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80.寝室にて 2


 倒れた時、倒れた時、と思い出してみる。


 確か、レオンハルト様が目を覚まして、私の顔を見て、髪の毛がって……。


 それ以降の記憶がない。


「……髪の毛がって……」

「そう、リューが私を治療してくれて、治って起き上がった時にヴェールの間から髪の毛が見えたんだ、真っ黒の」


 その位置から見えるということは前髪から耳の横辺りの髪の毛か。そこが真っ黒?いつもは後ろ側、それも中の方が黒くなるから、普通はあまりというか殆ど見えることはない。髪を持ち上げないと見えないだろう

 それが見えるということは?私の髪はどれだけ?恐る恐る質問してみた。


「……私の髪、どれだけ……」

 黒くなっていたのだろう?レオンハルト様は一房髪を持ち上げて、苦笑する。


「………全部」

「………全部?」

 そう、と頷いている。


 全部、か。流石にそこまでは今までに経験がない。そして今これくらいのまだらな状態。白髪の方が多い。


 あれ、ということは?レオンハルト様の方を見るとこちらをジッと見ている。とても優しい瞳だ。


「…………私……何日…」

「ん?何て?」


「私、何日……寝ていたんですか?」


 一瞬驚いた顔をしたレオンハルト様だったが、すぐに笑顔に戻った。


「どのくらいだと思う?」

 反対に聞かれてしまった。こう聞き返されるということはいつもの回復より長いということだろう。うーん、と考える。


「………一週間、ぐらい……?」

 

 長く言ったつもりだった。一房分の黒髪を戻すのが大体数分なのだから、三日くらいかと思った。


 レオンハルト様は私の頭を撫でる。とても優しい感じがする。そして呟いた。


「………一ヶ月」

「…………え?」


 今、何て言いました?一ヶ月?え?


「……一ヶ月……?」

「そう、あれから一ヶ月と三日経ってる」


 …………言葉が出ない。私、そんなに寝てたの?え?


 驚いている私に気づいたのか、レオンハルト様は優しく微笑んでもう一度私を抱きしめてくる。抱きしめたまま声を出してきた。


「息はしてるけど、問いかけても全然動かないし、髪は全部黒いし、どうしようかと思ったよ。ノアとブラウも経験がないっていうし」


 そりゃあそうだろう。流石に髪が全部黒くなるのは今までに一度もないし、眠り続けたこともない。


「一応他の聖女や医療師にも診てもらったけど、魔力不足としかわからないって言うから」

 外傷がないのならそれしかない。

「ガイ大司教にも診てもらったけと、他の理由がないと。魔力がある程度戻るまでは寝たままだろうと言われたよ。ただ」

 ただ?何だろう?

「どれくらいで戻るかはわからない、と。一週間、一ヶ月、もしかしたら年単位かもしれないと。リューから魔力が一切感じられない、全部使いきったのだろう、と」 

 レオンハルト様の声がつらそうだ。


「眠りで回復させているのだとは思う、と。そういえばリューの回復が早かったのは意識のある状態で私やノア達に触れていたからだった。意識がなければ無理なんじゃないかって思って」


 確かに。いつもはモフモフに顔を埋めて、癒やされていた。その行為ができないのだから、回復のスピードも普通であって。


「一応一週間位で一房色が戻ってきたから、回復しているのは間違いないと思った。ならそれを少しでも助けられるかもと思って、ここに連れてきたんだ」


 ここ?ここってレオンハルト様の寝室?


「……どうしてですか?」

 眠ってるだけならどこでも一緒ではないのだろうか。


 私の質問に、あー、とかちょっと戸惑っているレオンハルト様。それを見ていたノアとブラウが微笑んでいる。ノアが手を挙げて、よろしいですか?と言うとレオンハルト様がどうぞと促す。


「では代わりに。回復のために眠っておられるなら、少しでも助けになれば、と夜の間はレオンハルト様が獣化なさって、リューディア様に寄り添っていたんです。他の方に見られても、と思いましたので、相談の結果この部屋でということになりました」


 え?獣化して?え?


「夜、私が寝る時に黒獅子になって、ノアとブラウに手伝ってもらってリューを寄りかからせてもらって」


 え?寄りかからせて?え?


「そうすると髪の色の戻りが少しだけだけど早くなったから、それなら、と毎晩」

「……毎晩?」


 うん、と首を振るレオンハルト様。


 あの温かいと感じていたのはそれでか。確かに効果はあったかもしれない。


「昼間は流石に仕事があったからできなくて。ノアとブラウにも暇ができたら、とお願いして」

 二人も頷く。彼女達も獣化して寄り添ってくれていたらしい。


「大分白髪に戻ってきたから、もし昼間私がいない時に目を覚ましたらすぐ呼んでってお願いしてあったんだ。執務中だろうが会議中だろうがかまわないからって」


 それでさっきブラウが走っていったのか。あれ、じゃあ……


「……今って、もしかして、会議中……ですか……?」

 

 


 


本日もありがとうございます。

ただいま最終話にとりかかっております。

明日、明後日の82話で完結予定です。

明日もお待ちしております。

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