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63.応接間にて 4


「他の領地は今までと何ら変わらないとは思います。ただ」

「ただ?」

「影響の出た領地が現『聖女』『聖者』の家、すなわち王家に頼んで聖女を輩出した貴族ということで、ハリーナ王国内でも発言力のある、高位貴族の領地となります。自分の領地がそのような災害などにあった場合、まず間違いなく王家に物申すことでしょう。そして王家も無下には出来ない。となるとその理不尽な怒りの矛先は大神官と多分ですが第二王子のナーヤス殿下に向かっているかと」


「……なるほど。そしてその頭で考えついた策がこの手紙か」


 国王陛下の言葉に私は静かに頷いた。


「その領地への影響はずっとなのかい?期間がある、とかは?」

 王太子殿下も疑問を問いかけてきた。


「多分ずっとです。誰かか祈りを捧げて『聖玉』への魔力供給量が元に戻るまでは。まぁでもあくまで多分なのですが。何せ話には聞いておりましたが、本当にこうなったのはハリーナ王国史上初めてのことですので」


 私が少し笑いながら言ったことの意味がわかったのか、国王陛下も楽しそうに笑う。


「今までの聖女はきちんと仕事をしていた、ということか。一つ尋ねるが、『聖女』となった者の出身地に影響が出ると言っていたが、なら君の、リューディア嬢の出身地には?サリアス伯爵だったか?その領地には影響ないのか?」

「ありません。それに関しましては私をこちらに呼んで頂いた際の条件のおかげでサリアス伯領地は影響をうけません。ありがとうございました」

「どういうこと?」

 隣のレオンハルト様が不思議そうに尋ねてくる。私はニコリと笑いながら答える。


「こちらに来る際にあちらでの身分や肩書きを全て放棄してくること、とあったじゃないですか」

 私の言葉に皆頷く。

「それで私はサリアス伯爵との養子縁組も解除しましたし、第二王子との婚約も破棄という形になりました。そしてハリーナ王国の『聖女』の契約も解除してきました」

「『聖女』って辞めることできるの?なら今の『聖女』達も辞めたら領地への影響はなくなるのかな?」

 王太子殿下の質問に、そうですね、と軽く答える。


「そんな方法があるのなら何で君を連れ戻そうとする?」

 国王陛下の疑問はもっともだ。私は深呼吸を一つする。


「知らない、からだと思います」

「知らない?何を?」 

「解除ができる、ということをです。元々今現在の七人の方々は『聖女』に認定されるということを軽く考えておられる方々ですので、解除する、という考えにいたらないのかもしれませんが」

「それは簡単にできるものなのか?」

「簡単といえば簡単です。私一人でできることですし、他の誰かの許可がいるとかでもないですので。ただその解除の方法を知らないだけなのです」

「知らないって、誰も?なら何で君は知っている?」

 私は国王陛下の顔を見てはっきりと答える。


「その方法は口頭でしか伝えられていないからです。私は『聖女』になる際に前大神官様より伝えられています。使うことはないと思うが伝えておくのが決まりだと。その際にこのやり方は文章には残っていない、口頭で伝承されているだけだからそのつもりで、とも言われました。確かにそのことについて書かれている文献はありませんでした。契約に関する儀式や、文言などは大神官様が持っておられた専用の文献がありましたので、今の大神官でもその通りにすれば『聖女』の認定はできたのだと思います。ただ先程言った通り、前大神官様と現大神官の口頭による引継ぎはなかったため、解除の方法については引継がれてはないですし、彼によって認定された七人についてはそのことは聞いていないはずです」


 私は一気に説明する。しばらく沈黙が流れたあと声を出したのは国王陛下だ。


「……なるほど。向こうも馬鹿ではないだろうから、影響の出た地域の共通点に気づくだろうな。そうなると『聖女』だったリューディアの出身地であるサリアス伯爵領地には何故影響がないのか、と思いあたるはずだな。なら『聖女』を辞めればと考えるが辞め方は?ということになるのか。もちろん今現在ハリーナでは誰もわからない。ならわかる者に聞けばいい、それか連れ戻せばいい、かになるのか」

「多分。『聖女』を一人連れてくるということは私との交換、が一番強いかと」

「……わかった。話を聞いて良かったよ。方向性が決まった。あぁ安心してリューディア、君はレオンハルトの婚約者で大事な人だ。絶対に返さないから。私が返すと言っても隣が絶対に返さないし、手を離すことはないから」


 国王陛下のその言葉にもちろんと言わんばかりにレオンハルト様が繋ぐ手をギュッと握り直してきた。


「ありがとうございます」

 頭を下げようとすると国王陛下がそれを止めた。

「この話を今までにしたことは?」

「ノアとブラウには。他に話したことはないです。これからもするつもりはないです」

 後ろの二人が頭を下げる。


「わかった。あと一つだけ、聞かせてくれるかな」






本日もありがとうございます。


明日も更新予定です、お待ちしております。

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