第5話 決意
『そんなんで試練、乗り越えられんの〜?』
突然、耳元で声が響いた。
振り返ると、そこには人の形をした光のようなものが立っていた。
「……ここ、どこですか?」
思わず問い返すと、男は肩をすくめて答える。
『君の夢の中さ。笑 まだ君と直接会うことはできないから、こうして夢にお邪魔したってわけ』
「夢の中……? え、なんでですか? てか、試練ってなんですか?」
『それはいずれわかる! ――あ、そうそう。君ね、勇者に選ばれたからw』
「勇者!? ……どういうことですか?」
『そうそう勇者! で、君の肉体と魂を一度完全に消滅させて、新しく作り直したw』
「……は?」
男は軽い調子のまま、さらっと恐ろしいことを口にする。
『普通の人間なら、新しい肉体と魂を適合させることは不可能で、その時点で消滅する。
でも君は――余裕で成功しちゃったんだよね、これが』
箕輪は、言葉を失って呆然と立ち尽くすしかなかった。
『まあ本題に入るとだな。試練ってのは、君に与えられた力を引き出すための儀式みたいなもんだ』
「……儀式?」
『そう。試練は何回かあるけど、その内容は君に力を与えたやつが決める。
で、その“そいつ”が結構厄介でさ』
「どんなやつなんですか?」
『それは試練までのお楽しみw』
男はわざとらしく口角を上げる。
『ま、今日は挨拶だけだからこの辺で失礼するわ。――試練、がんばってねw』
そして立ち去ろうとした男が、ふと思い出したように振り返った。
『あっ、俺の名前はリプシー。じゃ、また会おう』
――瞬きした次の瞬間、目の前の景色が変わっていた。
気づけば箕輪は自分のベッドの上にいた。
昨日の出来事がただの夢なのか、本当のことなのか――判断がつかない。
だが、視界の端に浮かぶ見慣れない数字が、それが夢ではないことを告げていた。
(……試してみるしかないか)
箕輪は布団から勢いよく飛び起き、決意を固める。
久しぶりに、討伐クエストを受けに行くぞ――