第5話 滅びの魔導士セラ──その正体と目的
月明かりの下、セラは俺たちを見下ろすように宙に浮かびながら言った。
「あなたには、“村を滅ぼす未来”を止めてもらうわ」
いや物騒すぎるだろその第一声。
リリアが震える声で叫ぶ。
「ちょ、ちょっと待って!
おじいちゃんが村を滅ぼすなんて、あるわけないでしょ!!」
俺も全力で頷く。
「そ、そうだよ!
俺なんて村の階段で転んだだけで死にかけるのに、
どうやって滅ぼすんだよ!!」
セラは冷静に言った。
「だからよ。
“弱いこと”が滅びの原因になるの」
(は?
弱い=滅び??
俺、存在が災害なの??)
セラはゆっくりと降りてくると、杖を軽く振り、
地面に魔法陣を描いた。
その中心に映し出されたのは――
◆未来予知映像
“巨大な黒い獣”が村の門を破壊し、
火が上がり、
人々が逃げ惑う姿。
そして――
その獣の前に立つ“老人の姿”。
リリア「……おじいちゃん!?」
俺「ちょ、ちょっと!? これ未来!?
俺なにしてんの!?!?」
セラ「この未来では――
あなたは“守れずに倒れる”。
それが引き金で、獣が暴走し、村は壊滅する」
(俺が……倒れると村滅亡……?
90歳だから普通に倒れるんだけど?)
リリアは俺の手を握りしめ、必死に言った。
「そんな未来、絶対いや!!
おじいちゃんは関係ないもん!!」
セラは静かに首を振った。
「関係あるわ。
あなたのおじいちゃん――ガルドの身体には
“雷の核”が宿っている」
俺「雷の核?」
セラ「強大な魔力の塊。
ガルドは老衰で弱まり、
核の制御ができなくなっていた。
暴走寸前だったの」
そして、俺を真っ直ぐ見た。
「あなたが転生してきたことで……
“暴走のタイミング”がズレた」
(……どうやら俺、ギリギリで爆弾を引き継いだらしい)
セラは淡々と続けた。
「あなたが弱いまま倒れると、
核が一気に暴走し、
村全体を吹き飛ばす可能性がある」
俺「いやほんとなんで俺の人生こうなった!?」
リリア「じゃあ……どうすれば村は助かるの?」
セラは杖を構え、ゆっくり近づいてきた。
「あなたを“鍛える”のよ」
俺&リリア「鍛えるぅ!?!?」
セラは迷いなく言った。
「私があなたを指導する。
老いた身体でも扱える魔法と、
暴走しない雷核のコントロールを教える」
リリアが目を輝かせる。
「本当に!? おじいちゃんを若返らせる魔法も?」
セラ「若返りは無理よ。
ただ……“三十歳くらいの身体の動き”には戻せるかも」
俺「三十歳!? それならだいぶ違う!!」
リリア「よかったね、おじいちゃん!!」
セラが手を差し伸べてきた。
「では――
あなた、ついてきなさい。
村を救うために、
そしてあなた自身のために」
俺はしばらく迷った。
90歳ボディのまま村を滅ぼす未来?
それとも、謎の少女魔導士に鍛えられて新生老人になる未来?
決まってるだろ。
「……わかった。
俺、やるよ。
村を守る。リリアを守る」
リリアが笑い、セラは満足そうに頷いた。
「いい答えね。
じゃあ、特訓は――」
魔法陣が光り、風が巻き起こった。
「今からよ」
「え!? 今!? 夜だよ!?!?
おじいちゃん寝る時間だよ!!??」
そのまま俺とリリアは、
セラに連れられ、
夜の森の奥へと連れ去られていった。
こうして――
90歳の特訓生活(地獄)が幕を開けたのである。




