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ゲームの世界で第二の人生!?  作者: シェイフォン
第1章 浮浪児として
3/55

俺は仲間を得た

 合計して260G。100万G以上持っていた俺にはこの金額が物足りなく感じるがまあ良いだろう。


何せ全くの無一文からこれだけのGを得たんだ。



さらにこれからポーションを売ることによって安定的な収入を得ることが出来る。


「いやいや、お金のありがたさを感じるねえ」



 俺は12歳の少年とは思えないセリフを吐いた。




 クルルルル



「お?」


 宿屋に向かっていると突然俺の腹から鳴った。


「ん? ユーカリア大陸物語に腹が減るなんてことはあったっけ?」


 酒場などで食べ物を食べることはあるが、必ず食う必要はなかったはずだ。


 ぐーーっ


「……とりあえずは腹ごしらえだな」


 腹の虫には勝てない。


 俺は腹が減る、減らないについての考察は後回しにして近くのパン屋へ向かった。




「毎度ありがとうございます。お釣りは5S(シルバー)と2B(ブロンズ)です」


 適当なパンを見つくろって俺は代金を払った。


 そして手元に残る銀の硬貨と銅の硬貨。


 この世界の通貨は1Gで10S。そして1Sで10Bとなっている。


 まあ、食料品や安物の素材の単価に付けられるSやBなんて使うことは最近だと滅多にないから忘れていた。


 何せ俺がGを使うと言えば何千G単位だから。




「さてと、食べるか」


 俺は近くのベンチに腰を下ろし、ついでに買った飲み物もすぐ横に行く。


 出来立てらしくパンはまだ熱い。


 ふわふわとしている。


「さてと、いただきまー……」


 俺が大口を開けてかぶりつこうとした瞬間目の前の少女と目があった。


「……」


 少女は何も言わないが、目はしっかりと訴えている。パンをくれと。


 年代は俺と同じぐらいだろう。


 服装は俺と同じボロの服を着て金色の髪はぼさぼさ、顔も薄汚れている。


 元は良いのに台無しだと感じる。


 見た感じ小動物という印象を受けた。


「……すい」


 試しにパンを右から左へ移動させると少女の目もそれに続く。


 グルグルと回転させたら同じように少女の目も回転した。


「きゅー」


 どうやらやりすぎて目を回してしまったらしい。


 俺は調子に乗ってしまったと反省した。


「悪かった。ほら、これをやるよ」


 お詫びに俺は手に持ったパンを差し出す。幸いにもまだ口を付けていないからセーフなはずだ。


「……くれるの?」


 途端に少女の目が輝き出す。


 本当に素直だなと感心しながら俺は頷いた。


「……ありがと」


「って、おい!?」


 少女は差し出したパンでなく、俺の隣にあったパンの袋を掴んで一目散に駈け出して行く。


「ちょっと待て! ドロボー!」


 俺は叫ぶがもう遅い。すでに少女の姿は見えなくなっていた。




「はあ、相手がNPCとは言え腹が立つな」


 俺は毒づきながらもまたパン屋に赴き、同じパンを注文した。


 店員に不思議がられたが、俺が少年口調で事情を説明するとパン屋の店員はクスクス笑い始めた……値段を安くするとかちょっとはサービスしてくれよ。


 そして俺はまた同じベンチに座った。


 キョロキョロと周りを見渡し、また同じアクシデントが起きないか確認する。


 前方良し、左右良しそして前方良し。


 俺はパンを手に持った。


 そして食べようとしたその時。


「本当に申し訳ありません!」


 後方から突然大きな声で謝罪させられて俺は引っくり返ってしまった。




 俺の目の前には4人の少年少女がいる。女子3、男子1の比だ。しかもその女子の内の1人は俺からパンの袋を奪っていった無口女だった。


「ほら、謝りなさい!」


「……ん」


 そのリーダーらしき女の子に小突かれて先程の無口女が頭を下げる。


 リーダーらしき女の子は凛としていて口調もはきはきとしている。薄汚れているが、髪を洗えば燃えるような赤毛を見せるだろうと想像した。


 俺は手を振りながら。


「いや、もう良いよ」


 と、答えた。


「盗みを働き、本当に申し訳ありません。ユキは本当に良い子なんです、感情表現が下手ですけどそれは生まれつきなんです」


 無口少女はユキという名前なのか。


「申し遅れました。私はキッカ、後ろにいる切れ目がアイラそしてなよなよしている奴がクロスです」


「よろしくお願いします」


「よ、よろしく」


 同時に頭を下げるアイラとクロス。アイラの方は髪が藍色であることも相まって冷たく、鋭く切れるような印象を与えそしてクロスの方は俺と同じ黒い髪と瞳から真面目で実直なイメージがある。


「何度も言ったように僕はもう怒っていないから。だからもう消えてもいいよ」


 何度も言っているのだが四人組の少年少女はこの場から去ろうとしない。そして謝り続けている。


「……ああ、そういうことか」


 再三言っても謝り続けるのを見て俺は得心した。


 彼らは単に謝罪しに来たのではない。それ以上のものをせびりに来たのだ。


「これで良いか?」


 俺は観念して財布から10G硬貨を取り出してキッカという少女に渡す。


「き、金貨だ」


「……きれー」


 クロスとユキが10Gの光具合を見て感嘆のため息を漏らす。


「ねえ、ここでやめちゃう?」


「そうですね……」


 そしてキッカも動揺して後ろのアイラに相談を始める。


「やれやれ、いい勉強になったな」


 俺はため息を吐いてその場を後にしようとした。これ以上関わっても仕方ない。


「お待ち下さい」


 が、少女に似つかわしくない氷の様な冷たい声音が俺を引き止める。


「ええと、確かアイラだっけ?」


 俺が振り向いて尋ねるとアイラはコクリと頷いた。


「僕はもう話すことはないのだけど」


 俺は声音を低くして問う。これで俺が苛立っていることが相手に伝わるだろう。


「あ、アイラ、もう止めようよ」


「アイラさん、ストップストップ」


「……怖い」


 事実、後ろの三人も怯えているようだ。


 しかし、アイラは意にも介さず言葉を紡ぎ始めた。


「私達を買ってくれませんか?」


「は?」


 突然の申し出に俺は呆気に取られる。


「アイラ!? 何を言ってるの?」


「そ、そうですよ。いきなり何を」


「……おー」


 後ろが困惑しているのが伝わってくる。


「あなたは私達と同じ浮浪児の格好をしていますが中身は全く違う、一人で自立できる能力と自信を持っています。あなたは必ず瞬く間にこの最底辺から抜け出すでしょう」


「ほう……」


 俺は感嘆のため息を漏らす。


 アイラの言う通り俺は違う。薬の調合も出来るし鑑定の目聞きも出来る。さらに鍛冶も出来るため、あっという間に駆け上がるだろう……チートだし。


「NPCにしては洒落た誘い文句だな」


「NPC?]


 アイラが首を傾げるが俺は気にしない。


「まあ、面白そうだから仲間にしてみるか」


 どうせこのデータはバグであり、エラーから復旧すれば消えてしまう運命にある世界。


 それなら付き合ってやろう。


 俺は彼らをもう一度まじまじと見つめる。


「どうですか?」


 目の前のアイラは間違いなく抜け目がないだろう。ユキがパンを持ってきたところからここまで持ってくるのは並大抵のことではない。


 キッカは決断力というか思い切りが良い。俺に声を掛ける時もそうだが、彼女は竹を割った様な潔さがある。


 クロスは大柄な体格だから力もあるだろう。これなら暴漢に襲われても大丈夫かもしれない。


 ユキは確実に何かを持っている。ユキがいなければ俺達は出会うことすらなかっただろう。


「よし、ついてこい」


「え? つまり受け入れてくれるのですか」


 確認するようにアイラが尋ねると俺は苦笑しながら。


「その通り、だから俺について来てくれ」

2011年9月13日に一部改編しました。

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