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5 断罪

読んでくださって有難うございます

 カイトは後ろ髪を引かれる思いで海辺の町を後にした。犯人を見つけ罪を償わせる。大体俺に不満があるなら騎士らしく決闘で勝負しろと言ってやりたかった。キャロラインを傷つけて逃げられると思うなよと思った。


事件が片付いたらキャロラインに結婚を申し込むつもりだ。新婚用の小綺麗なアパートを探そう。彼女が喜ぶことなら何でもしたいカイトだ。





✠✠✠✠✠


 アランはカイトに助けられた時の破落戸の事件について聞きたいからと伯爵家に連絡を入れシルベーヌを呼び出すことにした。



騎士団に呼び出されたシルベーヌは緊張していた。担当してくれたのは超絶美形の騎士だった。後ろにも二名美丈夫の騎士が立っていた。



「シルベーヌ嬢だね、君が襲われかけた破落戸について話が聞きたいんだ。何人いたか覚えているかな?」

「すみません、怖かったので覚えておりません」

「怖い事を思い出させて申し訳ないが少しでも手掛かりが欲しいんだ」


アランはしれっと嘘をついたが、綺麗な顔に見とれていたシルベーヌは気が付かなかった。捕まえた時カイト以外にも騎士は居たのだ。見逃すはずもないし白状のさせ方は色々あるのだから。


「でも騎士様が駆けつけてくださって助けていただいたので、何ともありませんでした」

「あの辺りは治安が悪くなってきたのでね、助かって良かった。運が良かったよ。(カイトとキャロラインちゃんは災難だったけど)捕まえた者の他にもいるはずなんで情報が欲しくてね。他に覚えていることは無い?お使いに出たんだよね」

「はい、刺繍糸を買って店を出たら絡まれました」

「そうか、他にも何人か被害者の方がおられるはずなのだが、名乗り出られないのでね。又お話を聞かせていただいても良いかな?」


すっかりアランにぼうっとなったシルベーヌは、罠に気づくこともなく

「はい、私で良ければ」

と答えていた。



アランは畳み掛けるように送っていくことにした。

「シルベーヌ嬢は伯爵家のメイドだったね。貴族なら婚約者がいるよね?」

「婚約者はいませんわ」

「告白しようと近づいて来る男もいるのだろうね」

「この前街で声を掛けられましたがそれだけですわ」

「丁度昼だ。ランチをご一緒にどうかな」

「でも早く帰らないといけませんので」

「騎士団での話が長くなったとお伝えするので大丈夫だよ」

「それなら、お願いします」


街を歩いている時に女性からの視線が痛かった。騎士様と歩いている私が羨ましいのねとシルベーヌは優越感に浸っていた。カイト以上の良い男だ。顔の良さも特上だ。こんな人を超絶美形というのだと納得した。


大衆食堂の隅の席に案内された。

「好きな物を頼むと良いよ」

「ではオムレツとサラダをお願いします」

「それだけではいけない、スープも頼まなくては。俺はステーキにしよう」



大衆食堂とは思えないクオリティの高さだった。

「今日は時間を取らせて済まなかった。この後は仕事だね。又会いたい。今度は夕食をご馳走しよう」

「丁度二日後が休日です」


自分に気があると思ったシルベーヌは胸を高鳴らせた。

「じゃあ明日の夕方飲みに行かない?遅くなっても平気だよね。ちゃんと送っていくから」




 持っている中で一番綺麗な服を着てお洒落をしたシルベーヌは、裏口で騎士様を待った。行く先は食事も出来るレストランバーだった。


騎士服ではないシャツとパンツの騎士様も素敵だった。

「昨日のも可愛かったけどその服も似合っているよ」

「騎士様もとても素敵です」

「私はギルと言うんだ。では行こうかレディ」


アランの色気に当てられたシルベーヌはぽうっとしたままついて行った。


二人の後ろにはこの前の騎士二人が離れて後をつけていた。



食後バーでお酒を飲むとシルベーヌはしなだれかかって来るようになった。


酔わせて口説く振りをし、酒に特殊な睡眠薬を入れた。意識のなくなった女をマントで隠し、場所を変え騎士団の取調室に場所を移した。薬は夢の中に入り込み自白を引き出すという恐ろしい代物だった。


「誰にカイトの隣で寝るように言われた?」

「ジョンと言う男よ」

「前にも会ったことはあるの?」

「何度かあるわ。同じ騎士団だから宜しくと言われたの。私の事をうっとりとした目で見ていたわ」

「それで、カイトとやったの」

「いいえ、この身体に見向きもしないなんて、馬鹿じゃないのかしら」

「どうして友達を傷つけるようなことを言った?」

「助けて貰って格好良かったから、私のものにしたくて。嘘でも本当になるかもしれないし、傷つけて別れれば良いと思ったの」

「最低な女だな」

「ギルがいるからカイトはもういらないわ」


アランはため息をついた。


「ギルなんていないんだよ、こんな女に翻弄された可愛い後輩とその恋人が可哀想だろう。地下牢にぶち込んでおけ、大した罪にはならないが勤め先は首だろうな。ジョンを締め上げてやる」




証拠の音声を記録した魔石を持ってアランは取調室を出た。


 ジョンは男爵家の次男だった。平民のカイトと切磋琢磨して剣の腕を競い合っていた。それが段々差がついてきた。カイトが腕を上げてきたのだ。

剣も強くなり顔も良いカイトはパン屋の看板娘まで恋人にしてしまった。

悔しかった。丁度そこにカイトに横恋慕しているという娘が現れた。こっそり後を付けたら綺麗な娘だった。



何度か会って話をするようになったが、異常にカイトに執着していた。それでこういう事を思いついたのだと白状した。


騎士団は首になった。地下牢に入り反省をさせ、辺境の地で鍛えなおして貰うように団長が話をつけた。一兵卒としてやり直すしかなくなった。男爵家も縁を切った。

心を入れ替えなければ破滅しか待っていない。




 予想通りシルベーヌは伯爵家を首になった。紹介状が無いので次の職にも就けない。田舎で噂は伝わり、男爵家の遠い親戚で外国の老人の後妻に嫁がされた。王都で良い男を見てしまったシルベーヌに我慢ができるのか疑問だった。

しかも逃げるのも難しい離島だそうだ。


田舎でスキャンダルは大恥だ。

もう帰って来なくていいという親からの意思表示だと思って間違いがない。


田舎でシルベーヌを知っている者は、当然の結果だと思ったのだった。

人の良いキャロラインを爵位を鼻にかけ、上から目線で接しているのを、ずっと見ていたのだから。





次で最終回です。面白かったと思っていただけたら下の星をポチッとしてやってくださると嬉しいです。

次作の励みになります。よろしくお願いします。

ギルはアランが仕事で使う偽名です。

諜報活動で本名を知られたくない時に使う偽名の一つですが、文章が拙く上手く書けていなかったと反省しています。ご指摘ありがとうございます。


誤字報告ありがとうございました。

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