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ゲームの世界で第二の人生!?  作者: シェイフォン
第3章 貴族として
17/55

踊り場

今回は総括だけです。

話し的にはあまり進んでいません。

しかし、内政って結構難しいですね。

試行錯誤の毎日です。

「芳しくないな」


 レアから輪番制による練兵具合そして都市の整備状況を聞いた俺はそんな感想を漏らす。


「申し訳ありません。予想以上に兵の士気が低く、中々従ってもらえません」


 レアが恐縮するのだが俺はそんなに縮こまらなくていいと考えている。


 元からの兵士ならともかく、つい先ほどまで浮浪者だった人間に兵のような働きを期待しても無理だ。幸いにもジグサールはこの都市の規模でまだ補える範囲なので急ぐ必要はない。


「キッカと送られてきた孤児達が今も奮闘しているのだろう。だから俺達は温かく見守ろうじゃないか」


「はい、今はその手しかありません」


 レアが首肯したのでこの話題は終わり。


 ふとキッカとその孤児達が頭に過ったので聞いてみる。


「ところでキッカと孤児達はどう?」


 ヒュエテルさんが選んだ人材がどうなったのか興味を沸いたので伺ってみると、レアは恥じ入るように口を開いた。


「ヒュエテル様を疑ってしまい、本当に申し訳ありません。彼女が選んだ孤児は想像以上の働きをしてくれたおかげで最悪の形である失敗だけは防ぐことが出来ました」


 こう言っては何だが、計画の失敗の回避よりもレアがヒュエテルさんを認めてくれた方が嬉しい俺がそこにいる。


「キッカについてはやはりエルファ様のご慧眼です。彼女が送られてきた孤児達を統制してくれたおかげで私の指示を全体に行き渡らせることが出来ました」


「ほう、それはよかった。ところでレアから見てキッカはどう感じた?」


 その質問にレアは人差し指を顎に当てて考え、口を開いた。


「圧倒されました。普段は何の変哲もない小娘のはずなのですが、いざ指揮をするとなると彼女から溢れ出す何かが私を含めた全員を魅了します」


 小娘って……まあ、良いだろう。問題はそこじゃない。


 キッカは仲間内から永久機関の持ち主と呼ばれていたからな。その底なしの体力と気力が生み出す覇気にレアは呑まれそうになったのだろう。


「つまり当初の計画よりは遅れているがそれは深刻な影響を齎すものでなく、時間さえかければ解決する類のものなのだな」


 俺がそう結論付けると同意するかのようにレアは頷いた。


「お疲れ様~」


 レアからの報告が終わるとそれに見計らうかのようにフィーナが顔を出す。


 当初は3人が揃ってから報告会が行われていたのだが、報告する内容は事前に知らされていることから全員出席することに異議を唱えたのがフィーナ。


「大丈夫よ。聞きたいことがあれば出席するから」


 そう言って席に着くフィーナ。


 余談だがフィーナが最初に報告する際には必ずレアが遅れてくる。


 性格は真反対なのだが妙な所で似ている双子娘のフィーナとレアだった。


「治安の件は?」


「もう大成功。アイラの助力もあったけどクロスが率いる治安部隊のおかげでジグサール全ての場所に目が行き届くようになったわ。この調子だと夜に娘が1人歩いても大丈夫じゃないかしら」


「ほう、それは良かった」


 治安の向上は兵や都市の整備と違って緊急の用件だったためそれが上手くいって良かった。正直な話これが上手くいかないと次の段階に大きな支障が出てしまうからだ。


「で、フィーナが担当していたブラッディ商会の件はどうなった?」


「ああ、それね。概ね成功というところかしら」


「具体的には?」


「ブラッディ商会は壊滅できたけど、有能な人材は手に入らなかったわ。それはこちらに就こうとした人間も何人かいたけど、彼らはとてもじゃないけど使えない。せいぜい鉄砲玉が良いところだから全員捕えたわ」


「当初の目的は果たしているから問題はないな」


 人材が手に入らなかったのは痛いといえば痛いがそれほど惜しむことじゃない。そういった人材はヒュエテルさんが送り出してくれるからあまり問題はない。精々優秀だったら拾ってやる程度の認識だった。


「ところでフィーナから見てクロスとアイラはどう見る?」


「そうねえ……クロスは責任感が強く、見ていて安心できるわ。だから彼の率いる部隊はどんな時でも動じないのかしら。何か事件があるとすぐに彼の部隊が駆け付けて冷静に処理する様子は惚れ惚れするほどだったわ」


 クロスの評判が上々で何より。これはまだ誰にも明かしていないが、クロスは後1年ちょっとで起きる魔物大侵攻の際に守衛の指揮官を任せるつもりだからな。


「で、アイラは……ユウキ男爵は愛されているわねとしか言えないわ」


「ん? どういうことだ」


 歯切れの悪い答えに俺は首を傾げるとフィーナは言葉を選ぶように語りだす。


「人ってさあ、愛する者のためなら残酷になれると言うけど、まさしくアイラはそれを地で行っているわ」


 その言葉にレアも頷く。


「確かに、アイラの心酔具合は私から見ても寒気を覚えました」


「少しでもユウキ男爵を貶める気配を感じたらアイラの瞳から感情が消えるのよ」


「その通りです。諜報関係でアイラと打ち合わせする時があるのですが、次の瞬間には首と胴体が分かれていそうでいつもビクビクします」


 そう言って頷く2人を見た俺はどう反応していいのかわからない。


「これだけは言えますが、もし私達がユウキ男爵に叛意を翻したら次の日には物言わぬ屍になっていますね」


「そうね。しかも見せしめを兼ねて無残な死に様を晒すわ――」


「――よくお分かりですね」


 だからこそ俺の後ろから響いてきた怜悧な声音に全員が固まった。


「……アイラ」


 フィーナが呻き声をあげた先には渦中のアイラがそこにいた。


諜報部隊主任 アイラ=カザクラ

装備:

武器スリープボウ       射抜いた相手を眠らせる。

防具カメレオンマント     周りの景色と同化する。    

頭忍の頭巾          己の呼吸音を消す。

足サイレントシューズ     己の足音を消す。

装飾品神の不在証明書    己の気配を消す。

ステータス

短剣  46

弓矢  65

隠密  72

魅了  43

恐怖  82


 4年前と比べて成長したアイラは、浮浪児の時と比べて印象が鋭くなったように見える。藍色の髪のボブカットは変わりないが瞳はさらに鋭く光り、体も少女体型から女性の豊満な体型へと変貌していた。


「ベッドで人を殺せそうだな」


 アイラの十分に育った果実から目を逸らして呟くと。


「その前に初体験をユウキ様で済ませてからですね」


 腕を組んで胸を強調する姿勢を取ったアイラは至極余裕のある笑みを浮かべて返してきた。


 その言葉は男として嬉しいが今は童貞を失う気が起きない。だから童貞を失ってもいいかなと思ったらお願いしようと考えている。


「何場違いな会話をしているのよ!」


 呆然状態から復帰したフィーナがアイラに食ってかかる。


「そうです! 見張りはどうしたのですか?」


 続いてレアもそんな声を上げた。


 するとアイラはニッコリと妖艶な笑みを浮かべて。


「抜き打ち検査ですよ。このように不測の事態に対応できるかどうかという」


「へえ。で、結果はどうだった? 会議室の外には5,6人が固めていたと思うが」


 分かり切っていることだがここは聞いておくのが礼儀というものだろう。案の定アイラは唇を歪めて。


「全員鍛え直しですね。反撃はできなくともせめて声ぐらいは上げて欲しかったものです」


 フフフとアイラは笑うが、仮にもヒュエテルさんが選んだ人材をこうもアッサリと無力化するのを見た俺は戦慄を禁じ得ない。


「いえいえ、私などエルファ様に比べるとまだまだ」


 唇を笑みの形に広げながら謙遜するアイラ。それが本当かどうか分からないが、アイラにしてもエルファにしても化け物だと考えてしまう。


「それではこれで失礼します。会議を邪魔して申し訳ありませんでした」


 驚きで声も出ない俺達を尻目にアイラはその場から出ていく。


「ああ、言い忘れていましたが。もしユウキ様を裏切ったらどうなるのか、とくと想像して下さい」


 フィーナとレアにとってはこれ以上ないぐらい不吉な言葉を残していった。




「……えーと、会議を始めていいか?」


 アイラが去ってしばらく経った後で俺は2人に伺う。


「え、ええ。大丈夫よ」


 フィーナの震える声から推察できる通り2人ともまだ立ち直っていないが、このまま時間を浪費するのも何なので話を進めることにする。


「まあ、とにかく。レアは引き続き兵の調練と都市の整備を頼む」


「分かりました。ところで気になったのですがユキはどうしています? 彼女だけ名前が出てこないのですが」


「ああ、それは私も思った。キッカやアイラ、そしてクロスはよく見かけるけどユキは最近見てないの。一体何をしているの?」


「そう言えばまだ伝えていなかったな」


 今振り返るとユキがどうしているのか2人に伝えた記憶が無かった。


「ユキは今、魔法学園のOBやOG、そして同級生を尋ねて回っている」


「え、何で?」


「フィーナ、理由は簡単だ。ユキは近い内に創設する『魔導騎士団』のメンバーを集めてもらっているからな」


 これは俺の構想の一つで、絶対数が少ない魔導師は1人で軍の一個小隊に相当する火力を持つ。そのため魔導師の数というのは軍の強さを表す一つのパラメーターにまでなっていた。


「しかし、そう簡単に集まるのですか? 魔導師というのはその性格上国や貴族が囲い込む場合が多いのですが」


「レアの言うことも分かるな。ユキは最難関と名高いの王立魔導師養成学校で史上始めての市民で生徒会長を務めた天才だ。今でもユキに心酔している者が多く、国や貴族よりもユキの下で働きたいと表明している者が確定しているだけで20人は下らない」


「20人!……」


 レアが驚くのも分かるだろう魔導師が20人ということは軍の一個大隊に相当する戦力だ。しかもその集団はユキを崇めている者で構成されているから結束力も並大抵でないだろう。


「何にせよフィーナの負担が増えることは確かだ。と、いうことで近いうちに魔導師を取られた国や貴族の抗議が来ると思うからそれを一手に引き受けてくれ。ああ、資金もある程度自由にしていいから決して魔導師を返さないように」


 フィーナの悲鳴をバックにして俺はこの話題を打ち切って会議を終わらせた。

本当はアイラの登場予定など無かったんですけどね。

恐るべし、ヤンデレ。

作者の手を離れて動くとは。

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