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第2話 90歳、全力の大暴走

森の奥へ行くのは反対した。

全力で反対した。

腰がまだ痛いからだ。

というか歩くのだけでも限界だ。


だが――


「おじいちゃん、私、どうしても“赤い薬草”が欲しいの!」


リリアの必死な目を見たら、断れなかった。


(……もう、孫には勝てないな)


結局、杖をつきながら、森の奥へ向かうことになった。


◆森の奥は魔物だらけ


「……リリア、何か妙に静かじゃないか?」


「うん。ここは中級者以上じゃないと来ちゃダメな場所なの」


いやもっと早く言え。


ガサッ。


木々の間から、巨大な影がぬるりと現れた。


長い触手を持つ、紫色のイノシシのような魔物――

ヴァイオレット・ボア。


「ひぃっ! 中級魔獣だ――!」


リリアが悲鳴を上げる。


俺は思った。


(ムリムリムリムリ。90歳で戦うやつじゃない)


転生したばかりの老人に戦わせる難易度じゃない。


だが、魔物は容赦なく突進してくる。


「リリア、下がれ!!」


俺の身体はボロボロなのに、

“冒険者の本能”だけは勝手に働いた。


杖を握る手に力がこもる。


「……っ!」


次の瞬間――杖が勝手に動いた。


俺の意思じゃない。完全に反射技だ。


「――《大地裂き》!!」


杖を地面に叩きつけた瞬間、

地面が真っ二つに割れ、衝撃波が走り、

ボアが吹き飛んだ。


リリアがぽかんと口を開ける。


「おじいちゃん……反則級に強いじゃん……!」


いや俺じゃなくて“この身体の持ち主”が強いんだ。

俺の腰は今ので完全に死んだ。


「いだだだだだあああ!!」


地面が割れた衝撃で腰が砕けかけた。


ボアは怒り狂い、咆哮して突進してきた。


◆第二波:魔獣の連続攻撃


ヴァイオレット・ボアは

突進→後ろ蹴り→毒霧

の三連コンボで襲ってくる。


90歳で避けられるわけがない。


「おじいちゃん危ない!!」


リリアの叫びを背に、

俺は必死で杖に体重を預けて跳ね上がった。


身体はボロボロなのに、再び“反射”が働く。


「《風裂斬ッ!!》」


杖が風を切り、衝撃波が走る。


ボアの体の一部が切断され、

大きくのけぞった。


(俺、まるでボス戦中の賢者みたいなんだが)


身体はヨボヨボ、

動きは神速、

ダメージは全部腰にくる。


この戦闘、命より腰が危ない。


◆決着


ボアが怒り狂い、最後の突進をしてきた。


(マズい……!)


リリアが巻き込まれる!


俺は地面を蹴り、

杖を振りかざし――


「うおおおおおおッ!!」


身体が勝手に超速度で動き、

雷衝撃サンダークラッシュ》が発動。


ドゴォオォン!!!


雷光が森を照らし、

ボアはその場で炭化した。


リリアが呆然と言った。


「……おじいちゃん、英雄の再来だよ……」


いや、違うんだ。

本気で身体が痛いんだ。


「いでででででッ……っ!!

ちょ、リリア……肩貸して……」


「うん! 私が支える! 世界最強のおじいちゃん!」


(やめてくれ……今の俺は世界最弱の腰なんだ……)


◆赤い薬草の秘密


倒れたボアの後ろに、

小さな“赤い薬草”が光っていた。


リリアがそっと拾う。


「これ、お母さんの病気に効く薬の材料なの。

どうしても欲しかったの」


「……そうか」


それなら、命がけで来てよかった。


「おじいちゃん……ありがとう」


リリアの小さな手が、俺の手をぎゅっと握った。

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