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人殺しのわたしは、今日もわたしを演じきる       旧タイトル〖放課後、10分だけ。わたしは貴女に恋をします〗  作者: 上里あおい
第3章 両極の天才役者編

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第67話 柊彩香と次の舞台

 《双翼》の千秋楽から、もうすぐ一か月。


 あの舞台でそれなりに名を知られた私に、お仕事が来るようになりました!!

 ……主演ではなくて、端役やサブ的なのが多いけど。

 でも間違いなく、私はプロの役者の仲間入りが出来ていて!


 ただ、問題はほんと~に山積みで!!

 とりあえず、今直面している悩みとしては……。


「か、課題が終わらないよー…………」


 長浜高校の演劇同好会の部室で、大量の課題を前にしていることかな……!


「まぁ、仕方ないですよ!」

「か、かなみちゃん!」

「一応ここ、進学校ですから。…………比較的授業に出てるあたしにもここまで課題が出されるのは、正直納得がいかないけど」

「かなみちゃん…………」


 私たちが通うこの長浜高校は、地域でもそれなりの進学校。

 そんな高校に芸能活動に対する理解は少なくて、平日に仕事が入るようならこの有様!

 まぁ、これでも少ない方だとは言っていたけども……。

 

 私の前で課題に唸っているかなみちゃんも、演出家として色んな仕事が舞い込んでいるそうで。

 高校生の演出家って、かなりレアじゃないのかな?

 そんなこんなで、私と同じく授業に出られない日もあるみたい。


「うう…………!ただでさえ、勉強は好きじゃないのに……!」

「由芽ちゃんが言ってたお話が、今になって…………」


〖この高校は芸能科があるような高校じゃないから、日頃からの勉強はとても大事だよ!〗


 こういう事態を見越してか、公演前から由芽ちゃんはそう言ってくれてたのに!

 でも、ここ最近は忙しかったし疲れてたんだもの!

 ……なんて、泣き言言っても駄目だよね。


 でも、それはそれとして!!


「由芽ちゃんに会いたい…………」

「今日って確か、CMの撮影じゃありませんでした?」

「だったよね?はぁ、由芽ちゃんは凄いなぁ……」


 ≪高崎凛と笹森ひなのに並ぶ、日本演劇界の至宝≫


 それが、あの《双翼》の舞台で由芽ちゃんが受けた評価。

 まず間違いなく、あの舞台で一番の評価を受けたのは、私たちの恋人だった。


 その演技力やカリスマを持って、今や由芽ちゃんは引っ張りだこ!

 私なんて目じゃないほどに、忙しい日々を送っていて。

 私の憧れた〚如月由芽〛が、ようやく日の目を浴びてくれたことはとても嬉しいこと!


 ただそのせいで、由芽ちゃんに会える時間は少し減ってしまって。

 私としてはとても悲しい部分でもあって……。


「……複雑だよぉ」

「何が複雑なの?」

「え?それは…………、え?」


 あまりに自然に紛れ込んだ、私の愛している人の声。

 その声に驚いてその声の主を二度見すれば、夕日に照らされた彼女がそこにいた。


 綺麗な笑顔は誰よりも可愛くて、発する声は温かい。

 変装用のサングラスをおでこに上げた、ボーイッシュ系の私服の天使様。


「やっほ!んふふっ、課題お疲れ様2人ともっ!」


 そんな私とかなみちゃんの恋人が、いつの間にか立っていた。


「……あぇ?彩香もかなみも、どうして固まって──」

「由芽~!!」

「由芽ちゃん~!!」

「きゃあ!?きゅ、急にどうしたの2人とも!?え!?ちょっと泣いてる!?」



────



「勿論、わたしも寂しいよ?でも、お仕事はお仕事だから」


 そう言いながら、由芽ちゃんは私とかなみちゃんの間でイチゴミルクを飲み始める。

 美味しそうに飲むなぁ、由芽ちゃん。

 いやもうほんと、びっくりするくらい可愛いね?


「もうじき、祥子さん主催の舞台稽古も始まるし!そうなれば、また3人で一緒にお仕事できるよ!」

「え?あたしもなの?」

「んっふっふ~!これは祥子さんから聞いただけだから、他の皆には内緒で!祥子さん、かなみの事かなり買ってるっぽいよ!」

「そ、そうなんだ……」


 あっ、かなみちゃん嬉しそう!

 でも、あの祥子さんに認められるくらいなんだ!

 うんうん!私の恋人たちは本当に凄いなぁ!


「その舞台に心置きなく立つためにも、芸能活動を続けていくためにも!2人はまず、その課題の山を消化しなくちゃだね!」

「止めろ!?せっかく現実逃避してたのに!!」

「うう……!由芽ちゃんが意地悪するぅ…………!」

「というか由芽は!?由芽の方こそ、課題は多いはずでしょ!?」

「うん、だからさっき提出してきたよ!」


 噓でしょ!?

 にっこりピースな由芽ちゃんは食べたいくらい可愛いけど、そんなのどうやって!?


「も、もう?」

「コツとしては、常日頃から予習しておくこと。応用とかはまだ難しいけど、高校3年生くらいの範囲までなら予習してるよ!」

「ハ、ハイスペックが過ぎない?」

「私、年下の由芽ちゃんに学力抜かされてる…………」


 時々思うけど、由芽ちゃんのその異常なまでのハイスペックはどこから??

 料理出来て、勉強出来て、スポーツ出来て、役者としては世界でも上澄み。

 漫画とか創作だと、聞けば聞くほどラスボスみたく思えるんだけど……。


 だけどそんな由芽ちゃんは、私とかなみちゃんの手を握ってきて。

 いつも通りの、太陽みたいな笑顔を見せてくれる。


「知識があれば、それだけ彩香とかなみを幸せにする為の幅が広がるし!何より役者の道を選んだ以上、学校の勉強で躓いてたら集中できないからね!」

「……由芽はさぁ、ほんとにさぁ」

「え?」

「…………由芽ちゃんは、ほんとにずるいよ」

「ど、どうして!?」


 きっと由芽ちゃんは、役者じゃなくても大成する器を持っていて。

 それでもお芝居がなければ生きていけないような、天性の役者なんだね。


 そしてお芝居と同じか少し上の場所に、私とかなみちゃん、そしてせなさんの存在があるようで。

 由芽ちゃんは以前、とても嬉しそうに私達から愛されてるって自慢をしていたけど。


「由芽ちゃんってば、私たちの事好きすぎるよ……」

「え?そんなの当り前……」

「あーもう、ほんと好き。いやほんとに愛おしすぎて、ちょっとムカついてきた」

「なんでぇ!?」


 恋人になってから、由芽ちゃんはずっと私たちに好きを伝えてくれている。

 きっと無意識だろうけど、3人で付き合う事を望んだ負い目もあるのかな?

 勿論、私もかなみちゃんも納得してこの関係を選んだわけだけど。


 無理をしていないか心配にはなるけど、無理をしているならそれを私たちに言ってくれるはずだよね。

 隠し事はしないのが、私たちのルールだもん。

 だから、心配はいらないんだよね。


「よし、課題がんばろ!ね、かなみちゃん!」

「いや、めっちゃ急……。でもまぁ、そうですね!さっさと終わらせましょうか!」

「そーそー!かなみもだけど彩香は特に忙しくなると思うし、それまでには片付けておかないと!」

「うん!…………うん?特に?」


 ぶっちゃけ、私のこれから先の予定は今は次の祥子さんの舞台と、何本かの映画やドラマのサブのみ。

 かなみちゃんの方が忙しい気も…………。


「特に!だって次の祥子さんの舞台、座長は彩香とひなのだから!」

「………………えっ」

「そっか~!私とひなのちゃん…………、が?」

「そう!あ、でも安心して!今回の舞台も女性だけだから、彩香が苦手な男の人はいないし!」

「安心…………、安心……?え!?」



「わ、私が座長なの!?!?」





「ん~♪やっぱり、モンブランは最高ですね♪」

「……さっきお昼を食べたばかりよね?」

「いいえ、2時間前です♪」


 それはさっきでしょう、とは言えず。

 ひなのの無邪気な笑顔を見ながら、私はフルーツジュースを一口。

 ……美味しいわね。今度、由芽も連れてこようかしら。


 ちらっと時計を見れば、時刻は3時を少し過ぎたころ。

 偶然にも休みが合った私とひなのは、原宿のカフェで一息をついていた。


「凛ちゃんも如何ですか!?」

「え、えっと、ごめんなさい。私、ひなのも知ってる通り少食だから」

「そうですか……」

「こうやって、貴女が食べている姿を見るだけで十分よ」

「それじゃあ、気になっていたティラミスも頼みますね!」

「ええ……?」


 ひなのの細い体に、どうしたらここまで食べ物が入るのかしら……。

 本人曰く、食べても食べても太らないそうだし。

 ほんと、憎いくらいに羨ましい体質ね……!


「凛ちゃんは、最近どうですか?《双翼》の舞台以降、人当たりがよくなったって皆さん言ってますよ?」

「そうね……。それでも、以前より仕事量が少し増えたくらいかしら」


 世間的にも業界的にも大成功を収めてくれた、舞台《双翼》。


 その影響は演者にも当然あって、私も仕事が増えたうちの一人。

 お母さんはその分忙しいみたいだけど、でも前みたいなすれ違いは起きていない。

 これもほとんど、あのおばかのお陰だけれど。


「あの舞台で一番大きな成功を掴んだのは、やっぱり由芽よ。柊さんも、前に映画の重要なサブを貰ったって言ってたかしら」

「……はい。ゆーちゃんも彩香さんも、正しく評価がされるようになりましたね」

「由芽に関しては、私やひなのに並ぶって評価だしね」


 実力に対して正しく評価が下されて、今や由芽は引っ張りだこだそう。

 百年に1人だの、千年に1人だの、あの子が聞けば謙遜してしまうような評価もあるけれど。


 それでも、心の底から嬉しい。

 私の憧れが正しく評価を受けて、世間では私やひなののライバルのような見方をしてくれている人もいる。

 そんなの、嬉しくないわけがないもの!


「今度のお母さんの舞台では、由芽もひなのも柊さんもいる。ふふっ、本当に楽しみね」

「うわー……。凛ちゃんってば、また悪い顔してますよ?」

「そ、そうなの!?」


 これ、絶対に由芽の悪影響を受けてるわね……。

 もう、本当に。どれだけ私を変えれば気が済むのかしら、あのばか由芽。


 っと、メール……。

 …………へぇ、随分と面白い事をするわね、お母さん。


「凛ちゃん?どうしましたか?」

「話をすれば、ってやつね。今度の舞台の配役、送られてきたわよ」

「本当ですか!?見せてください!!」

「ええ、どうぞ」


 私からスマホを借りて、ひなのはまじまじとそのキャスティング表を見始める。

 そうすれば、次第に笑顔から難しい顔へ。

 まぁ、確かにそうよね。お母さんの考えは、きっと私と由芽なら分かるだろうけど。


「これって……、そう言う事ですよね?」

「ええ。役名は一つでも、キャスティング欄には二人」


 幾人か見知った名前もあるから、その点では少し安心ね。

 

「………………主演を演じるのは、私と彩香さん」


 そう呟くひなのの目に、闘志の炎が湧いたのを私は見逃さない。

 私と由芽よりそういう負けず嫌いの感情は薄いと思っていたけれど、ひなのも役者だものね。


 ダブルキャストなんて、燃えないはずがないもの。



「とても楽しみですね、凛ちゃん」



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