番外編 余計な奇跡
とりあえず思いついたから書きました。
神様とやらは奇跡を起こす存在だが時には要らん奇跡も起こしてくる。
俺が総勢18人との女性と関係を持っている。
それゆえに出来てしまう可能性があるのだが、ここで神は本当に余計なことをしてくれた。
そりゃあ俺だって子供を欲しいと考えたことはあるよ。
俺は王という立場だからその意味も含めてそういう前提で行ったこともある。
けどな、神様よ。
何で18人全員を同時期に懐妊させるんだよ。
しかも全員女の子というオマケ付き。
そしていつの間にかティータさんもレオナもその中に入っていたし、レアとフィーナは双子だったし。
おかげジグサリアス王国の中枢部が全員産休を取ってしまい、えらいことになってしまった。
いやあ、あの危機をどうやって乗り越えんたんだろ。
全く覚えていないや。
とにかく、俺は一気に20児のパパという「どこのビッグダディ?」と問いかけたくなるような立場になってしまったわけだ。
俺は神にこう言いたい。
そんなに俺が信用ならないか?
子供なんていなくとも世界は救うのに。
俺は何の気なしに自室で政務に勤しんでいると扉が開き、2歳ぐらいの銀色の髪の毛をした幼女が危なっかしいトテトテとこちらに向かってきた。
「危ないな」
俺はその幼女に心当たりがあったので筆を止めて幼女の元へ向かい、そして抱き上げる。
キャッキャと綺麗な笑顔で笑うのが印象的である。
「……カトリーナの母親もこれぐらい純粋であればなあ」
この銀髪の幼女はベアトリクスの子である。
あの悪魔が産んだ子にしてはどうも純粋すぎるので他の者は「他の子と取り換えたのではないか」と疑っているらしい。
「夫よ、何をしている?」
カトリーナを高い高いしてしばらく遊んでいるとそう険のある声音でそう呼ばれたのでそちらを向くと俺の妻であるヴィヴィアンがビアンカを抱いて部屋へと入ってきていた。
「いや、カトリーナが勝手に部屋へと入ってきてな。構ってほしそうだったから遊んでいた所だ」
隠しても仕方ないので正直に話すと、ヴィヴィアンは不満そうに口を尖らせて。
「その暇があるのなら私の子と遊んでやってほしい。ビアンカは昨夜父に会いたいと泣いていたんだぞ」
そう言ってずいとビアンカを俺に差し出してくるヴィヴィアン。
そのやきもち焼きな様子に俺は苦笑してカトリーナを降ろそうとしたが、その気配を察知したカトリーナは俺の両手を精一杯掴む。
「やっ」
その可愛らしい否定にクラッときた俺を責められる者は誰もいないだろう。
しかし、俺は心を鬼にして。
「ごめんなカトリーナ、次はビアンカの番なんだよ」
そう優しく説き伏せるのだがカトリーナは2歳ゆえなのか一向に放そうとしない。
「やっ、ヴィヴィアンおばさん、いや」
「おば……」
カトリーナの口から出た言葉に表情を硬直させるヴィヴィアン。
「おいおいカトリーナ、ヴィヴィアンはお姉さんだろ」
まだ正気に戻らないヴィヴィアンの代わりに苦笑しながらそう述べる俺。
が、カトリーナは俺の言っている意味が分からないらしく、可愛く首を傾げた。
「えーと、だからね。ヴィヴィアンは――」
「おばさんであっているわよカトリーナ」
ここでまた俺の部屋に乱入者登場。
その姿は儚く、消えてしまいそうな脆さを持っているがその中身は邪悪そのものだ。
「ベ~ア~ト~リ~ク~ス~!!」
地獄の底から響いてくるような声音を発するのはヴィヴィアン。
まるで般若の如き表情をしている。
「あんた子供に何てことを教えているのよ!」
ヴィヴィアンは烈火の如く怒るのだがベアトリクスは涼しい顔で。
「あら、それならBBAの方が良かったかしら?」
何てことをのたまうのでますますヴィヴィアンの怒りに油を注いだ。
おい、そろそろやめておけ。
カトリーナもビアンカも2人を怖がって俺の後ろに隠れているぞ。
「あらあら、大変ですね」
この事態をどうやって納めようかと悩んでいると今度はシクラリスが部屋へと入ってきた。
「ああ、ちょうど良かった。あの2人を止めてくれ」
俺がこれまでの経緯を説明するとシクラリスは分かりましたとばかりに頷く。
「ではご主人様。私はベアトリクスとヴィヴィアンを宥めますので、その間はこのシャルロットの面倒を見て下さい」
……はい?
俺が聞き返すより先にシクラリスは俺にシャルロットを渡し、自分はさっさと2人の間に入っていった。
そして後に残るのは俺とシャルロットとカトリーナとビアンカ。
「……はあ、仕方ないか」
ビアンカとカトリーナが「ズルイズルイ」と言いながら俺の周りを回っているのを横目に俺はシャルロットを肩車した。
本当なら他も登場させたかったのですが、ネタが思い浮かびませんでした。