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鈴 -RIN-  作者: 琉璃華
2/2

誘い

私が鈴に連れられてやってきたのは

さっきの神社の中。


見た目はボロボロなのに

中に入ってみると意外と綺麗だった。


綺麗というか別世界って言った方が

あってるかもしれない。


中は畳で、蝋燭があり、

それが明かりになっていた。

あとは座布団があるだけで

ほかは何もない。


これも鈴の力なのかな?


「ここ座って」


鈴は一番入り口に近い座布団に

座るように言った。


言われた通りに黙って座る。


そして向かい合うようにして

鈴が座った。


なんか落ち着かないなぁ…


「そんな緊張しなくてもいいのに」


鈴は背中の剣を磨きながら言った。


そんなことを言われると

余計に緊張してしまう。


「はぁ…」


曖昧な返事をすると

鈴は思い出したように顔を上げた。


「そういえばあなたの名前は?」

「…へ?」

「な―ま―えっ

 いつまでもあなたって呼ばれるのは

 気持ち悪いでしょう?」


お、おっしゃる通りです…


「よ、吉村藍那です…」


私は小声で言った。


でも周りが静かなせいか

自分でもよく聞こえる。


「藍那…いい名前ね」


そう言うとまた鈴はフッと笑う。


鈴のこの笑い顔を見ると

不思議と安心してしまう。


やっと緊張が解けた気がした。


ふぅ~と息をはいて

肩の力をぬいた。


「どうしてあんなことしたの?」

「…え?」


また肩に力が入る。


一瞬何のことを言っているのか

わからなかった。


「神社で遊んでたでしょ?」

「あ…」


そうだった。


いろんなことが起こりすぎて

私は今までの出来事を

忘れてしまっていた。


私はゆっくり話し始める。


「学校の噂でこの山に

 お化けが出るって聞いて

 本当に出るのか確かめに来たの。

 そしたら…あんなことに…」


私はなぜか下を向いてしまう。


怒られるような気がして

鈴の目を見るのが怖かった。


「そう…。

 でもあなた…いや、藍那は

 来たくて来たわけぢゃないみたいね。」


「!! …なんで…」


私は驚いて顔を上げた。


顔を上げると鈴の笑った顔が

視界に入ってきた。


確かに本当のこというと

私はこんなとこ来たくなかった。


あんなくだらないことしても

なんの得にもならない。


それでもここに来た理由…


いや、連れてこられた理由って

言った方が正しいかも。


「霊の姿が見えるみたいね。」


鈴は静かにそう言った。


そう、私は霊が見える。

だからあの子たちに連れてこられた。


最初は嫌だったけど

逃げるのはもっと嫌だったから

最終的に自分で着いていったけどね。


…あれ?

でもなんで鈴は知ってるの?


「なんでそのことを…」


私がそう言うと鈴は目を丸くした。


「なんでって…

 私のこと見えてるぢゃない。

 それに私には霊力が見える。

 藍那を見たときすぐわかったわ。」


鈴は呆れたように言った。

そしてそれを聞いた私は変に納得した。


やっぱり鈴って…


「霊…なの?」

「なにをいまさら!!

 わかってるくせに~

 まぁそこらへんの奴とは

 少し違うけどね」


あー…やっぱり…

霊ですよね…


私は苦笑いするしかなかった。


でも『少し違う』って

どういうことなんだろう。


「今まで見てきた霊、

 さっきの狐と違うとこない?」


鈴は剣を磨く手を止めずに

私に問いかけた。


今までと違うところ…


気になっていることは確かにある。


…今聞くしかない。


「…なんで鈴はそんなに

 生きてる人間に近いの?」


さっきまで気になっていたこと…

それは鈴は生きてるみたいだということ。


私が今まで見てきた霊は

いかにも死人という感じがしていた。


でも鈴は違う。


生きてる人間そのもの。

でも霊だという。


不思議でたまらなかった。


鈴は剣を床におくと

私の目を真っ直ぐ見た。


「正解。

 私は霊をあの世に帰すのが仕事なの。

 だから普通の霊とは違って

 この世の人間に近い。

 あの世とこの世の間の人間って

 とこかしらね」


鈴は笑って言った。


霊を帰す…

そんな仕事あるんだ…


というか頭の中が

ごちゃごちゃになってきた。


私がポカーンとしていると

鈴はそうだ!!と言って手を叩いた。


「ねぇ、藍那

 仕事手伝ってくれない?」

「……え?」


…今なんとおっしゃいました?


「最近仕事が多くて大変なのよ。

 大丈夫、戦い方は教えてあげるし、

 武器だってあげるわ。

 だからお願い!!」


そう言って鈴は頭を下げた。


この人何してんのぉぉぉ


「ちょ、ちょっと待って!!

 頭上げて!! ね!?」


私は立ち上がって

とりあえず鈴に頭を上げさせた。


鈴は真剣な表情で私を見る。


「今日藍那に会ったのも

 何かの縁だと思うの!!

 藍那みたいな強い霊力を持ってる子

 そんなにいないわ!!」


鈴は必死に言う。


でも私は

どうしたらいいのかわからない。


霊を帰すなんてことできない…


「わ、私にはそんなこと…」

「大丈夫!! 私がいるわ!!」


なんだろう


鈴が必死すぎて

怖くなってきた…


こんなに言われると

断りずらい…


「と、とりあえず落ち着いて?」


私はなんとかして鈴を座らせる。


鈴はごめんなさいと言って

落ち着いてくれた。


「なんで私なの?

 私じゃなくても他にも…」

「私の姿をハッキリ見れたのは

 藍那、あなただけなの」


鈴は私の言葉を遮って言った。


私はというと

驚いて言葉が出なかった。


鈴の目が真剣だったから。


今まで真剣じゃなかったわけじゃない。

でもさっきとは違った。


「こんな仕事 そこらへんの人間に

 ほいほい頼まないわ。

 …というか頼めない。

 私が姿をできるだけ隠してるからね。

 でもあなたは私が見えている。

 それは霊力が高い証拠。

 だから頼んでるのよ。

 霊の数が増えすぎて

 私一人じゃ無理なの。

 だから…お願い。」


私の目の前で

また鈴は頭を下げた。


さっきとは違って静かに。


「鈴、顔あげて?」


鈴はゆっくり顔を上げる。


私、決めた。


「私やってみるよ、その仕事」


その言葉を聞いた鈴の顔は明るくなり、

それをみた私も自然に笑顔になった。


今日会ったばっかりで

しかも相手は霊で、

いきなりこんなことを頼んできて

普通なら断るだろう…


でも私にしかできないのなら…

私にしか霊を救えないというのなら

私は、やる。


「嬉しいわ!!

 じゃあじい様に報告しないとね!!」


じ、じい様…?

鈴のおじいさん?

ってことは…


私の顔は強ばった。


「じい様!!

 助っ人ですよ―」


鈴は部屋の隅のほうに話しかけた。


どんな人なんだろ…

きっといかついんだろうな―…

あぁ―…怖い


はぁ…と私がため息をついたときだった。


「話は聞いておったよ。

 まったくお前は…

 会ったばかりの娘に

 こんなことを頼みよって…」


奥の方から声が聞こえ、

少し顔をあげると黒い物体が見えた。


あぁ、これがじい様…

案外かわいらし……


え?


「ね、ねこぉぉぉぉぉ!?」


私の目の前には黒猫がいた。

猫がしゃべってる…


叫ばずにはいられなかった。


「わしはヤマトじゃ。

 まぁお前さんもじいと呼んでも

 ええがのう」


そう言って黒猫…いや

じい様は笑った。


私はもう苦笑いしかできない。


今年の夏は

驚くことばかりになりそうです…



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