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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
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maybe,maybe not

作者: 米田
掲載日:2025/11/10

登場キャラは全員20歳以上です。飲酒シーン・キスシーンあります。飲酒を強く勧めるシーンがありますが、あくまで作品内の表現であり、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

 薄暗い照明の中で、男の子が2人で1人の女の子を囲ってお酒を飲ませている。あの子、大丈夫なのかな。ガンガンに鳴っているよく分からない音楽の中で、私が知らない世界が繰り広げられている。


 お酒は20歳の誕生日を迎えて一口飲んだだけですぐ具合悪くなったので、いつも飲み会は誘われても断っていた。それなのに、大学祭の手伝いをしたら是非打ち上げにおいでよ、と友達に強く言われ、断れずについてきた。


 私を誘ってくれた友達は、私の知らない男の子を膝枕して何だかしっとりとした雰囲気になっている。別世界過ぎてクラクラしてきた。一体これは何なんだろう。


 今日、南ちゃんを誘って良かった。私1人だったらどうしたらいいか分からなかった。横に座っている南ちゃんをチラリと見た。長い足を組んで、つまらなさそうにグラスのお酒を口に含んでいる。髪の隙間から、耳に付けていたピアスが鈍く光った。


 南ちゃんは学部も同じで、奇跡的に住んでいる学生マンションの部屋も隣だ。スラリと伸びた手足に吊り目気味の顔が猫みたいで可愛いなと思っているのだけれど、周りのみんなは美人で冷たそうで近寄りがたいと考えているようだ。地方から出てきて右も左も分からない私と仲良くしてくれる、とても優しい子。今日は飲み会が心細いと言ったら、二つ返事で付いてきてくれた。

 誕生日祝いに一緒に飲んでくれたのも彼女だ。先に誕生日を迎えた彼女が、一緒に飲めて嬉しいなんて言ってくれたのに、私はすぐに具合悪くなってしまって申し訳なかった。


「……ごめんね。もう帰ろうか。お金は、えっと、ここに置いておけばいいかな……?あ、送金しておけばいいか」

「いいの?もう」

「だって、これ、ちょっと居心地悪いっていうか……」

「まあ、つばさが来たいって言いそうな場ではないよね」


 私たちがそんなことを言いながら部屋を出るタイミングを窺っていると、隣にどさりと誰かが座った。そのまま肩に手を回されて、硬直する。


「つばさちゃん、手伝ってくれて、ありがとね〜」

「あ、はい……」


 確か、今回の学祭の出し物の音頭を取っていた3年生だ。あの時は優しくて頼り甲斐があるように見えたけど、今はアルコールの匂いがすごい、ただの酔っ払いにしか見えない。


「なに、飲んでないの?」

「お酒、苦手で……」

「えー!めっちゃ可愛いじゃん!超イメージ通り!でもこういう場では飲まないとさ!」


 卓上にコップを置かれ、中に透明なお酒を数センチ注がれる。


「はい、飲んで!お疲れ様!」

「え?いや、本当に私無理で……」

「つばさ〜せっかく先輩が注いでくれたんだよ?飲まないと!」


 さっきまで男の子に膝枕していた友達が、先輩の隣からひょっこり顔を出す。いつの間にこっちに来たんだろう。先輩の腕に絡みついて、私を見てケラケラ笑っている。


「の、飲めないって、本当に具合悪くなって……」

「えー?これしか入ってないんだよ?ちょっとだけだし、大丈夫だって」


 確かに、ちょっとしか入ってない。グラスに並々なら無理だけど、これくらいなら大丈夫なのかな?

 失礼になってしまうのも嫌だし、少しだけ飲んでもう帰っちゃおう。そう思い、私が手を伸ばすと、その前に横からグラスをサッと奪われた。

 びっくりして顔を上げると、南ちゃんが顰めっ面でグラスを眺めていた。


「これ、スピリタスでしょ?やめなよ」

「すぴ……?」

「度数高いんだよ」


 そしてグビッと一気に煽った。そして机の上に空になったコップを置いてニコリと笑う。


「ご馳走様でした。挨拶も済みましたし、私たち帰りますね」

「え?あ、うん……」


 呆気に取られた先輩は、何とかそれだけ言う。その横から友達はキッと眉を釣り上げて睨んできた。


「ちょっと内海さん!空気読んでよ!はい、つばさ、ちゃんと飲んで!」

「え、でも」

「こういう場に来て一杯も飲まないで帰るなんて、非常識だよ」


 わざわざ先輩と私の間に割って入って座り、コップに注いで私の目の前に差し出す。


「ほら、飲んで!」

「う……」


 私は無理矢理コップを持たされ、揺れて波打つお酒見つめる。

 度数が高いものを、そう何度も南ちゃんに飲ませられない。私が覚悟を決めて口を付けようとすると、手を掴まれた。


「うわ?!」


 南ちゃんがそのまま自分の口へ持っていき、一気に口へ含む。そして、私の隣に座る友達の襟ぐりを掴んで強引に引き寄せ、


「ええええ?!?!」


 キスをした。画面越しじゃなくて生で見るのは初めてだし、女の子同士なんて、そもそも漫画でもテレビでも観たことがない。


 ポタ、と口の端からお酒がキラッと光って溢れて、私の手の甲に落ちた。ちゅっと口付ける音が妙に艶かしく感じた。


 パッと掴んでいた襟元を、南ちゃんが離す。南ちゃんは、ペロリと口の端を舌で拭い、馬鹿にするように鼻で笑った。


「可愛いね。初めて?」

「は?え……?」


 友達はポカンと口を開けたまま、状況を受け入れられてないようだった。

 南ちゃんはそのまま私の腕を引いて立ち上がり、何も言わずにドアを開けて廊下へ出た。そのまま無言でスタスタと、店の外へ出る。


 真っ暗の道をひたすら無言で歩き、住宅街まで来る。冷えた夜の空気で頭も冴えてきて、私はやっと口を開いた。


「み、みなみちゃん……?」

「何」

「えっと、助けてくれてありがとう……」


 私がそう言うと、南ちゃんはやっと立ち止まって私の腕を離し、深い溜息を吐く。そしてガードレールに寄りかかって、腕を組んだ。


「友達は選びなよ……」

「え?」

「学祭の準備も全部やらされてたじゃん。挙句、つばさが狙われてるからって嫉妬して、酒で潰そうとしたんでしょ?体質もわかってるはずなのに」

「そうなの?」

「そもそも、飲み会なんて参加しなくていいよ。今日だって、私とご飯行く約束だったじゃん。何でこんなクソつまんない奴らに潰されなきゃいけないの」


 イライラしたようにカバンから電子タバコを取り出し、南ちゃんは吸い始める。

 ……そうだよね、南ちゃんからしたら私が約束を破って飲み会に参加してるわけだし、嫌だよね。しかも、何だかんだ助けてもらってるわけだし……。


「ごめんね……」

「この借りは返してもらうよ」

「なにで?」

「体で?」


 南ちゃんはクスッと笑って私を見る。ドキッとした。さっきのキスシーンを思い出す。


「南ちゃん、いつもあんなに軽々しく人にキスしてるの?」

「え……お説教?助けてあげたのに」

「違うの!心配してるの!」


 私がそう言うと、面倒くさそうに南ちゃんは首を傾げた。


「してないよ。あの女がムカつくから、何かしてやりたかっただけ」

「そんなことでキスしちゃうの?!」

「殴ったら警察沙汰じゃん」

「そうだけど……」

「恋もしたことないつばさには刺激が強かったかな?」


 南ちゃんは、私を意地悪なニヤニヤ笑いを浮かべて見つめる。ムッとした。だって、それが私のコンプレックスだって知ってて、わざとやってるから。


 初恋もまだの私を、南ちゃんはこうやって何かにつけてからかってくる。自分は美人で経験豊富だからって、面白おかしく。


「別に、平気だし!ただ、そんなに誰彼構わずしてたら、良くないんじゃないかって」

「失礼な。人は選んでるけど」

「でも、私にはしないじゃん」


 言った後で、しまったと思った。何を言ってるんだろう。友達にするわけがないのに。でも、今日会った見ず知らずの女の子は良くて、私とはできないの?とちょっと思ってしまった。私って、やっぱり誰から見ても魅力ない?って。


 案の定、南ちゃんはびっくりしたように目を丸くして、私を見てる。段々私は恥ずかしくなってきて、顔が赤くなるのを感じた。


「待って、今のなし、ごめんね、変なこと言っちゃった」

「…………」

「えっと、あの、そう、お腹空いたよね?ご飯も食べてないし、コンビニでなんか買って……」


 南ちゃんはすごくゆっくりした動作で電子タバコをしまう。そして、改めて私の顔を見た。猫のような大きな瞳が、街灯の光を受けてキラッと輝く。


「お腹、空いてない」

「え?そう?」

「早く帰ろう」

「うん?分かったよ」


 そう言って、南ちゃんが私の手を握る。いつも戯れに繋ぐことはあるけれど、今日は何だかドキドキする。指を絡めるような繋ぎ方で、しっかりと。

 道中、私たちは一言も喋らなかった。半歩先を歩く南ちゃんは、一度も私を振り返らない。何を考えているのか分からなくて、声を出せなかった。


「あの、南ちゃん?」


 南ちゃんは、家の扉の前に着いても手を離してくれない。しかも、何も喋らない。ポケットから鍵を取り出し、そのまま自分の部屋の扉を開ける。


 ガチャン、と開いた扉の中に、私は連れ込まれた。


「え?お邪魔します……?」


 狭い造りの玄関に一歩踏み入れた途端、南ちゃんは固く繋いでいた手を離し、そのまま私越しに玄関の鍵をかけた。そしてそのまま、扉に手をついたまま動かない。私は扉に押し付けられるような形になり、身動きが取れなくなった。部屋の電気は付きっぱなしだけれど、廊下の電気は付いていない。逆光になって、南ちゃんの表情はよく分からなかった。

 距離が、近い。南ちゃんからは冷たい匂いがする。さっき吸っていた電子タバコの匂いかな。メンソールみたい。


「南ちゃん……?」

「さっきの、どういう意味?」

「え?」

「私にはキスしないじゃんって」


 途端に、心臓が跳ねる。もうそれは忘れて欲しい!恥ずかしさで顔が赤くなるのを感じる。


「かわいい。照れてるの?」

「またからかった!」

「からかってないよ?本当に、かわいい」


 至近距離でそんな風に囁かれて、私はパニックになる。南ちゃんは私の髪の毛を、耳にかける。少し触れられただけなのに、耳の先が熱くなる。

 私はもう恥ずかしさの限界で、俯いた。それを許さない、というように南ちゃんに顎をすくわれる。

 目が合った。南ちゃんとはもう鼻先が触れ合いそうなくらいの距離だ。伏し目がちになって、長いまつ毛が大きな目を覆っていて、すごく綺麗。


「キス、してほしいの?」

「き?!」

「だって、そういうことでしょ?あの女にはできたのに、私にはしてこないって。妬いた?」

「ち、ちがう!」

「ん?」


 クスッと笑う唇が、いやに扇情的に見えて訳がわからない。こんな南ちゃん、知らない!


「あの、あれは、その、そういうことじゃなくて……」

「じゃ、どんな意味?」


 囁く南ちゃんの声の温度が、いつもより高い。とても優しくて、とても熱い気がする。何も考えられなくなりそう。


「あの、人を選んでするって、言ってたのに、いつも隣にいる私にはしないから、私って全く魅力ないのかなって……」

「やっぱり妬いてるじゃん」

「違くて。私って、この先ずっと誰にも選ばれないのかなって……」

「ん?」

「だって、人を選ぶって……私は選ばれなかったってことでしょ?だから、その、えっと……私はもう今後ずっと、選ばれない側なのかと……」

「…………」

「でも、すぐに我に返ったよ?!だって、友達でしょ?私たち!そんなんじゃないもんね、変なこと言ってごめんね……」


 私がそこまで言うと、南ちゃんは私から少し離れた。


「…………つまり、誰にでもキスしそうな女にも選ばれない、非モテの自分を嘆いてた、と」

「言い方悪意あるよね?!南ちゃんのことそんな風に思ってないよ!後半は合ってるけど……」


 南ちゃんは私が話している最中に深い溜息を吐いて、怠そうに靴を脱ぐ。

 廊下に備え付けてある小さなキッチンで手を洗い、部屋に消えていった。


「まあとりあえず上がりなよ……ピザでも頼む?」

「うん……」


 私も同じように部屋に上がる。中央のローテーブルの前に座った。

 南ちゃんは部屋着に着替え、着替え終わるとベッドに腰掛けた。スマホを取り出して、スクロールし始める。


「適当に頼んでいい?苦手なのあるっけ?辛くなければいいよね?」

「あ、うん。照り焼きチキンのやつがいい」

「相変わらずお子ちゃまだな。味覚が」

「美味しいもん」


 ちょっとホッとした。いつもの南ちゃんだ。さっきは盛大にからかわれただけなんだ。


「……つばさってさあ。自分がモテないし恋愛経験無くて、それが嫌だって思ってるのに、全然何とかしようとしてないよね」


 まるで今日はいい天気ですねとでも言うように、グサリと刺すようなことを言われる。油断していた私に、その言葉は深く突き刺さった。


「うっ……」

「待ってるだけじゃ、何も起こらないよ?」

「そう、なんだけどさ……何かでもいろいろ考えちゃって」

「何を」

「だって、田舎から出てきた私がこんなイケイケな大学生たちと対等に恋愛できる気がしなくて、ほぼ女子校みたいなものだったから男の子なんて喋ったこともないし」

「イケイケ」

「今日の飲み会だって、よく分からなかったよ!あれ、何?!みんな何してたの?!お疲れ様!って飲み会するんじゃないの?何であんな感じなの?!もう、分からないよ、私……」

「……ふうん。じゃあ、練習すればいいんじゃない?」

「練習?」


 私はベッドの南ちゃんを見つめた。


「そう。要するに、気後れしてるんでしょ?自分には恋愛経験もないしって」

「そう、かも?」

「一回しちゃえば、こんなもんかってなるよ。ハードル上げてるだけだよ」

「でも、その一回が難しいんだよ?ずっと生きてきて、そんなこと一度もなかったもん」


 鶏が先か、卵が先か、みたいな話だ。

 私がそう言うと、南ちゃんは起き上がって私の隣へ座った。


「私がいるじゃん」

「南ちゃんが?」

「そう。練習台になってあげるよ」

「え?練習台?」

「今恋人いないし。もちろん、恋人ができたら練習には付き合えないけど」

「ええ?!女の子同士だよ?!私たち!!」


 突飛な提案に、思わず叫び声を上げた。私は口を押さえた。南ちゃんは面白そうに私を眺める。


「私は別に、どっちでもいけるし。それに、つばさも男相手じゃ緊張しない?」

「それは……そう」


 私の住んでいた地域は男女が一緒に仲良くするなんて恥ずかしいという認識が強く、小学校高学年からもうなんだかお互いよそよそしかった。高校生になっても、文系のクラスはほぼ男子がいなかったため、女子校のようだった。

 だから大学に入って都会に来ても男の人と喋るだけでものすごく緊張してしまう。2年生になっても、友達に男の子は1人もいない。

 絡んでないから、そもそも好きにもなりにくい。


「練習なんだから、リラックスできるくらいでちょうどいいんだよ」

「そ……そうなの?」

「うん」

「じゃあ、やってみようかな……?でも、何をするの……?」

「はい。じゃあ今つばさの隣にいるのは、ちょっといいなと思っている子です。その子の家に友達と遊びに来たけれど、他の子たちは買い出しに行ってしまいました」

「えーーー?!緊張しちゃう!何話せばいいの?!」


 設定なのに、想像するだけでドキドキしてしまった。好きな子と2人きり?!一体何をどうすればいいの?!


「あ、つばさ、顔になんか付いてるよ」

「え?どこ?」

「取ってあげる。目瞑って」

「はーい」

「動かないでね」


 言われたままに目を瞑る。そのまま頬に手を当てられ、親指で瞼をなぞられた。冷たい指先が気持ち良い。そのままその指が唇をなぞる。そして、唇に何か柔らかいものを押し付けられる。

 私は驚いて体を硬直させた。体中に力が入り、目もギュッとつむる。

 そのまま何度も感触を確かめるようにそれを押し付けられ、最後にちゅっと音を立てて軽く唇を吸ってから、離れた。


 固く瞑った目を開くと、フッと解けるように笑う南ちゃんが目に入った。そのまま軽く頭を撫でられる。胸がドキドキして、仕方ない。口がスースーする。さっき南ちゃんが吸ってた、タバコの味だ。南ちゃんの匂いが唇にうつったみたいで、クラクラする。

 ボーッとした頭のまま南ちゃんを見つめていると、南ちゃんは私にキスしたその唇で喋り始めた。


「緊張しすぎ。もっと体の力抜いて。その方がお互い気持ちいいよ」

「え……え?!キスした?!?!」

「練習だし。当然でしょ?」

「初めてだったのに!!」

「忘れればノーカンだよ」

「わ、忘れられないよ!!こんなの!!」


 私がそう叫ぶと、満足そうに南ちゃんは微笑んだ。


「てか、ちょろすぎるよ。いいなと思ってるだけで付き合ってないのに、キスなんてさせちゃだめだよ。つばさ、別に遊びたいわけじゃないんでしょ?そういうところ、しっかりしないと」

「ええー?!ゴミ取るって言ったのに!」

「ゴミ取るのに、唇指で触らないよ。気をつけて」


 そうなんだ?!知らないことばかりだ。


「……南ちゃんって、すごい。いろんなこと知ってるんだね」

「まあ、つばさよりは」

「教えてくれてありがとう」


 私は南ちゃんににっこり笑ってペコリと頭を下げた。南ちゃんは、途端に気まずそうに体を動かす。


「……ファーストキスなのに、ごめん」

「え?あ、うん、いいよ。南ちゃんなら」

「え?」

「だって、想像してみたけど、男の子だとちょっと怖いし、初めては女の子で練習した方が確かに良いかもって」


 それに、と私は付け加える。


「忘れればノーカンなんでしょ?いつか、大好きな人とキスしたら、それがファーストキスだもんね!南ちゃんとのキスなんて、忘れちゃうよ!」


 私がそう言うと、南ちゃんはポカンとした顔をした後、みるみる不機嫌な顔になっていった。

 どうしてだろう。


「ふーん。まあ、その調子じゃまだまだ彼氏なんて出来なさそうだけどね」

「だから、それまでは南ちゃんが教えてね」


 ダメかな、なんて南ちゃんの顔を覗き込むと、不貞腐れたように頬杖をついて私の顔を見た。


「……いいよ。私はスパルタだから、覚悟してね」

「お手柔らかにお願いします」


 私は再度頭を下げた。


 南ちゃんは私のお隣さんで、友達で、そして先生になった。南ちゃんのような素敵な先生に恥じないように、私も素敵な彼氏をつくらなければ。

 かくして、私は自分のコンプレックスにさよならを告げる第一歩を、今日踏み出したのだった。

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