一時間目
「それじゃあ一時間目を始めるよ。」
望月が大量の紙を抱え、教室に入って来る。
「起立、気を付け、礼。」
鋼が号令をかけて、全員で挨拶する。
「はーい、こんにちはぁ。」
持っていた魔法陣の書かれたプリントを配り始めた。
「はい、皆さん行き渡りましたか?」
余ったプリントを魔法を使って束ねながら、教室中を見渡す。全員の机の上にプリントがあるのを確認して、話し始める。
「この紙は、魔法適性を調べるものです。」
数人が早速使おうとするのをちょっと待ったと制止して、続ける。
「しかぁし、それじゃあ終わらないのがこの僕、望月満という人間です。」
鬱陶しいと思われてもおかしくない口調で話した後、指を鳴らし、人差し指を速水の方に向ける。
「速水君、ちょっと手伝ってくれるかい?」
急に指名され、左右を見た後、自身の顔を指差し、自分ですか?と言いたげに首をかしげる。
そうだと言う様に首を縦に振り、手招きする。ぎこちなく椅子から立ち上がり、教壇に上がる。
「ほい、ここに手当てて。」
先ほどの紙を出し、魔法陣の書いてある場所を指で叩く。
得体の知れない物を触る様にしておそるおそる触る。
すると、魔法陣が青く輝き始める。
「えっ、光った」
目を丸くして、光る紙を見る。
「それだけじゃないぞ。」
疑問に答える訳ではなく、望月がニヤリと笑う。
一度光が収まったと思ったら、魔法陣の中央から水が噴水のように吹き出し始める。
「綺麗」
その光景を見て、速水は思わず言葉が漏れる。
教室から、おおっと歓声が上がる。
その様子を見て、望月は全体に向けて合図する。
「と、まあこんな感じでなるわけなんですが、まずざっくり判定について説明しておこうかな。」
チョークを箱から出し、黒板に書き始める。
「まず、光の量が、魔力量を表してて、光が強い方が魔力が多い。」
光り輝く棒人間を2体書き、一方は光を目立たせる。
「次に、光の色が魔力の適性を表してるんだけど、赤く光るのが攻撃系の魔法が得意なコレクト。」
赤いチョークを手に取り、丸を描き、中に文字を書き込む。。
「次に、青く光るリジェクト。こっちは回復系が得意で、あんまりいないんだよね。」
同じように丸を描き、文字を書く。
「それともう一つ、は良いか。」
もう一つ、白いチョークを取り、図を書こうとして、後ろを振り向く。しかし、もう目をキラキラさせながら実験する生徒たちを見て、苦笑いする。
「おーい、やり過ぎるなよ。」
しかし、彼の認識は甘かった。
「せ、先生、助けてください。」
望月が後ろを見ると、先程目をキラキラさせながら実験していた速水が溢れ出る水に流されていた。
「速水君?!大丈夫?!」
ずぶ濡れになりながら、速水の手を掴み、魔法陣が描かれた紙を破く。
「先生、こっちも助けてくださいぃ。」
今度は鋼の紙から鎖がアホみたいに出て来る。
「こっちも!?」
三十分後
「師匠、大丈夫ですか?」
零はボロボロになった満に手を差し伸べる。
「あ、ありがと。」
そう言って立ち上がるが、今度は地面に開いた穴に落ちる。
「師匠!?」
穴の中から更にボロくなった腕が親指を立てながら出て来る。
「よし、また改良しないとな。」
ローブの裾の汚れを払い、またブツブツと言いながら改良案を考え始める。
「あの、師匠、なんか僕の紙変なんですけど、これって何なんですか?」
なぜか白く光っている自分の紙を望月に手渡す。
「ああ、これは、…え?」
零の顔と紙を繰り返し見続け、十秒程経って、信じられない物を見る様な目をする。
「マジかよ。まさかニュートラルだとは思わなかった。」
手を顔に当て、あははと乾いた笑いが出る。
「マジかよ、マジか。マジかよお。」
聞き慣れない単語に首を傾げる零の為に解説をする。
「まあ大体の人は知ってるから飛ばしたけど、実は、回復系も攻撃系も何でもござれな不思議な人もいるんだよ。それをニュートラルって言うんだよ。まあほぼいないけど。」
へぇと言いながら、零は望月の話を無視して他の人と同じように教室の片付けを始める。
「って、僕の話も聞いてよ。」
その後、師匠はガッツリ校長に怒られたようです。