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ゲームの世界で第二の人生!?  作者: シェイフォン
第1章 浮浪児として
2/55

無一文から始まる

始めまして、シェイフォンです。

経験を積んだ主人公というチートな能力を使って襲いかかる不合理から必死に抗おうとします。

剣術から裁縫まで全てMAXレベルにまで上げた経験のある主人公がどのようなセカンドライフを歩むのか。

それを楽しんでいただければ幸いです。

 気が付くと俺は子供になって薄汚い路地で倒れていた。


 いや、冗談じゃないよ?





 一応自己紹介しておこう


 俺の名は火桜優喜。フルダイブ型MMORPGにどっぷりハマった高校二年生だ。


 一応学校は通っている。ゲームが大好きだが平均点はクリアしている。


 本音を言えば学校を辞めてずっとゲームをしたいのだが、それをやると確実に家を追い出される。


 比喩じゃない、マジ話だ。


 何せうちの親はやると言えば必ずやるタイプ。


 どれだけ理不尽な約束でも絶対に履行するのだ。


 ……ヘタレと嘲っても構わない。


 俺も自覚しているから。






 俺の時代にはフルダイブ出来る機械がある。


 ん? それは何だってか?


 それはヘルメット状の形をしたもので、脳からの電気信号を受け取り、そして逆に変換した信号を流すことによってあたかも現実に存在しているよう錯覚させる機械だ。


 洗脳されそうで怖いと感じるだろうが、正直俺達にはこれが無いとまともに授業についていくことが出来ない。


 何せ高校二年の授業で不確定性原理を応用した問題を出されるんだぜ。


 教科書だけで解けるか。


 機械に頼らないと出来るわけがない。


 そして俺は文系だ。ついでに言えば理系はもっと恐ろしいぞ。


 数字の羅列を見ただけで何を意味しているのか理解できるんだ。


 スパイ養成課か、と思ったよ。


 まあ、その機械のおかげで俺達は限りなく全能に近づいているがな。


 普通の俺でさえ過去の名医と同程度の執刀が出来る。 


 また話が逸れた、すまん。



 とにかく、俺はそのフルダイブ機械を使ってMMORPGをやっていたわけだ。


 まあ、やっていることと言えば、パーティを組んで魔物を討伐するのではなく、ひたすらにアイテムを作ってそれを売り捌いていたわけだけどな。


 ダンジョンにはレア素材を探すために潜る程度だった程度だから国関連のイベントなんてほぼノータッチ状態だったな。だから今俺が街どころかどの国にいるのかすらわからない。


 ……国関連のイベントには現実のお金が必要なんだよ、貧乏高校生に払えるわけないだろ。


 そのゲームはユーカリア大陸物語。


 各プレイヤーは望みの職業になって冒険者になったり国を興したりと色々と自由度の高いゲームだ。




 ここからが本題だ。


 俺はいつもの通り学校へ行き、いつもの通り帰宅していつもの通りゲームを起動させた。


 普通なら俺は拠点としている工業都市ジグサールから始まるはずだった。俺は大富豪で、その都市に対して影響力がある。顔もイケメンで背の高いハンサムなキャラクターだったはずなのに、俺は気が付くとどこか訳の分からない街の裏側で倒れていた。




 さあ、どういうことだ?



 眼が覚めた俺はまず始めにウインドウを開いて見た。


 ウインドウに表示されるのは名前とステータス、持ち物や装備の他にゲームを終わらせるログアウトがあるはずなのだが。


「……ない」


 その欄は空白になっており、目をこすっても変化が無かった。


 どうやら不本意なバグが起こったのだと考える。


「仕方ない、しばらくここで生きるか」


 喚いたり叫んだりしても意味は無い。それならば一度初心に帰ったつもりで始めからプレイしてみようと決めた。




「まずは何を持っているのか」


 俺はもう一度ウインドウを呼び出して己の状態を確認する。




名前:ユウキ=カザクラ

装備:武器なし

防具ボロの服

頭なし

足擦り切れた靴

装飾品なし


持ち物:なし

お金0G

ステータスなし




「……何だこれは?」


 その惨状を見て愕然とする。


 良いところが一つも無い。普通ならお金も3000Gぐらいはあり、ステータスも幾らかは自由に設定できるはずだ。


 ステータスというのはスキルの別称で、例えば剣を振るうとステータスに『剣』という項目とレベルが追加され、そのレベルが上がるごとにSTRやDEFなどが上昇する。

 

 ちなみに『短剣』のスキルが上がると『剣』と比べてSTRよりもAGIが上昇する。


 そして、スキルが1から2に上がると能力の上昇は2または3程度だが、スキルが20代だと能力の上昇率は2桁まで上がる。ゆえに満遍なくスキルを伸ばすよりのと、一つのスキルを伸ばすのではあまり大差ない。






 これだとボーナスポイントを使わず、さらに所持金を全てどぶに捨てた状態だ。


 そして、それ以上に驚いたのは。


「この容姿は何なんだよ」


 見た感じ五年前の俺である。年齢は12歳前後と言ったところか。


「まあ、上級者の俺にはちょうど良いかな」


 初心者なら間違いなく匙を投げているが、生憎と俺はこのゲームをやり込んでいるマニア。だからこれくらいのハンデなど物の数ではない。


「とりあえず最初の目標は一軒家を持つことだな」


 家さえ持つことが出来れば行動範囲がグッと広まる。薬を大量に調合出来たり鍛冶を出来たりとメリットは計り知れない……まあ、月々に税を納めなければならない欠点があるがそれは仕方ないだろう。


「さてと、じゃあ始めますか」


 俺はそう呟いた。


 しかし、俺はこの時、これから先に起こることなど想像すらできなかった。






 手頃な空き地に移動した俺は簡易な調合台を作成する。


「まずはポーションの調合から」


 ポーションとはHPを回復する薬の中で最も安価で親しみやすい類のだ。値段は一個50Gと安いが、材料となる草はそこら辺に生えているので原価はほぼ0。まさに初期に作る物としては打ってつけだ。


「そういえば序盤の頃もこうしてポーションを調合していたよな」


 何世代前のゲームとは違って材料を揃えてボタンを押せば完成という代物ではない。そして、このユーカリア大陸物語というゲームはフルダイブ機能を駆使してリアルを極限にまで追求した結果、現実と同じように調合の匙加減で成否が分かれるのだ。


 まさしくリアル志向。


 現実と何一つ変わらない。


 ゲーム製作者に殺意を覚えるほどリアルだ。


「確かポーションの調合法は……」


 俺は頭の中からポーションの調合法について引っ張り出す。


 ああそうだ、確かああいう作り方だった気がする。


 捨ててあった竈と槇を拾ってお湯を炊く。


 沸騰するまでの間に材料の草をすり潰しておこう。


「……子供だから力がない」


 普段ならシャシャシャとやってしまう作業が渾身の力を込めて行わなければならなくなっている。だからいつもの倍の時間と労力を費やしてしまった。


「さてと、次はこれらの材料を手順通りに放り込んで混ぜると」


 まずアカイロ草をすり潰したのを加えて混ぜ、色が淡くなってきたらアオイロ草を加える。ここから激しくかき混ぜて完全な薄紫にした後キイロ草を加えて今度はゆっくり混ぜて完成。


「まあ、上出来かな」


 ポーションを調合しているうちに体が思い出してきた。俺の経験から言うとこれは良い部類に入るだろう。


 確認のため出来たポーションを少し飲んでみる。いつも俺が作っている上質なポーションと比べれば劣るものの、市販品よりかは味も効果も高いと判断。


「さすがは俺、弘法筆を選ばずとはよく言ったものだ」


 うん、満足。




 そして俺はそのポーションを持って薬売りの店に行く。ここは様々な種類の薬を取り扱っており、その中にポーションが含まれている。


 そして俺はその店の番人をしているお姉さんに声を掛けた。


「こんにちは、おねいちゃん」


 ニッコリと、キッズスマイル全開で話しかける俺……気持ち悪い。


「あら、ボク。どうしたの? お使い?」


 まあ、そうだろうな。俺もお姉さんの立場ならそう判断するだろう。しかし、俺はお使いでは無い、営業をしに来たのだ。


「おねいちゃん、このポーションをどう思う?」


 そう言ってガラス瓶に入ったポーションを見せる俺。


「あら、それは……」

 お姉さんの瞳に真剣見が宿る。やはりそこはプロなのだなあと実感した。


 光に透かしたり、振ってみたり味を確かめた後にお姉さんはホウッと感嘆の吐息を洩らす。


「ボク、これは凄いわよ。少なくともこの街にいる調合師じゃあ一個一個丹念に作ってもこのレベルは作れない。一体どこの調合師が作ったの?」


 そう聞いたので俺はにこやかに自分を指差す。


「え? ボクが作ったの?」


「うん、そうだよ。なら目の前で実演してあげようか」


 お姉さんが頷いたのを見た俺は予め用意してあった原料を取り出す。


「それってそこら辺に生えている雑草じゃないの。もっと質の良い草を使用しないと飲めたものじゃないわよ」


 忠告してくれるは有り難かったけど、俺は首を振った。






 薬売りの店の奥には調合台が備え付けている。やはりこのお姉さんも調合師の端くれなのだろう。


「じゃあ、作るからよく見ておいてね」


 そう宣言して俺はポーションを作り始めた。


 昨日と手順は似ているが微妙に違う。今回はアカイロ草と一緒にアオイロ草を加えたり、薄紫からさらに透明になり始めた所でキイロ草を追加したりしていた。


 お姉さんの言う通りに、これらの草は生えているのよりも栽培した方が手順の変更がなくて楽だが、その分お金がかかる。


 と、言っても一草3、4Gなのだが、それでも今の俺にその出費はきつかった。


 どうせ俺はこれ以上の難易度を誇るエリクサーを何度も調合しているし。


 あれはきつかった。ほんの少しでも力加減を間違えると失敗。しかも嫌らしいのが、エリクサーは失敗した時点には現れず、完成してからその失敗に気付く点だ。


 あれで何人ものプレイヤーがエリクサーの調合を諦めたか。


「はい、完成したよ」


 そう昔の思い出に想いを馳せている内にポーションが完成したようだ。それをコップですくってお姉さんの前へ持っていく。


 お姉さんは目をまじまじと見開いた後、それを口に含んだ。


「素晴らしいわ」


 しばらく咀嚼した後にそう吐息を洩らすお姉さん。


「これはすごいわ。私の人生の中でもこれほどのポーションにお目にかかったことはない、これなら50Gと言わず、100Gでも売れるわ」


 早口に捲し立てるお姉さん。それを見た俺は手応えを感じて切り出した。


「ねえ、おねいちゃん。提案だけど、このポーションをここで売ってみない?」


 博打よりも安定的に収入を得られるのを優先する。確かに露天商は利益が相当出る代わりに、ならず者による強奪が考えられるし、また売り上げ代をいくらか取られる可能性がある。今の時点で闇の者と関わるのは避けた方が良い、今後の活動に大きな支障が出る。


「ええ、いいわ。むしろこちらからお願いしたいくらい。ところでボクの名前はなんていうの?」


「ユウキ=カザクラだよ。おねいちゃんの名前は?」


「私の名はティータ=エルマライよ。これからよろしくね」


 交渉の結果、俺はポーション一つ分につき30Gの利益が出ることになった。もちろん、この俺の正体を隠すというのが条件付きで。


「とりあえず今日宿に泊まる分のGは確保できてよかった」


 ポーション二個で60G。今回はおまけとして200G余分にくれた。


 よし、これなら今日は宿に泊まれるな。


 俺は人知れず安堵した。




 今日の収穫


 収入元を確保できた。

フルダイブ機能という設定について説明不足でしたので修正しました。


11/4設定を変更しました。

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