第13話
メネオスでの一件で美鈴に揶揄われる様な事は無かった
『まぁアンタが年上の彼女と器用に付き合えるとは思えないし?』
と、まぁ馬鹿にはされたがな・・・
しかし・・・・
「美鈴ちゃん、今日も綺麗だねぇ~」「み、み、み美鈴さん!!僕とお付き合いしてください!!」「美鈴君、僕はこの近くのIT企業を経営してるんだ、是非とも君を社長夫人にしたいんだけど、どうかな?」
決して広くない店内の「美星」には、夕方6時の開店と同時に、大勢の客が押し寄せて来た
俺も乱校に通っている間は美鈴に「高校生を、酒を提供する店で働かせられない!」と店の営業時間中のバイトは断られていたが、本日は仕込みが遅れていたのも有ってそれが終わるまでバイト時間を延長して、厨房の奥で牛筋煮込みやら、イカと大根の煮つけ等の煮込み料理の火の番をしている
「アハハハハ、皆さんお上手ですねぇ~三十路のオバサンを揶揄わないでくださいよぉ~あっはーい!3番様ビールお持ちしま~す!」
5人かけのカウンター席も、4人かけのテーブル席も既に満席
(つか、客って全員男ばかりかよ・・・)
厨房の隙間から店内を覗くと、頭巾をした美鈴がお酒や料理をせわしなく運んでる様子と共に店内にいる客の様子が少しだけ見えた
「おっ美鈴ちゃん良いお尻してるねぇ~」
お盆でビールを運んでる美鈴の尻を、既に出来上がってる酔っ払いのハゲ親父が触ろうとしていた
(ちっ!あのエロジジイが!!)
俺が厨房から、飛び出そうとしたら美鈴がキッとこちらを鋭い眼で制止する
ヒラリとエロ親父の手を、器用にすり抜けた美鈴はニコニコと笑顔で「もぉ~ダメじゃないですかぁ~奥さんに言いつけちゃいますよぉ~」と軽くお盆でハゲ頭を叩く
「いやぁ~また美鈴ちゃんに振られちゃったよぉ~アハハハハ」
店内には、エロハゲ親父の飲み仲間との笑い声が広がる・・・その輪の中心で美鈴もお客に混じって楽しそうに笑っていた
日頃見せない美鈴の仕事姿・・・お客の中で笑っている美鈴の表情は「楽しそう」と言うより「仕事する女性」と言った印象を受けた
(これが社会に出て働くって事なのか・・・)
立花学園への転入も気に入らなかったら退学して、美鈴の所で働けば良い・・なんて軽く考えていた
しかし、目の前で額に汗を滲ませながら、笑顔で接客する美鈴の様な事が果たして今の俺に勤まるだろうか?
『俺はお前等の金儲けの道具になるつもりはねぇ』
以前、茶谷に促されるままに参加したガチンコダウンで、桐生を練習用リングに沈めた後で鳳のジジイに誘われた時に返した俺の言葉
働く美鈴の姿とあの時の自分の言動を重ねて見ても、いかに自分がガキなのかって事を痛感する
そんな事を考えながら煮込みの鍋の前に立っていると、いつの間にか横に立っていた美鈴が、
「あぁもう良いんじゃない?あとは器に移しておいてくれて、今日はもう上がって良いよ俊哉」
先程の客の前で見せていた、営業スマイルではなく自然な美鈴の表情をじっと見つめてると
「ん?なんだ?私の顔に何かついてるか?」
キョトンとして自分の顔を触りだす美鈴
「いや・・・何でもねぇよ」
そう口にし、鍋から少し大きめの器に牛筋煮込みやらを移して台の上に並べていく
「そう?変な奴・・・あっそうだ・・・これ持っていきな」
そう言うと、美鈴は俺にタッパーに入ったオニギリと焼き魚の切り身を手渡して来た
「あぁいつも悪いな」
「はぁ?あんたマジどうしたん?今日は?風邪でもひいた?」
「何でもねぇって言ってんだろ、たまにはそういう気分になる事もあるんだよ!」
美鈴からタッパーを受け取ると、振り返る事なく手を振り店の勝手口を出てアパートへと帰宅した
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すっかり暗くなった山の麓にあるアパートへの帰り道でも、俺は美鈴の働く姿を思い出していた
粋がっていても、所詮は高校生のガキ・・・実際に保護者の許可がなきゃバイトすらまともに出来ない中途半端な立ち位置
それに比べて家茂は、家業とは言え大工として社会に出て、そのうえ家庭をもとうとしている
(今の俺は一体なんだ?乱校を退学になって、あれだけ嫌ってたアイツらに別の高校を用意してもらって、抗おうにも美鈴の店を盾にされ従うしか無い、その上気に入らなきゃ辞める?・・・そんな腑抜けた覚悟のどこが「漢」なんだ?)
ふと右手を上げると巾着袋はほんのり暖かいタッパーの感触がある
「そうだな、せめて高校くらい卒業して美鈴に世話かけない程度の大人にはならないとな・・・」
そんな事を考え自分の部屋の前につくと、ドアの前にはダンボールが・・・差出人は書いていない「海原俊哉様」と俺の宛名だけ
俺は部屋の鍵を開け巾着を段ボールの上に乗せると、一緒に部屋の中へと持ち帰った
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風呂に入りさっぱりしたところで、美鈴の持たせてくれたオニギリを口にくわえながらダンボールを開梱する
「これは・・・学生服?それに教科書にノート・・・それに鞄?」
どうやら、来月から通う立花学園の制服だったらしい・・・乱校の時は学ランだったが立花学園はブレザーみたいだ・・・
茶色を基調とした生地に黒のラインが入ったチェック柄のスラックスに、薄いピンク生地のブレザー。左胸のポケットには桜の花の背後に水色の星がデザインされた校章がプリントされていた
それと、白いカッターシャツに緋色のネクタイ・・・
俺はそれらを着用してみる・・・
「おいおい、サイズバッチリかよ・・・」
オーダーメイドかと思う程、俺の身体のサイズにピッタリだ・・・それに革鞄の下には2足の革靴・・・まぁ一足は予備なんだろう
差出人は書いて無かったが、容易に想像できる・・・
「まぁ今は借りとくさ・・・いずれ俺が働いて稼いで、奴らの目の前に熨斗つけて叩き返してやるさ!」
こうして、日は過ぎ春の季節となりいよいよ4月・・・俺の立花学園への転入の日を迎えた
そこで俺は知る事になる、この立花女子学園の秘密とそこに通う女子生徒の秘密を・・・
そして連中との因縁も・・・
第一章 最強不良男子高校生爆誕 完
NEXT・・・「第二章 俺はラブコメ主人公じゃねぇ!!」
ここ迄お付き合い頂き有難う御座います
不本意ながら、この作品はここで完結とさせて頂きます
皆さんに需要が有りそうなら、アルファポリスで続きを書くかも知れません




