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鈴 -RIN-  作者: 琉璃華
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鈴の音


「藍那―!!早く来ないと知らないよ―??」

「ちょ、ちょっと待って!!」



夏の暗い山の中、

懐中電灯の光が05つあった。


前に04つ、後ろに01つ。


その後ろで1人、寂しく歩いているのが

私、吉村藍那(よしむらあいな)


夜ってだけで暗いのに

周りに木があるせいか

さらに暗いように感じた。


「はぁ…。なんで肝試しなんかやるのかね」


そう言って私はため息をついた。


私たちの高校では

あることが噂になっていた。


夜中に学校のすぐ近くの山、

つまりこの山の奥にある

古くて小さな神社に行くと

狐のお化けが出るやら出ないやら…。


この噂が本当かどうか確かめるため

私たちは今ここにいる。


「あ、あれじゃない?」

「うげ…気持ち悪…」


前を歩いていた四人が立ち止まり、

懐中電灯で前の方を照らす。


私は見えなくてもなんとなくわかった。

そこに神社があることが。


私は少し足を早めてみんなの元へ急いだ。


「うーわ…気味悪い…」


私は神社の姿を視界に入れた瞬間

ヤバいと思った。


なんていうんだろう…


神社の周りだけ

空気が違うような気がする。


ヤバい…

それしか言いようがない。


私は一歩後退りした。


「よし…やるか。

 順番にお参りしていくぞ。

 何か起こったらあれを使え、いいな?」


みんなは黙って頷いた。


正直もう帰りたい。

絶対この雰囲気…出る。


「まずは俺かな」


クラスのお調子者、晃佑(こうすけ)

神社の方へ足を進める。


私を含めた他四人は

黙って晃佑の背中を見つめる。


だんだん晃佑の背中が見えにくくなり

私たちは必死に目を凝らして晃佑を見る。


晃佑は賽銭箱のところで立ち止まり

用意していたお金を賽銭箱にいれて

駆け足で戻ってきた。


これだけのことなのに

とても長く感じた。


「なんともなかったぞ?

 狐の霊なんてほんとにいるのか?」


つまらなさそうに晃佑が言った。

さっきまでビビってた奴がよく言うよ…


私が苦笑いしていると

隣の女の子、奈美(なみ)が前に出た。


「いやいや、いるでしょ―!!

 あたしが行ってみてくる!!」


そう言うと懐中電灯を神社の方に向け

ずかずかと前に進んでいく。


みんな唖然としていた。


女の子とは思えない…


奈美はお金を放り込み、

周りを見渡してから

回れ右をして帰ってきた。


「確かになんにもなかったや~」


ガッカリしながら奈美が言う。


私は出たらやばいと思うよ、うん。


私がため息をついていると

紗理奈が肩に手をおいた。


「とりあえず一人ずつ行ってみよ?

 時間経ったら出てくるかもしれないし…」


いや、だから私は出てほしくな…


「そうだね。次だれ―?」


なんかもうみんな怖さなんて

どこかにいってしまっていた。


私一人だけまたため息をついた。



一人、また一人と神社に行き、

お金を入れて、戻ってきた。


紗理奈が駆け足で戻ってきて

ついに私の番が回ってきた。


「藍那、最後なんだから

 ちょっと長めに見てきてね!!」


奈美が楽しそうに私に言った。

あー…もう泣きたい…


「はいはい…」


適当に返事をして神社に向かう。

みんなは期待しながら私を見送った。


神社に近づくにつれて

姿がはっきり見えてきた。


とても小さな神社で、

鳥居の近くには狐の像が

道を挟んで2体置かれている。


狐の像と目を合わせるだけで怖かった。



賽銭箱の前に立ち、

お金を入れて目をつむり手を合わせる。


はぁ…

絶対私たちバチ当たるって…


あーまぢごめんなさい…




そう思ったそのときだった。


チリーン…チリーン…


私は驚いて顔を上げて

あたりを見渡した。


何今の?

鈴…?


チリーン…チリーン…


たしかにまた鈴の音が聞こえた。

小さかったけど間違いない。


「…誰かいるの?」


後ろを振り返りながら

誰も居ないはずのところに聞いてみる。


「きゃー!!」

「!?」


返事の代わりに叫び声が聞こえた。


みんなの方を見てみると

鳥居のそばに白く光る物体が二つ。


そう、像の狐の霊だ。


やっぱり居たんだ…

ヤバい、どうしよう


「みんな!! 塩だ!!

 塩を投げるんだ!!」


晃佑が必死に叫ぶ。


私たちはここに来る前に

各自、塩を持ってきていた。


みんな持ってきた塩を狐に投げる。


…でもなんにも起こらなかった。


「ちょ、ちょっと…

 どうすんのよこれ…」


奈美が半泣きになって

もう一人の男の子、大輝にしがみつく。


「どうするって…

 逃げるしかないだろ!!」


そう言って瞬間

みんなは元来た道を戻ろうとする。


しかしそんな簡単に帰れるわけがない。


二匹の狐は一瞬で移動し、

道をふさいでいた。


「!!

 くそ…」


さっきよりも狐との距離が近くなり

みんな後ろに下がった。


私はいきなりすぎて

動くことができずにいた。


ただ呆然とみんなを見てるだけ。


何をすればいいのかわからなかった。


迷ってるうちに

みんなは狐に距離をつめられて行く。


いつの間にかみんな黙って

体を動かせずにいた。


これって金縛り…?


どうしよう…

なんとかしなきゃ…!!


私はみんなのところへ走った。


どうやってこの霊を追い払うとか

どうやってみんなを助けるとか

そんなことは全く考えてない。


でも一瞬なら金縛りを

解くことぐらいできるかも…。


そう思って走り、

みんなの姿がはっきり見えたときだった。


「止まって…。



 この子達を追い払うのは

 私の仕事…。」


私は驚いて立ち止まり、

声が聞こえた方を見てみる。


そこにはいつの間に現れたのか

赤い着物を来た女の人が立っていた。


長くて真っ黒な髪を

だんごにして1つにまとめ、

背中には剣をかついでいた。


相当髪が長いのだろうか

だんごからまだ髪が出ており、

その髪は風でなびいている。


そしてかんざしをしており、

そこには鈴が2つついていた。


女の人は黙って剣を抜き、

剣の先を狐に向けた。



「…成仏しなさい」


女の人は確かにそう言った。


そして言った瞬間、狐の前に移動し、

狐の顔に剣を突き刺した。


チリンと鈴の音が鳴り響く。


「ギィ―!!!!」


刺された狐は耳をつんざくような

声をあげて消えていった。


「す、すごい…」


女の人はすぐにもう一匹の方に

剣の先を向ける。


剣を向けられた狐は

唸るのをやめ、その場に座り込んだ。


それはまるで

主人に従う犬のようだった。


その姿を見た女の人は剣をしまい、

狐の前まで歩いていき、

優しく狐の頭を撫でた。


すると狐の姿は薄くなり、

しばらくするとその姿はなくなっていた。


助かった…


私はへなへなと

その場に座り込んでしまった。


「ねぇ」


いきなり上から声が降ってきた。


私はビクッとして顔を上に上げる。


さっきまでなかった女の人の姿が

今目の前にあった。


女の人は上から

私を不思議そうに見つめる。


「な、なんでしょう?」


少しビクビクしながら言った。


この人が普通の人じゃないことは

さっきのを見てわかっている。


でもなぜだか怖くなかった。


ただ何者かわからないから

普通にしゃべれない。


女の人はしゃがみ、

私に目線を合わせた。


近くで見ると

肌が白くてとても綺麗だ。


「なぜあなたは動けるの?」

「…え?」


なぜこんなことを聞くのか

全くわからない私は

何も答えることができなかった。


無言の私を見て、

女の人は首を傾げた。


「今私は『この世の時間』を止めてるの。

 だからあの子達は止まっている。

 なのにあなたは普通に動けている。

 どうして?

 あなたはこの世の人間でしょ?」


「ま…まぁ…」


というかこの人は一体何?

時間を止めてるって…

しかも『この世の時間』?

意味がわからない…


女の人は立ち上がり

ニコッと笑った。


「あなたみたいな人初めてだわ。

 気に入った。

 お話しましょ?

 あなたも私のこと知りたいでしょう?」


「はぁ…」


勝手に話が進んでるような気がする…

私どうなるの?


「大丈夫、みんなは家に帰しておくわ。

 さ、行きましょう」


女の人は手を差し出してきた。


私は少し戸惑ったけど

私もこの人のことが知りたい。

どうなってるのか知りたい。


私は手を握り、立ち上がった。


「あ、名前言ってなかったわね。

 私の名前は(りん)

 よろしくね?」


鈴はそう言ってまた笑った。

かんざしの鈴がまた音を鳴らして揺れた。


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