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ゲームの世界で第二の人生!?  作者: シェイフォン
間章 三国統一前後
41/55

バルティア皇国侵攻

今日は更新できました。

 大空を飛行し、ついに私達はバルティア皇国の国境付近まで辿り着いたわ。


「私達の役目はバルティア皇国の足を止めることよ! 応戦せずに船を狙いなさい!」


 お姉様の凛とした声音が響き渡ると私――ククルス=トパーズイエロー=フォンテジーを含めた竜騎士軍団『風』の隊員は自然と身が引き締まる。


 ああ、本当にお姉さまは素敵だこと。


 真っ赤に燃える髪の毛に燃えるような瞳に加え、全身からあふれ出す灼熱の雰囲気に私はもう身も心も燃やされつくしたわ。


「……ククルス、後で相手をしてあげるからその締まらない顔を引き締めなさい」


 あらいけない。


 いつの間にかお姉様が私の前まで来てジト眼で呆れかえっていたわ。


 心なしか他の隊員の目が「またかよ」って訴えているし。


 コホン


 私は一つ咳払いをして調子を取り戻す。


「さて、キッカ隊長の仰る通り私達の目的は敵の足止めであって数を減らすことじゃないわ。だから無駄な戦闘など行わず、粛々と任務を遂行すること」


 私の最終確認に全員が頷く。


 私が選んだだけあってこの『風』に属する者は胆力と判断力を高いレベルで兼ね備えているわ。


 まあ、引き抜いた人間のほとんどが軍の幹部またはエースだったからジグサール首脳陣は大変だったそうだけど。


「作戦通り、隊を2つに分けます。一つは船を焼き払うための隊でもう一つは相手の竜騎士団を撃墜することよ。後者はキッカ隊長の元に集まり、前者は私の所へ来るように!」


 あまり大声は出しくないのだけど、ここは私が言わなければならないから仕方ないわ。


 そんなことを考えながら私は弓を番える。


 私達の隊は全員火矢を準備しているのよ。


 火なら簡単に燃やせるからね。


 わざわざ近づいて撃退される危険性を増やしたくないし。


 代わりにお姉さまの隊は弓の代わりに長い槍を持っているわ。


 別段変なところはなく、槍が空を飛ぶ者の標準装備と言えるわね。


「キッカ隊長、その人数で大丈夫でしょうか」


 私が不安がるのはお姉さまが最も危険な場所に加え、槍を持っている者はお姉さまを含めて5名ほどしかいないからよ。


 いくらお姉さまが強いからといってもバルティア皇国は10体控えてあるようだし、こちらは20体もいるのだからもう5体そちらに回してもいいのではないかと考えるわ。ちなみに残る7体はリーザリオ帝国の援護に向かっているわね。


 もしお姉さまに万が一があると私はどうすれば……


「心配しないでククルス、私は死なないし負けない。それは決定しているのよ」


 お姉さまは相変わらず根拠のない自信を示すけども、何故かお姉さまの言葉にはそうだと信じさせてしまう何かがあるわ。


『安心しろ小娘、我がついているのだ。養殖で育った同族などに後れは取らぬ』


 お姉さまの相棒である竜のギールもそう励ましてくる。


 確かに私達の竜は育てたのと違ってスピードもブレスも段違いだけど、その中でもギールは別格ね。


 『風』の中の模擬戦でお姉さまとギールのペアに勝とうと思えば少なくとも3人は向かわせないと食い止められなかったわ。


 そんなことを考えているうちに停船場が見えてきたわ。


「総員! 火矢を準備! 狙いは船! 放て!」


 私の掛け声を合図にして20体の竜騎兵から一斉に射撃が行われたわ。


 向こうも必死に消火活動しようとしているけど、空から射ている私達の攻撃の前に無力。


 向こうの努力も空しくあの停船場にあった船は軍事物資もろとも灰へと成り果てた。


「進行方向を7時へ! その先に停船場があるわ」


 『林』の部隊からの情報によって私達は何の抵抗も受けなく次々と船を燃やしていたけど、4つ目になるとようやく竜騎兵が現れたわ。


「やっと来たわね、待ちくたびれちゃった」


 予想はしていたけど、始めて見る他国の竜騎兵に私を含めた全員が緊張していたけど、お姉さまのその言葉によって多少雰囲気が軽くなった。


「さて、私が突っ込むからルートとワーギは私の後に続いて。そして残りのアオルとシャラは討ち洩らしを防いでね」


 そうテキパキと指示を出したお姉さまは敵の中へと突っ込んでいく。


 その様に私達は一瞬呆けたものの、指名されたルートとワーギは慌ててお姉さまの後を追ったわ。


 そこから先はなんと形容すればよろしいのかしら。


 4世代前と次世代との戦いといったほうがしっくりくるわね。


 たまにユウキ王が練習中に現れて幾つかの技を提示したのだけど、それが実戦で使用するとここまで華麗かつ圧倒的だとは思わなかったわ。


 確かユウキ王が言っていた技名――ロールやループ、旋回はまだ私達も使えるにしろ、その先のインメルマンターン、スプリットSやスライスターン、バレルロールを実戦で使用できるのはキッカお姉様しかいない。


 それら華麗な技を自在に操り、敵を撃墜する様子はまさしく戦乙女。


 美しいという言葉以外見つからなかったわ。


 お姉さまが選んだ4人も私達と違って一通りの技が使えるけど、実戦に使うのには心もとなく、お姉さまの領域には遠く及ばない。


 お姉さまは「ギールだからここまでできるのよ」と笑っていたけど、例え私達の竜がギール並みの強さを持っていても無理だというのが共通の見解よ。


 あの空中演武はお姉さまだからこそできること。


「さあ、次の停船場へ行くわよ!」


 撃墜数8という圧倒的な記録をたたき出したお姉さまは凛とした声で竜骨の槍を突き上げ、そう宣言したわ。








 一応ボク――ミア=ガーネットオレンジ=ヴァルレンシアは伯爵の跡取りだったんだけど、それを蹴ってユキについたことは間違っていなかったと思うね。


 確かにミドルネームのキャストウイッチを失ったときは僅かな寂しさも覚えたけど、今はもう過去の話になった。


 ユキは可愛く、いつまでも愛でていたくなるようだけど、それを抜きにしても本当に彼女を敵に回さなくてよかったよ。


「……この氷はあと5分持つ。だから早く」


 いくら大陸は広いといってもこのバルティア皇国中を流れる川らを真っ二つに割って凍らせる芸当をできるのは多分ユキだけだろうね。


 昔、ユキが流れる川を割って凍らせる瞬間を見たボクはおろか『火』の団員全ての目が点になり、ユウキ王でさえも「まるでモーゼだな」と苦笑していたからどれだけすごいか理解できるだろう。


 今、ボク達『火』は『山』の中でも速さに特化させた軽騎兵を先導してバルティア皇国の皇都へ侵攻中だ。


 ユキが川を割り、凍らせて作った道を渡ることの繰り返しで直接皇都を攻める。


 この戦法にはバルティア皇国もビックリだろうな。


 何せ圧倒的な障害として自分達を庇護していた川が全く役に立たないんだから。


 向こうの慌てふためき様が目に浮かぶよ。


 この事態を何とか打破しようとする動きもあるけれど、そのための足はキッカ率いる『風』によって潰された。


 もうほとんど詰みの状態だね。


 だからボクは鼻唄交じりに進んでいたけれど、やはり向こうも最後の意地だけは通したいらしい。


 幾つかの川を渡り、そして皇都を目前とした川の対岸に軍を展開しているのが見受けられる。


「……ミア」


 たったそれだけでユキが何をしてほしいのかが伝わってくる。


 思えば学生時代からの付き合いだったからね、ユキが何を求めているのか大抵分かるんだよ。


 ボクは腰に携えたあった杖を手に取る。


 その先には純度の高いルビーが埋め込まれており、魔力の媒体としては十分だ。


 さてと、あの兵士達には悪いけれど、これも戦場ということで。


「サラマンダー」


 ボクの呼びかけに対して杖の先から蛇の形をした炎が出現し、それが時間を経つごとに大きくなっていく。


「これぐらいで十分かな」


 先日の貴族連合を燃やし尽くした炎より少し多めに調整する。


「皆! ボクの攻撃の後に魔法を放つように!」


 ボクはそう宣言した後召喚した炎を飛ばす。


 一瞬の静寂、そして向こうの陣地が一気に燃え上がった。


 そしてそれを合図にして『火』の団員が援護のための魔法を発射し、取り逃した敵を殲滅する。


「魔法はこうやって使うものだよ」


 何もなくなった向こうを見やってボクはそう宣言した。


「……やりすぎ」


 ユキがそんな風に叱るけど、ボクは首を竦めるだけで終わらせる。


 だって炎が好きなんだもん。


 あの揺らめきを見ていると心が躍るんだよね。


 そして、ボク達がここまで強いのはわけがある。


 もちろんユウキ王が示した失われたはずの古代魔法や魔力伝導率の高い装備もあるけれど、何と言っても『火』の魔法訓練はユウキ王が開発した意図的に魔力が薄い部屋で行っているのが大きい。


 あそこで行うと魔法が発動しにくいので苦労する代わりにあの部屋で魔法が使えたのなら、通常時だと2、3倍の威力が発揮できるんだよね。


 しかも『火』の装備一式は身に着けているだけで魔力密度が濃くなり、威力も規模も上がるんだ。


 冗談抜きで『火』は大陸最強の魔導騎士団だと思うな。


 そして大陸最強の魔導師はもちろんユキだね。


 そう考えているうちにユキは馬に乗って出発準備を整える。


 もう敵の主力は消し去ったから後は制圧するだけだね。


「さあ! 狙うはバルティア皇国皇都――水上都市ファルケニア! 我らの強さを皇民に見せつけぞ!」


 ボクがそう宣言すると同時にユキが皇都までの最後の川を割ったので、ボク達はフォルケニアへ一直線に進んだ。

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