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ゲームの世界で第二の人生!?  作者: シェイフォン
第2章 市民として
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ジグサールへ

超展開かもしれませんがお読み頂けると幸いです。

「師匠、武器ができました」


 そう言って俺のもとへ走ってくるサラに俺は冷や汗をかきながら。


「転ぶなよ、絶対転ぶなよ。転んだら地震で俺の屋敷が倒壊するからな」


 サラが先ほど作ったのは土属性を付与させたハンマーなのだがこの代物、効果が半端なく強い。


 正式に俺の屋敷に住みこむことになったサラは少しだけ落ち着き、物事の分別がつくようになった。


「今の私には5つ以上の属性を付与させることはできません」


 と己の非力を認め、代わりとして1つか2だけの属性を付与させた武器の精度の底上げを行っていた。


 サラの武器はそれこそ町職人のはるか上をいっているが、王宮専属や俺レベルから見るとまだまだひよっこ。


 なのでサラは多くの属性を付与させる代わりにまず1つだけ付与させた武器を作っている最中だ。


 が、そこまでなら美談なのだがサラは天才。


 1年ちょっとで俺と並ぶぐらいに成長してしまった。


 サラの将来が恐ろしい。


「主、お客様です」


 サラと2人でサラが作った武器を論評していた矢先にエルファが現れてそう告げる。


「ヒュエテルさんか」


 俺の問いにエルファは首を動かした。




「これを見てください」


 開口一番そう切り出して両手に抱えた大きな袋を置くヒュエテルさん。


 俺はその中身が気になったので開けてみたのだが中から出てきた代物に俺は目を丸くした。


 袋には金銀宝石が詰まっている。袋の中を総計すると俺の全財産の内約3割に相当するだろう。


「『恩を返します』と銘打たれていますので、おそらくユウキ様が保護をした孤児達の中でその道専門の高等教育を受けた孤児の誰かだと思います。」


 確かに俺は4ケタに迫る数の孤児を保護したが、社会に出ているのはその3割に満たないだろう。だから俺は目の前の金貨が信じられない。市民の給料は月15~30Gだということを考えると、まっとうな方法で稼いだわけでは絶対ない。


 俺の驚きが伝わったのかヒュエテルさんは説明のために口を開くのだが心なしか戸惑っているように見える。


「ええと、言い難いのですが最近貴族の家のみ侵入する義賊が流行っているのはご存知ですか」


 俺は首肯する。


 今の俺の暮らしぶりは貴族から見ても上の方なので義賊に狙われる一つとして役人から注意するよう忠告されたことがあるからだ。


「ちょっと待て、つまりそれは」


 俺の懸念が当たったようだ。ヒュエテルさんは困ったように首を苦笑して。


「ええ、お察しの通りその義賊はユウキ様が保護した孤児達の一部です」


「……最悪だ」


 俺は額を抑えて天を仰ぐ。


 何をトチ狂っているんだか。


 彼らは良かれと思ってやったことかもしれないが、彼らが捕まってその身元がばれてみろ。知識と技能を与える環境を作った俺は一気に窮地へと陥ってしまうぞ。


「止めさせられないのか」


 俺は一縷の望みをかけて聞くが、案の定ヒュエテルさんは首を振る。


「このお金は私が知らない間に置かれていますから止めることはできません」


 これを役人に届けると俺が疑われる。つまりこのGを受け取るしか選択が無いようだ。


「けどなぁ、今の俺はGに相当余裕があるからこんなリスクの高いものを受け取りたくないのだが」


 俺自身が作った武器に加えてサラの作った武器も取り扱った結果、濡れ手に粟という表現がぴったりくるぐらいのGを稼いでいる。


 おそらくこのシマール国の鍛冶職人の中では最もGを持っているかなと本気で考えてしまうほどだ。


 ヒュエテルさんは俺の苦悩も分かっているのだが、ヒュエテルさんがこのGを持っていると聖者というイメージが崩れ、下手すれば俺以上の迷惑を被ってしまう。


 だからこそヒュエテルさんはこのGを持ってきたのだろう、自分では処理できないがゆえに。


「それでは私はこれで失礼します。またお金が置いてあればユウキ様にお届けします」


 そう言って去っていくヒュエテルさん。


 そして残されるのは俺と大量のGのみ。


「どうしたもんかな……」


 腕組みをし、憮然とした様子で俺は鼻を鳴らす。


 仕方ない。


 このGは目立たない様に恵まれない人達へ施すか。


 妥当な考えに一つ頷くと俺は袋の口を閉じた。


「私に提案があります」


 いつの間に近くへ寄っていたのだろう、気が付くとエルファが俺の隣に立っていた。


「このGと主が貯めたGの何割かを私に任せてもらえませんか」


「別に良いが、理由を聞いても良いか?」


「はい。確か主は工業都市ジグサールに移住を希望していたと考えます」


 その通りなので俺は頷く。


「で、つい先程宮廷闘争に敗れてジグサールへ左遷されたツバイク伯爵が逃亡しました」


「ほう……」


 この状況でそんなことを知らせる理由はただ一つ。


 知らず俺は唇を歪める。


「なるほどね、それは面白い。ただ、街や都市を治めるのは貴族の特権だ。市民である俺がどうしてそこを治められるのか知りたいな」


 そう聞くとエルファはクツクツクツと喉を鳴らし。


「このご時世、Gさえ払えばシマール国は爵位を与えてくれますよ」


 と、囁いた。


「この国の腐敗はそこまで進んでいるのか」


 Gで名誉を買える。


 国の威信をかけて贈る称号をGで手に入れることが出来るのを聞いて俺は複雑な気分に陥った。


 滅びた国のことなのであまり注意を払っていなかったが、シマール国が滅びた原因は魔物大進行だけではなさそうだ。おそらく長年かけて溜まっていた膿が溢れ出し、そして魔物大進行が引き金となったのだろう。


「やはり肝心なのは人か」


 あらゆる万物は外側からの攻撃に強くとも内側からの攻撃にはえてして弱い。これが内と外の両方から攻められるといかに頑強な城であっても名将と呼ばれる人物が率いてもなすすべなく陥落するだろう。


「まあ、俺には関係ないか」


 考察はここまで。


 これ以上考えても意味のないことに気づいて俺は思考を止める。


「どうも話がうますぎるんだが、Gで爵位を買った市民が街の治安を守ることを他の貴族が許すか?」


 貴族は保守的で嫉妬深い。突然俺みたいな市民が出ると叩かれそうな予感がしたが、エルファは何の心配もないと首を振る。


「ジグサールは周辺の魔物が強く、交通が不便な国の辺境にある都市です。あそこを治めるのは左遷された貴族ぐらいなものですから。さしたる妨害などなく手に入れられますよ」


「あそこはまだ辺境だったのか……」


 その事実に俺は呟く。


 ゲーム開始のころには有数の都市として名を馳せていた記憶があるのだが、どうもそれはあてにならないらしい。


「まあ、いいか」


 辺境で誰の目にも映らないのであれば好都合。それなら周辺の反対も少なく、思う通りの改革が進められる。


「エルファ、できれば早いうちがいい」


 善は急げ。ここはツバイク伯爵の後任が決まらないうちにさっさとジグサールを手に入れてしまおう。


 エルファは「畏まりました」といういつものお辞儀を行ってこの場を後にした。


 数日後――国からの要請で俺は男爵の地位を手にいれ、めでたくジグサールの赴任となった。



 そして俺は単身ジグサールへと向かう。


 サラはカリギュラスに残りたいと言ったのでお目付け役としてエルファを置いてきた。エルファは付いて来たさそうだったが、ヒュエテルさんの対応もあるのでエルファはカリギュラスから離れさせられないと説き伏せている。


 まあ、実際の理由は今回の手腕の敏腕さに傍で置いておくのが怖くなったから。何故伯爵の逃亡という情報を察知できたのか何故こんな数日の間に爵位と領地を得られたのか、その理由が知れるまでエルファにあまり近寄られたくなかった……チキンだと罵ればいいさ。


 そして、キッカ達は学校を卒業した後4人でパーティを組んで冒険がてら試金石となる素材を集めてくれるので何も言うこと無し。


 で、俺がジグサールへ赴任した際の第一印象が。


「見事に何もないな」


 屋敷に入った俺は帳簿を確認してそんな感想を漏らす。


 俺の知っているジグサールは多くの腕の良い職人を抱える鍛冶場が乱立している都市だ。この都市に住む人々の大半は職人で、外部からは良い武器を買い求めようと遠方からやってくる冒険者で溢れかえる活気ある都市だった。


 しかし、目の前に広がる光景はそれとは程遠い。


 今のジグサールには何軒かの古びた工房と空き家だらけの住宅群しかない。都市に現在唯一開いている中央商店街は店の大半が閉まっている。


 この都市の人口の大半はどこからか流入してきた身元不明者であり、まともな身分を持つ者の方が少ない。


 王都であるカリギュラスの市民と貴族の割合は9割で、このジグサールは3割しかいないことを鑑みるとどれだけ酷いか理解できるだろう。


「金も無ければ人手もいない、挙句の果てには物も無い」


 周囲の魔物が強すぎるためにここまで訪れる行商人が少なくなり経済が停滞して人口が流出する。人口が少なくなるとさらに訪れる行商人が減るという悪循環に陥っていた。


 ツバイク伯爵が失踪した理由も分かる。


 これだけ悪条件が揃えば逃げ出したくなるだろう。


 事実、俺も始める前に心が折れそうだ。


 ここがプレイヤー時代に親しんだ都市でなければ受けようと思わなかった。


「郷土愛って言うのかな」


 我知らずそんな呟きが漏れる。


「まあ、泣き言はここまで」


 俺は頬をピシャリと叩いて気持ちを切り替える。


 周囲の魔物が強いということはその分手に入る素材も上等な物が多い。


 ヒュエテルさんと相談して冒険心溢れた腕っ節の強い孤児をこちらに回してもらおうか。


 監督はキッカ達に任す。


 そして、彼らに素材を集めさせて加工して売る。


 まずはG。


 それが無ければ改革など夢のまた夢。


 治安や人口問題などやるべきことはたくさんあるが、今はGを溜めることに決めた。


「さてと、やりますか」


 俺はそう頷くと筆を手に取ってヒュエテルさんに手紙を書き始めた。


 魔物大進行まで後2年。


 急ぐ必要があるな。




名前: ユウキ=ジグサリアス=カザクラ

装備:

武器アダマスダガー

防具貴族のマント

頭シャインヘルム

足黒龍革の靴

装飾品サファイアの指輪

お金 324600G

ステータス

剣 35

魔法 20

採取 25

料理 5

鍛冶 75

調合 66

裁縫 43

支配 5

 

 


 貴族になったのでおれはミドルネームとスキル『支配』を手に入れた。


読者様からの要望を考慮して主人公を単身ジグサールへと向かわせました。

次話から新キャラが登場しますが、読者様にとって魅力的に映るよう努力します。

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