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69.謁見の間にて 3


「どうしたの?『聖女』ならできることなのでしょう?」

 王妃様の声が響く。


 試してくれているのか。本当に魔力があるのかもしれないし、私がスーラジスに来てから見つかったのかもしれない。

 

 まぁ見つかったのなら、その娘が仕事をすればいいだけで私が帰る必要はないはずなのだが。


「もちろんですとも!さぁ前に出ろ!」

 何も喋らず、動きもない『聖女』を乱暴に肩を押し、前に出るように促したのはナーヤス第二王子だ。『聖女』は一、二歩足を動かして前に出ようとしているが歩みは遅い。


 前に出たと思ったら膝をついてしゃがんでしまった。

「………り」

「おい!ちゃんとしないか!」

 ナーヤス王子の怒鳴り声にビクッと身体を震わせたが、次の瞬間、自分でヴェールを剥ぎ取った女性が大声で叫んだ。


「無理よ!無理に決まってるじゃない!」


 思いっきりこの場に響いた。


「こ、こら、そんなことを言うでない。いつも通り魔法を使って、な?」

 大神官がなだめるように声をかける。

「知らないわよ!何よ、いつも通りって!私がそんなに光魔法使えないこと知ってるくせに!」

「こら!静かにしないか!お前は『聖女』なのだから」

 ナーヤス王子も怒り始める。


「そんなことを言われても、できないことはできないわよ!何よ『聖女』って。ただヴェール被って座っていればいい、って言ったのはそっちじゃない!魔法使えなんて聞いてないから!王妃様をみるってなに?そんなことできるわけないじゃない!」

「静かにしないか!」


 いや、静かにするのはあなたでしょう、と思いながら見ている。


「どういうことかな?」


 国王陛下の低い、抑揚のない声がこの場に響いた。誰もが静かになる。静かになるどころか、ナーヤス王子と大神官にいたっては顔色もなくなっている。さてどうするのか。


 ナーヤス王子が何か言いかけたところを遮って声を張り上げたのは『聖女』だった。


「わ、私は悪くないわよ!この人達に言われてついてきただけだから!この服を着て、頭からヴェール被って、ただ座っていればいいから、って。喋らなくてもいい、って言われただけよ!」

「こら!静かにしないか!申し訳ない、彼女は確かに『聖女』で今は緊張しているだけで」

「だから『聖女』でも何でもないって言ってるじゃない!私はただの人よ」

 ナーヤス王子の言葉を遮るなんてこの女性中々凄いな、と思っていたら国王陛下が少し笑って語りかけた。


「そこの娘」

「………はい」

 流石に国王陛下にはそれなりに対応はするみたいだ。

「お前は誰だ?ハリーナ王国の『聖女』ではないのか?」

「違います!私はリナ・ワダスと申します。ハリーナ王国のワダス子爵の娘です」

 違うと言い切った女性にナーヤス王子と大神官は後ろで慌てている。

「国王陛下!これはその」

「お前には聞いていない。静かにしておれ」


 ナーヤス王子の言葉を一蹴する。もう格が違う。違いすぎる。


「ではそこの娘、リナといったな。何故ここにいる?」


 リナと呼ばれた女性はナーヤス王子が静かになったことで少し落ち着いたのか、どちらが上かを判断したのか、一度きちんと姿勢を整えて頭を下げた。どうやら子爵令嬢というのは本当みたいだ。所作はそれなりにできている。


「申し上げます。私がここにいるのはこちらのナーヤス王子殿下に命じられたからです」

「ほう、何と命じられた?」

「一緒にスーラジス王国に行き、この服を着て、座っていればいいと。何か言われても大神官が代わりに話すからと。そしてリューディア様と呼ばれる方がハリーナに戻ればお前も戻れるからと。それまではただいればいいから、あとはこちらが対応すると言われておりました。魔法のことに関しては一切言われておりません」


 もうナーヤス王子と大神官は動けない。さらに国王陛下は問いかける。


「なるほど。君はそれについておかしいとは思わなかったのか?」

「………思いました。でも……」

「でも?」

 リナと呼ばれた女性は一瞬躊躇ったように見えたが、グッと何かを思い直したように言葉を発した。


「ナーヤス王子殿下に言われたのです、我が家の借金を無くしてやる、と。恥ずかしながら父が事業に失敗しましてその返済に困っておりました。そこにナーヤス王子殿下がいらして、借金を無くす代わりに一緒にスーラジス王国にこいと。そこで『聖女』のふりをしろと。そんなことは無理だと言いましたが、いるだけでいいからと何回も言われました。でも私に光魔法など使えませんし、何をしていいのかもわかりません。王妃様をみる、などとても」

 下を向いたまま顔を上げない。


「で、こうやって素直に話したというわけか。なら家の借金はどうなる?話してばれたら家が困るとかは思わなかったのか?」

 国王陛下の質問はもっともだ。借金の肩代わりが条件でこちらに来たはずだ。こうなった以上その条件は無効なわけで。


「………あちらを出る時に父に言われておりました。無理なことは無理だと言ってもいいと。それでだめなら爵位を返還すればいいだけだ、とも。私は大丈夫と言ってきましたが………できませんでした。帰ったら家族には謝ります。私がきちんと働いて借金は返します」


 さて、ここまで言われたらどうでるかな?




本日もありがとうございます。


色々と進んでいきます。

最後まで突っ走りますのでよろしくお願いいたします。


明日も更新予定です、お待ちしております。

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