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番外編  5人でのクリスマス

緊急クリスマス企画!

……だったはずなのですが、途中からシリアスになってしまいました。

おかしい、最初はこんな予定で無かったはずなのに。

 コンコン


 俺は迷いの森にある家のドアを叩く。


「はい、いらっしゃいませ」


 そして数秒の内にドアが開かれて中からマージが開けてくれた。


「ユウキさんとカルベルトさん。そしてキッカさん、アイラさんにクロスさんですか……凄いですね」


 マージは俺とカルベルトの他に3人が訪れたのを見て驚いているようだ。


 それはそうだろう。


 何せキッカ達はこのユーカリア大陸を代表する軍のトップという錚々たる陳列だったからだ。


「さて、マージ。今日はユキの世話をしなくても良い。だからカルベルトと共にジグサールに向かってほしい」


 おそらくメイアやフローラもすでに揃っているだろう。


 ジグサリアス王国の要人のみが出席するパーティは明日だから早めに行っておくにこしたことはない。


 ちなみに各国の王を招いてでのパーティは明後日である。


 今日は5人で集まって行うささやかな集まりだった。


「しかし、師匠を置いていくわけには」


 マージはユキと離れることに不安を覚えているらしい。


 瞳が少し揺れている。


「……行くと良い」


 俺は何か言おうとする前にユキの部屋からそんな声が漏れる。


「……これも訓練。仲間との交流を深めておくべき」


「分かりました、師匠」


 俺からするとユキは何を伝えたいのかイマイチ分からなかったが、マージからするとそれで十分だったのだろう。瞳の不安は消えて元の明るい表情を取り戻す。


「ではイズルガルド。2人を頼む」


 カルベルトとマージを乗せたイズルガルドは一つ頷き、翼を広げて大空へ飛び立っていった。


「ほら、ギール。あなたも行きなさい」


 キッカに急かされてギールもイズルガルドの後を追った。


 これは気のせいかもしれないが、最近ギールはキッカと居る事が多くなっている。


 竜と仲が良いのは好ましいことなのかもしれないが、少しいきすぎだと感じるのは何故だろう。


 俺は横に立っているキッカの姿を見ながら思いを馳せる。


 この世界の人間は普通40代、どれだけ生きても60が限界だ。


 何千年も生きる竜からすると俺達の命など朝露にすぎない。


 ……もしキッカがいなくなればギールはどうするのだろうな。


「まあ、考えても仕方ないか」


 それは当事者であるキッカとギール。そして長老のイズルガルドが決めれば良い。


 俺が口に挟む必要はないだろうな。


 そこまで考えた俺はその思考を打ち切った。




 俺がキッカと共に中へ入ると、すでにユキは車椅子に乗ってアイラと談笑をしていた。


「本当に護衛達の体たらくは困ったものです。何度侵入を許せば気が済むのですか」


「……アイラ、あまり苛めちゃ駄目」


「私は苛めているつもりでは」


「結果的にそうなっているんだよ。ね、ユキ」


 クロスの合いの手にユキはコクリと頷いた。


「私はそんなつもりでは」


 ブツクサと文句を垂れて顔を膨らませているアイラがそこにいた。


 感情が薄くなったとはいえ、3人と触れ合うと昔のアイラが戻ってくるんだな。


 俺はそんなことを考えながら厨房へと入る。


 残念ながらこの中で料理が出来るのは俺一人なので、そうなってしまう。


 アイラが手伝うと言ってくれたのだが、俺は丁重に断った。


 この時ぐらい4人で水入らずの時間を楽しんでほしいからな。


「ねえユキ。今度一緒にギールに乗って散歩をしましょうよ」


「止めておいた方が良いよキッカ。ユキは下半身が麻痺しているんだからすぐに落っこちてしまうよ」


「それなら私と体を縛り付けておけば大丈夫ね」


「……それは恥ずかしい」


 4人が会話に花を咲かしているのを確認しながら俺は持っててきた材料を前に腕まくりをした。




「うーん、これは美味しいわねえ」


 クリスマスに相応しい料理――七面鳥の足にポテト、スモークサーモンのシーザーサラダにシャンパンといった料理にキッカは舌鼓を打っている。


「おいおいキッカ、お世辞は良いぞ。宮廷付きの料理人の方が美味しいだろう」


 俺は苦笑してそう窘めると。


「いえいえ、ユウキ様ご自身が作った料理だからこそ美味しいのですよ」


「大陸最強の王が作った料理って世界一豪華だよね」


「……その通り」


 アイラ、クロスそしてユキの言葉に俺は何も言えなくなってしまったのは言うまでも無い。


「それにしても、こうしてユウキの作った料理を食べていると昔を思い出すわあ」


 キッカがポテトを撮みながら感慨深げに零す。


「ええ、思えばあの頃からずいぶん遠くへときましたね」


 アイラがシャンパンを口に含む。


「まさかここまでいくことは誰も予想していなかったんじゃないかな」


 クロスがチキンをユキに分け与えながらそう漏らすと。


「……私は薄々勘付いていた」


「「「「「え?」」」」」


 ユキの言葉に全員が凝視した。


「……ごめんなさい、嘘」


 さすがのユキもバツが悪くなり、縮こまりながら謝罪を口にした。




 宴もお開きとなり、俺達はユキの寝室に毛布を敷く。


 床で寝るのは俺とクロスで、キッカとアイラはユキのベッドに眠ることとなった。


 俺が床に寝ることに皆は渋面を示していたが俺は無理矢理納得させる。


「こういう時ぐらい王として見ないでくれ」


 今の俺は王ではなく、お前達の仲間の1人としていたかった。


「……キッカ、アイラ、ユキそしてクロス」


 ランタンの灯りを消してしばらく経った頃、俺は皆に話しかける。


「お前らは俺を信じてくれるか」


 俺は右手を持ち上げて空にかざす。


 月明かりに映し出されるそれは浮浪児だった頃と違い、幾分かごつくなっている。


 この手が掴む未来――それは人間の歴史。


 それを叶えるために俺はどんな犠牲も厭わないと考えている。


「俺は一体何をしようとしているのか……それを最後まで見届けられるか?」


 俺がそう聞くと、クロスから意外な答えが返ってくる。


「……僕達はユウキが何を考え、何を見ているのか分からないけど、それでも僕達はユウキの傍で守る。ユウキの夢見る未来を掴むための木材――それが僕達の役割だと思うんだ」


「木材って……俺はそんなに命を捧げるほどの人間じゃないぞ」


「何を言っているのよ」


 俺の答えに今度はキッカが呆れた声を出す。


「魔物大侵攻の際もユウキが事前にジグサリアス王国内の魔物を殲滅していなければ冗談でなく本気で私達は終わっていたわよ。そしてそれ以上に重要なことはユウキが私達をここまで引っ張り上げてくれたこと。もしユウキと出会わなければ私達はあのスラム街で何もできずに滅びを待っていたわね」


 感謝している――キッカは呟く。


「今、手にある物は全てユウキのおかげ。だからその恩を返すためなら私達はどんなことでもするわ」


「……俺が死ねと言えばお前らは死ぬのか?」


「当たり前です」


 つい出てしまった軽口にアイラが大真面目に返す。


「私達の他にもユウキ様を支えられる人間がいますし、子も残すことが出来ました。私達の願いは叶えられたも同然ですのでこの命、もう惜しくはありません」


 そして最も大事なことは――アイラが力を込めて。


「例え私達に死を命じてもユウキ様は絶対に死を無駄にしません。どうしようもないから、それ以外に方法がないからその手段を取るのであり、さらにその先に輝かしい未来が待っているのであれば私達は喜んでこの命を捧げましょう」


「……」


「……ユウキ、ユウキは己の信じた道を貫いてほしい」


 ユキは同じ言葉を繰り返す。


「……私達が最も不安に感じていることは私達によってユウキが迷い、苦しむこと。多分私達はユウキを惑わせる存在を排除するために生まれ、ユウキと出会えたのだと思う。だからもしユウキが私達の存在が重荷になるようなら遠慮なく切ってほしい。例えそうなったとしても私達はユウキを恨むことはない」


 ユキの言葉の重さに俺は沈黙してしまう。


 普段笑いながら接しているキッカ達の裏にそんな壮絶な決意があったことを始めて知る。


「……ありがとう」


 不意に景色がぼやけてきたので俺は右手を顔面に乗せ、顔を隠した。

正月の1月1日にもう一つ番外編を掲載する予定です。

そして、少しお願いがあるのですが、12月28日までに感想を書いて頂ける方は1つでも良いので20人の子供達の名前候補を挙げて欲しいです。

何せ作者のキャパでは20人もの名前を考えるのは力不足ですので。


後、本当に申し訳ありませんが、名前を挙げて頂いても必ず採用する保証はありませんので、その時はお気を悪くしないようお願いします。


追加 一応今のところ子供は全員女の子で、王女組は名前が決まっているのですが、面白ければ男の子も増やしたり名前の変更も行います。

「変更しすぎ」と怒るかもしれませんが、そこは私の作風として納得して下さい。

私の中の優先順位は

①完結

②話の流れを壊さない

③面白い

これらが守られるのであれば設定変更もバンバン行います。

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