第66話 アネモネの責任
§アネモネ視点§
珍しくシエルが訪ねて来たので、一緒に話を楽しみながら世界の動向を眺めていた。
「あっ、あれはアリスさんの従者かしら?」
「そのようね。何をしてるかしら?」
偶然アリスさんの従者を見かけたので、そのまま彼女の行動を神界から見届けることにしたの。
従者はなんと学園の生徒に手を出したのだ。正確には手ではなく『怒気』を当てたわけだけど、なぜそんなことをしたのか理由は定かではない。しかし、決して褒められた行動とは思えない。特に『神よお守りください』と言っていたことに、シエルは不快感を覚えたようだ。
「あれは少しやり過ぎではないかしら? それに彼らは私たちに救いを求めているもの。アネモネからアリスに注意を促してもらいたいんだけど、いいかしら?」
「それはできないかな? アリスさんには自由気ままに過ごしてもらいたいの。だから私の方から頼みごとをしないわよ」
「従者が神に助けを求めた者へ暴力的な行動をとったとしても?」
「アリスさんを信仰する従者が、あの者たちへやり過ぎと思えるような行動をとるということは、アリスさんに対して何かをしたから怒ってるのでは?」
「だとしてもよ! あのまま放置すれば神への信仰を失うんじゃない? それは女神として見過ごせないわ」
私が静観すると伝えると、シエルは見過ごせないと言って2人の意見は対立する。このままではシエルが直接動きそうなので、静観すると言った真相を伝えて、絶対に動かないように説得を試みる。
「アリスさんに関与をすると、ジャミアを取り逃すことになるわよ? 女神との繋がりが濃すぎると必ず気配を感じ取られるはず。そうなるとジャミアを倒す機会を失うことになるけど、それでも構わないの?」
「まさか、あの生徒の信仰を失わさせて、ジャミアに接触させる気なの? 信仰者を囮にするなんてことが許されると思ってるの?」
「唯一神ジャミアによって生み出された私たちは、ジャミアの持つ力を7つに分散されたことで、個々の能力は神としては非常に弱い。あの時も、サツキさんの力を借りても倒すことができなかったんだよ?」
「やはりアリスにジャミアを倒して欲しいと頼むべきじゃ?」
「それだとジャミアが半身を倒すために、サツキさんを強制転移させたのと同じじゃない。私は、いえ私たちは女神としての役目を終えるべきだと思ってるの」
「女神としての役目?」
「そう、私たちジャミアに造られたは仮初の女神だった。このまま何もせずに静観し、人々からの信仰を失って、アリスさんにジャミアを倒してもらったら、世界の絶対神になってもらいたいの」
「なおさら頼めば良いじゃない」
「無理強いするのではなく、自分の意志で神になると思ってもらわないと意味がないわ。だから静観して欲しいの」
「ねぇ、アネモネは1人で全てを背負うつもりだったの?」
「うん、それがサツキさんの命を絶った私の責任だと思ったから……」
「判ったわ。他の女神には伝えないで、2人だけの秘密にしてあげる」
「シエル……、ありがとう」
私の想いを受け止めたシエルは、女神の神としての役目を終えることを承諾してくれた。あとはアリスさんがジャミアを倒すべき存在と認識して、拒絶を使って消滅させるその時までは、仮初の女神であり続けることにしたの。
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