも。

 昨夜から居なくなったのは、何処で、誰と、何を、していたからなのか――いや、如何して 斬られようとしている存在モノをこんなにも必死に庇っているのか――その理由が、紗銀の背後に潜んでいた。

「手足を失う者が出ます。眼を失う者が出ます。貴女の傍に居なかった罰と、その浅ましい肉食獣に遭遇させてしまった罰と……貴女に献上予定の『忌応体』を、一つ使い物にならなくさせた罰です」

 ならば、その理由を断ち切らねばならない。闇は、光に近付いてはならない。不可侵である絶対忠誠の主に近付く存在は、消さねばならない。笹目の定めも忠義も、行使する権限も、すべて主・紗銀に基づくものと決まっていた。

 黒天馬が気性荒くグルグルと唸る。懇願する幼い主に、笹目は尖端を向けた。実際は紗銀のすぐ後ろに居る『忌応体』に向けてだが、鋭利な針先を前にして、紗銀が息を呑むのが分かった。

「ごめんなさい、笹目、もうしない、もう此処へ来たりしないから……っ」

「いいえ、貴女は何も悪くありません」

 空恐ろしいまでの平坦な調子で答えていく。

「『ロウ』に会わせてって私が無理にたのんだの……だからやめて、笹目っ……!」

「いいえ。今も、この先も、貴女の所為せいには何一つならない。責を負うべきは他に居ます」

 主である紗銀は傷付けずに、背後の『忌応体』を狙い突き刺す。自負があった。狭い厩中で辣腕らつわんを振るえるのは、笹目自身だけだと。

「そして――私はそれをただしていく」

 先を綴り、紗銀の肩を引き寄せ、剣を突き上げたは一時いちどき煩瑣はんさな動作は笹目の目論見通りに、主を傷付けず背後の存在のみを突き刺した。ロウ――喬地キョウジ――おねがい笹目、この子をころさないでころさないで――名を外された存在が、固有名詞で呼ばれていた。紗銀の悲痛な叫びが反響する。どす黒い肉食獣は血の匂いに猛ったのかつんざくようにいなないた。

 厩に残り響く不協和音を掻き消したのは、異変を感じて突入した軍勢だった。

 部下の一人が笹目の名を呼ぶ。近寄ろうとして、中の光景に愕然がくぜんとした。

 笹目の剣は、確かに真正面で『忌み嫌われる適合の体』を貫いていた。あらゆる動物が絶叫し悶絶もんぜつする急所、即ち 目を刺しており、声の有らん限りの叫喚きょうかんを耳にしても奇怪おかしくなかった。

 ――が。紗銀の背後でうごめいていた『忌応体』は、右目に剣先をめり込ませたまま、不敵に笑ったのだ。

「はッ……ガタガタ抜かすんじゃねェよ、命令なしに動けねェ狗イヌどもが」

 ひるんだのは笹目の方だ。『忌応体』の左手が笹目の尖剣を握り締めていた。目玉を貫かれたというのに、何故喚かない?何故笑える?剣を素手で掴める? ――『忌応体』如きが、こんな年端もいかない子供が! 軽捷けいしょうに剣を引き抜き、皮膚を切り裂いた。掴まれていた左手を裂いたのだ。付着した血の泥濘ぬかるみを払うことなく、笹目は直ぐ様二撃目を突く。しかし、紗銀の首元が締め上げられているのを目の当たりにし、手元は狂い、『忌応体』の頬を掠めるだけに終わった。

「紗銀嬢!」

 『忌応体』が紗銀の首元を右肘で固めていた。喉元を締め付けられ、首を締め上げられ、紗銀が小さくく。これでは人質を捕られたと同義だ。笹目は思い掛けない事態に主の名を呼び、冷静さを失い掛けた。

 この機を狙っていたのかも知れない。笹目が自若じじゃくを取り戻し、体勢を整え、三撃目を突くまでの間に、『忌応体』は次なる行動を起こしていた。

「約束、覚えてんだろ? “狂え――片っ端から潰してみせろ”」

 それは、『誰』に向けて話していたことだったのか。 

「……自分の目玉を喰わせれば、コイツは言うことを聞くんだってな……!」

 あろうことか、突き刺された後の左目に指を捻じ込み、眼球をいたのだ。

「莫迦なことを……迷信だ!」

 笹目は我が目を疑った。狂っている。血迷っても出来る筈がない、自分の血を覚えさせる為に、肉食獣に目玉を食わせるなどと!動かずに笹目の剣で目を突き刺されていたのは、感覚を麻痺させるためか。庇う紗銀の背後で大人しくしていたのは、一度ひとたび人質にしてしまえば、こちらの動きをすべて封じられるからか。 だが、『何の為に』? 奴はどうして『笑っている』? 肉食獣の馬が隣に居るというのに――『笑えている』?

 警鐘が鳴り響いたが遅かった。

 えぐられ、伽藍堂がらんどうになった場所。赤や黄色の細糸が飛び出て赤く染まる箇所。尖剣で引き裂かれたてのひらはぼたぼたと鮮血が溢れ出ている。まだ球体と絡み合っている繊維を乱雑にむしり取り、その場に殴り捨てる。一つの球体になった眼球を――迷わず黒天馬の口に押し込むと、『忌応体』は声を荒げた。

「お前らに囲われてる俺じゃねェ。 クソ喰らえだ、全員こいつにやられて――死ね!」

 契機、黒天馬は隻眼の『忌応体』の怒りを謄写トレースしたかのように、一際高く雄叫びを上げた。

 緊縛していた鎖が縄の如く引き千切られるのに時間は掛からなかった。禍々(まがまが)しい大翼がばさりと開く。豪壮な体躯が鉄柵を軽々しく飛び越えた。解き放たれた歓喜からか、暴威ぼういをふるう前の雄叫びか――化物染みた咆哮ほうこう一頻ひとしきり轟かせた。

「化物が……っ!」

 狂気を孕む黒い瞳と、笹目の目が合った瞬間。肉食獣は強靭な体躯に似合わぬ犀利さいりな判断と敏捷さで、対象を定めた。笹目はその化物の目を同じように貫こうと、尖剣を四度よたび振るう。が、肉食獣が先に獲物の急襲に成功した――歯牙を突き立てていたのは、笹目の右腕だった。

 手の形を残したまま、腕が宙に放り投げられる。自分の体から離れた腕の先を、笹目は初めて見ることになった。一瞬にして、右肩から下に掛けての部分が噛み千切られた。どさりと投げ捨てられ、あれが自分の腕だと認識した途端、笹目は声にならない苦悶くもんを上げた。

「――――――!!」

 それは、笹目の絶叫か、怒れる肉食獣のたけりか、気迫に騒然とした部下らの阿鼻叫喚あびきょうかんか。

 黒天馬は、厩内外を固めている笹目の部下らに驀進ばくしんを続けた。咆哮を続ける肉食獣の覇気と場の凄惨さに、部下らはおののく。おくして逃げ出すよりも、黒天馬が軍勢に襲い掛かる方が早かった。部下ひとりの首を潰すか如く噛み付き、半分以上を食い千切って放り投げた。額の角で二、三人まとめて刺し通し、ひづめで五六人をぎ倒した。応戦しようと刀剣を取り出す者の首をもぎ、斬ろうとする者の頭は突き刺し、逃げようとする者の体を押し潰し、暴戻ぼうれい惨憺さんたんたる光景、厩は見る見る間にどす黒い血で染まった。

 笹目は体の血を一気に失い、意識が混濁していくのを感じた。

 膝が折れる。左手の尖剣がすり抜けていった。呼吸が荒くなる。有り得ぬ痛みを受けると、痛覚が消えると聞いたことがあった。脳裏の片隅で、『忌応体』が自ら眼球を刳り貫けたのは、これと同じ状態だったからだろうか――そう思案する。此処で意識が途絶えることだけは避けたかった。部下がたった一匹の馬と『忌応体』に蹂躙され、厩が血の海になっていく様を目に残したくはなかった。笹目は自らの主を探す。紗銀は無事なのか。朦朧とする中で、笹目は一人の幼い少女の姿を探し出した。少女は、笹目の主は、血塗れの少年の腕の中で、泣きながら此方を呼んでいた。

「笹目……笹目、いや、いや、いやあああああっっっ!!」

 視界が滲み、歪んで行く。主である紗銀の叫び声を再び聞きながら、笹目は崩れ落ちた。

 



 大歓声を聞いて、笹目は白昼夢から目醒めた。

 露台バルコニーに立つ自分。見渡してみれば、軍の部下が大勢で屋敷を取り囲み、久稔嬢ひさねじょう、第六皇嗣様、などと湧き立っている。隣国遠征と言う名の奇襲殲滅遂行から戻った笹目は、自軍を鼓舞するために紗銀を露台に立たせていた。隣には紗銀が袴の格好で、右手を大きく挙げ、強いまなじりで階下の群集を見渡している。

 力強い意志を思わせる立ち居振る舞いは、隣国に『魔嬢』と通り名を付けられる程の威厳を持った。『駒』などと本人が気にしており、他の皇嗣者らが『軍の象徴』と軽んじるように、総帥の祖父から与えられた存在意義は、隣国を畏怖する偶像に過ぎなかった。

 今はその名に貶められていても構わない、と笹目は思う。間も無く『魔嬢まじょう』の名は遍く大陸に知れ渡る。他の皇嗣者らは、せいぜいむつの順序がし上がって権威に座すのを、歯軋はぎしりしながら見ているがいい。主の成長を追いながら、笹目はこの少女を『駒』で終わらせまいと誓った。そして、それが出来るのは自分だけだと信じて疑わなかった。

 穢れるのは、自分の手だけで良い。血に染まるのは、すべての憎悪を引き受けるのは、自分だけで良い。それは、忠節と矜持きょうじでもある。役職だけではなく――自身が立てた、たった一つの誓約うけいとして。

笹目卿ササメキョウ――! 高階卿タカシナキョウ――!」

 特別側近二人の名を呼ぶ声もちらほらと聞こえる。同列で呼ばれ、笹目の眉間に皺が寄った。

 紗銀と笹目よりもやや離れた箇所で、怫然ふつぜんとした態度を取る隻眼の男。紗銀が諭して露台に立たせたが、階下の呼び声にも応えず、腕組みをして立っている。『忌応体』が、『卿』を付けられ自分と同じ立場で呼ばれている――笹目は『それ』と同じ扱いをされる行為がたまらなかった。

 六年前、『忌応体』は 特別厩舎に緊縛されている黒天馬を放ち、皇嗣者を人質に、軍の大勢の人間を噛み殺させた。意識を取り戻した笹目は、総帥がその危険物を紗銀の元に置いて、黒天馬ごと軍用に使うという決定を聞いた。希少種で懐かないとされた黒天馬が、『忌応体』の命だけ聞いたことに目を付けたのだ。黒天馬が命を聞けば、軍力は増大する。紗銀を『軍の象徴』に育て上げ、万が一紗銀が負傷しても『忌応体』が傍に居れば換えが利く――決定の前に、部下が大勢なぶり殺されたという事実は消された。

 『忌応体』には元の名が戻され、軍に入隊するや否や、みるみる頭角を現していった。『狂い馬』と畏怖されるようになり、紗銀の右には笹目が、左には『忌応体』の高階が傍に付くのにそう時間はかからなかった。

 皇族おうぞくの人間専用の臓物提供として、献上される適応の体。忌み嫌われる適応。

 身を捧げる猊座げいざと面会することもあたわず、傍で仕えるなど生涯叶わない存在が――何故、紗銀に最も近しい場所に居るのか。

 忌々しく思った途端、右腕が疼いた。食い千切られ、肩から下は全て失った箇所だ。化膿は落ち着き、腐らずに済んだ筈であるのに。

「笹目。貴方も、皆に手を振ってあげて」

 隣に居ながらも佇むだけに留めていた笹目を、紗銀が声を掛けた。

 あくまでも場の中心は紗銀である。離れた箇所でむくれ、階下に応えない高階と違い、傍で身を護る役目の笹目は、丁重に断った。

「いえ、私は。嬢がお応えすれば、みなの士気も上がります」

「笹目はいつもそれね。高階があの調子なのは諦めているけれど――笹目ぐらい、もう少し付き合ってくれてもいいと思うわ」

「……善処します」

「いやだ、責めているわけではないのに」

 紗銀は軽く笑う。垣間見せた優しい表情と、部屋付の者にさせた際どい化粧とが、そぐわなかった。

 いつからこんな赤々としたべにを差すようになったのか。優しい心根を覆い被さなくてはならなくなったのか。外では非情な『魔嬢』としての通り名を持ち、内にも『軍の統率者』としての顔しか見せず、恐らく心情をすべて打ち明ける者など、無に等しいというのに。

 余程難しい顔をしていたのだろうか。歓声が止まない中、紗銀はそっと笹目の右肩に触った。うに失われた腕だ。先程まであった疼きが、ふと消えた気がした。

「――私は、貴方のために何かできたかしら」

 ぽつりと呟いた言葉を、特別側近の笹目は聞き逃さなかった。

「紗銀嬢?」

「何でもないわ。ねぇ笹目。『駒の鳥』は――まだ打ち落とされるわけにはいかないものね」

 笹目を見上げる。隣国の『殲滅』遂行したばかりで参っているだろうに、紗銀は笹目の目をしっかり見据えて、いた。

「一緒に来てくれる? 最後まで」

 蝟集いしゅうした軍の歓呼の声が、こだまする。

 笹目は瞠若どうじゃくした。未だ幼い少女の姿を、今の紗銀と重ねて見ていたのだと自覚した。杞憂きゆうに過ぎない。もう目の前の主は、純真な殻を脱ぎ棄て、躍進すべく、常に前を向いている。駒だけで終わらせたくないという、強い意志を感じる。躍進を見届けたいと願った。否、既に誓っていた筈だ――忠誠と誇りに掛けて、我が主を護ると。

 主の微笑を、笹目は自信に満ちたものと受け取った。仰せのままに、と力強く答えた。

「貴女の道は、この笹目の道です」

 冷たい冷気が肌を刺す。この國にも、また冬が訪れようとしていた。


後1〜2話で『矮星の静寂』篇、完結です。

早く投稿できるよう頑張ります……!;

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