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79.寝室にて


 ――――あぁとても暖かい。


 頬に柔らかい感触がある。癒やされる。このままここにずっといたい。身体全体に何かが流れ込む。


 それでも身体は動かない。動かそうという意識はあるのだが、手も足も瞼さえも動かない。暗闇を彷徨っているような感じだ。


 でも暖かいのだ。暗闇なんだけれども、怖くない。安心している。ここにいればいい、ここにいてもいいんだと自然に思っている自分がいる。

 

 あれ?私何をしているのだろう?ここはどこだ?こんなにゆったりしていてもいいんだっけ?

 

 ええっと、謁見の間でハリーナの人達と会って、あの王子が何かしてきて、捕まって。で、よくわからないけど、何とか侯爵子息にも襲われそうになって……あ!レオンハルト様!


 そうだ!あの時レオンハルト様が私の前に現れて、刺されて、倒れて。そして治療して。


 で、どうなったんだっけ?


 思い出せない。あれ?


 とりあえず起きないと。瞼が重い。重いけど何とか動かす。ゆっくりと瞳を開けてみた。



「…………………ここ……どこ……?」



 目の中に飛び込んできた天井は見たことがないものだった。


 とても綺麗な天蓋付きのベッドに寝かされている。スーラジス王国に来た際に与えられた部屋も立派な天蓋付きベッドだったが、それとはまた違う色合いだ。

 

 瞼は開いたが身体全体は重く、強張っていて動かせる気がしない。手を動かそうとしてもきちんと動かない。思った通りに動いてくれない。どうしてだろう。なので起き上がることもできない。

 本当にここはどこだ?と思い、視線を彷徨わせる。顔自体も動かしにくい。


 バタバタッと足音が聞こえた。


「………リューディア様?!」

「お目覚めになられましたか?」


 聞き慣れた二人の声だ。ノアとブラウがいるということはこの部屋は心配ない、ということだ。二人は心配そうな顔で私を覗き込んできた。


「私、しらせてきます!」

「頼んだわ。今なら会議室だと思うから」

 わかったわ、とブラウが部屋から出ていった。残っているノアに質問する。


「………ごめんなさい、ノア、尋ねてもいいかしら?」

「はい、もちろんです、何でしょうか?」

 お許しをもらったので遠慮なく。


「ここ、どこ?」

 少し強張っていたノアはその簡単な質問に安堵したのか、ホッと一息ついてから笑って答えてくれた。


「ここはレオンハルト殿下のお部屋です」


 今なんて言った?


「………え?」

 訳が分からない顔をしていたであろう私に、もう一度微笑み


「レオンハルト殿下の寝室です。リューディア様のお部屋の隣です」


 やっぱりそうらしい。えっと一から説明してもらおうかな、と思っていると部屋の入口扉がガチャガチャと乱暴に開けられた。


「リュー!」


 叫び声と共に部屋に入ってきたのはレオンハルト様だ。


 どこから来たのかはわからないがここまで走ってきたのは想像できる。息が荒い。 


 そういえば入室時にノック音が一つも聞こえなかった。あ、でもここはレオンハルト様の自室だからなくてもいいのか、とか色々考えていたら、目の前にレオンハルト様がやって来た。

 

 寝たままの私をギュッと抱きしめて、しばらく動かない。


「………」

 身体がうまく動かないので、されるがままなのだが、とりあえずゆっくりと手を動かして、レオンハルト様の背中にまわす。あぁ温かい。


「……リュー……リュー」


 私をギュッと抱きしめたまま呟いている。それだけでどれだけ私が彼に心配をかけていたのかがわかる。


「……ごめんなさい」


 私がそう呟くとレオンハルト様はゆっくりと身体を離した。


「謝るのはこっちだ。リューに負担をかけてしまった。いくらでも回避できたのに。すまなかった」

「いえ……」


 まだ声が出にくい。そのことに気づいたレオンハルト様は私をゆっくりと横たわせる。レオンハルト様はベッド横に腰掛けたままだ。


「無理に声ださなくてもいいから。痛むところはない?」

 ない、と頷く。

「水、飲む?」

 はい、と頷く。


 ノアが水差しとコップを持ってくる。ベッド横に置くとあとは私が、と言いながらレオンハルト様はコップに水を入れる。あぁ起き上がらないと、と思っているとレオンハルト様が自分の口にコップの水を運んでいる。


 え?あれ?と思っているとあれよあれよと言う間にレオンハルト様の顔が近づいてきて、口唇が重なる。驚くよりも先に冷たい水が喉を通っていった。 


 ――――――え?今の?


「ごめんね、起き上がらせるのもあれだと思って」


 いやいやいや、起き上がりますよ?あれ?今のって?ボッと顔が赤くなるのがわかる。


 ごめんね、と微笑みながらレオンハルト様がそっと私の髪を持ち上げる。毛先が黒いところもあれば、まだ全てが黒いところもある。まだらな感じだ。

 そういえば、髪の色って?意識を失う前にレオンハルト様に何かを言われたような気がする。


「……髪の色…」

 私がそう呟くと、レオンハルトがちょっと困ったように微笑む。何かあったのかしら?


「リューは自分が倒れた時のことおぼえている?」

「倒れた時のこと?」

 

 えっと、と頭をフル回転させてみた。



本日もありがとうございます。

明日も更新予定です、お待ちしております。

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