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7.国境にて


馬車の動きが止まり、ブラウが窓を少し開けて確認する。


「どうやら着いたみたいですね。軍服を着た方々が見えますし、スーラジス王国の軍服の方も並んでいるのがわかります」

「並んでいるの?」

「並んでますね。それに真ん中にいらっしゃるのは先程おっしゃっていた第三王子ではないでしょうか?」

「……え?」


 ちょっと待って、どちらかというとこちらが下ですよね?向こうの王族をお待たせするなんて!


「……私達、そんなに遅れたかしら…?」

「そんなことはないかと思いますが。とりあえず降りましょうか」

「そうね」

ブラウとノアが先に降りた。何事もなさそうなので立ち上がり扉に向かうと差し出された手が見えた。ブラウやノアではない、男性の手だ。


 こんな場所で私に対してエスコート?いやいや、そんな身分ではないし、される方もいないはず。何より私は捕虜扱いのはず。


「お手をどうぞ、聖女様」


 綺麗な、低い、落ち着いた声が聞こえた。やはり私に対するエスコートらしい。ノアとブラウが止めないということは大丈夫、ということで。ならばと、左手を男性の手の上に置く。


「ありがとうございます」


 返事をしながら段をおりると、その手の人物が誰かがわかった。


漆黒の髪色に金色の瞳。他の方々より飾りの多い軍服。その佇まい。どう見てもここにいらっしゃる中で一番上。ということは……。


「不自由はありませんでしたか?あぁ申し遅れました、私はこの場の責任者を任されていますレオンハルトと申します。どうぞお見知りおきを」


 リューディアの左手を軽く持ち上げ口づけて挨拶をする。あまりされたことのない対応に少し慌てるが、心を落ち着かせる。


「ハリーナより参りましたリューディアと申します。こちらこそよろしくお願いいたしますレオンハルト王子殿下」


 スーラジス王国における軍部の要と言われる第三王子、黒髪金瞳。間違いない。


「もしよろしければレオ、と」


 手を取られたまま、整った顔立ちで誰もが虜になりそうな微笑みでそう言われると動きが止まる。


 いや、待って待って、今なんて?レオ?王子殿下を敬称無しでしかも略称呼び?会ったその場で?いやいやそんなことできるわけがない!こっちは『聖女』とはいえ、平民でさらに捕虜のはず。こうやって近くでお会いできることすら大変なことなのに。


「………え?あの……」

 戸惑っているとレオンハルト王子殿下の後ろからコホンと咳払いが聞こえた。低い声が響く。


「……レオンハルト殿下」

「……っ、あ、すまない!」


 ハッと気を取り直したレオンハルト王子殿下が慌てて私の手を下ろす。すると後ろに立っていた男性が声を出す。


「初めまして聖女リューディア様。私はサナハト・ラナウと申します。スーラジス王国第三王子殿下レオンハルト様の補佐をさせていただいております。どうぞお見知りおきを」

「リューディアです。こちらこそよろしくお願いいたします。この二人はノアとブラウ。お世話になります」


 頭を下げ挨拶をする。ノアとブラウの方を見ると二人共普段よりピリピリしているというか警戒しているというか。


「……ノア……大丈夫よ、ね?」

「大丈夫だと思う……それにこの方……もしかして……」


 二人の会話に何事かと、尋ねようとするとレオンハルト王子殿下に遮られた。とてもにこやかな表情で。


「大丈夫ですよ。後ろのお二方も何も心配なさらないでください」


 一瞬ノアとブラウの毛が逆立ったようなような感じがしたが、それ以上何もなさそうだ。二人も普通の状態に戻っている。


「ではこちらへ」


 サナハト補佐官に促され少し移動すると人集りが見えた。


「聖女様!」


 その中の一人が声を上げる。よくよく見るとハリーナ王国の軍服だ。あぁ捕虜の三十人の方々か。騎士服が数人、殆どが兵士か。前まで着くと皆に頭を下げられた。


「顔を上げてください。お怪我とかはありませんか?」

 リューディアが声をかけると皆顔を上げる。

「我々大丈夫です。聖女様こそ」

 多分この中で一番位が高そうな男性が声を出す。えっと確かこの方は、と思い出す。数回だけ出た夜会で会ったような気がする。どこかの侯爵家の令息、とか考えていると向こうから言ってくれた。


「マティス・ダナンと申します。この度は」


 あぁそうだ、ダナン侯爵家の嫡男だ。そんな方が捕まっていたのか。それはハリーナ王国としてもすぐ動くはずだ。確かダナン侯爵はかなりの人物のはず。自分の子供が捕らえられて、平民の女一人と交換なら早くしろと国王に進言もしてるだろう。他の騎士の家も同調するだろうしね。


「本当にお気になさらずに。私が役に立つなんて光栄なことですし。それよりも皆様はあともう少し頑張って、ご家族の元に無事にお戻りくださいね」

「………っ」

 全員に敬礼された。中々壮観である。笑顔で対応していると

「……リューディア殿、こちらへ」

 レオンハルト殿下の声が響く。あぁそうだ私の行くべき所はあちらだった。でも先程の声とはガラリと変わって凄い低い感じだ。何かあったのかしら?

「はい、今参ります。あ、最後にもう少しだけ時間よろしいですか?」


 私の問いかけにレオンハルト殿下は答えない。だめなのかしら、そうよね、捕虜だもの、そんな自由はないわよね、と考えて足を動かそうとするとサナハト補佐官の声が聞こえた。


「大丈夫ですよ。五分程でよろしいですか?」

「あ、はい充分です。ありがとうございます」


 とりあえず許可はもらえたということにしてリューディアは三十人にもう一度向き合う形をとった。



 


 

本日もありがとうございます!


ポイント押してくださった方々、ありがとうございます!


まだまだお待ちしております!よろしくお願いいたします!

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