第53話 心を入れ替える
§ゼシカの視点§
ミネバに促され、アリス様は馬車に乗り込もうとされた。私はそのタイミングでマリアンヌに声をかけることにした。
この女はアプローチの仕方こそ間違っていたが、アリス様に教えを請おうとしたのは見所がある。しっかりと教育さえすれば立派な信者になるだろう。
「マリアンヌ、アリス様のありがたい言葉に感謝するのね。そして、言葉の意味を理解すれば、あなたが取るべき行動が判るわよね?」
「私のとるべき行動……」
今は混乱して答えにたどり着けていない。でも、自力で気付かなければ意味がないので、あとは本人に任せることにした。
「これ以上のことは言わないわ。意味が判らなければ、あなたはその程度の者だということよ。帰宅してから自分としっかりと向き合って、正しい答えを導き出すことね」
私は伝えるべきことを伝えて、アリス様の待つ馬車へと急いで帰宅の途についたの。
しかし、貴族の柵というものは本当に面倒だと思う。もっと自分の心に正直に生きることはできないのかしら? あんな生き方をしていると、息苦しくて仕方がないわ。アリス様のように自由気ままに生きる先にこそ、明るい未来が待っているのに……
さぁ、マリアンヌはどんな答えを出すのかしら? 私の期待に応えてくれるのなら、アリス様に教えを請う機会を与えてあげるわよ。
§マリアンヌの視点§
私は魔力操作に自信があった。
だけど、授業でウィンディ先生が披露した魔力操作は、信じられない程に卓越したもので、自分の未熟さを嫌と言うほど身に沁みた。それでも同世代の中ではトップクラスだと自負していたのに、アリスの魔力操作によって、私の自信は簡単に打ち砕かれたのだった。
授業が終わって家路につくアリスを呼び止める。空いてる時間に魔力操作を教えて欲しいと声をかけたけど、彼女の秘書から『暇はない』『家に来るなら』などと言われて言葉に詰まると、アリスは『対等な立場で付き合えないのなら、教えることはできない』と伝えられた。
そして、何も言えないままアリスを見送ることしかできなかった……。
すると、アリスの従者ゼシカから声をかけられたの。
「マリアンヌ、アリス様のありがたい言葉に感謝するのね。そして、言葉の意味を理解すれば、あなたが取るべき行動が判るわよね?」
私は考えを改めないといけないのかな? アリスの言うことは確かに正しいと思う。貴族なんて柵に囚われていると、いつまで経っても成長することなんてできない。自分より優秀な人に教えを請うのに、上から目線だった自分の行動を恥じて、心を入れ替えることを決意した。
「明日、アリス様が登校されたら謝罪をしよう。そのあとは改めて魔力操作を教えて欲しいと願い出るの」
自分のするべきことが明確になると『スッキリ』とした気分になったのだった。
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