58.自室〜執務の間(ハリーナ王国)にて
応援、って……いやいやいやそんな……。
「でも」
「でも?」
「やっと話されたんですね。もっと早くに言われると思ってました。レオンハルト殿下も言いたくて仕方なかったと思いますよ」
「へ?」
だって、ねぇ?とノアとブラウが顔を見合わせている。
「前にも言いましたが『獣人』の好きっていう思いはかなりのものなんですよ。それこそ離れたくない、常に一緒にいたいと思うものなんです。同性に対してもそうですが、異性だともっとです」
「はぁ」
ノアの勢いが凄すぎて、言葉が出ない。
「私達もリューディア様に恋しているのと同じ感覚でおそばにいさせて欲しいとお願いしたくらいですから、レオンハルト殿下はもっとだと思います」
え?どういうこと?確かに二人も助けて、元気になった途端にそばにいさせて欲しいと懇願されたけど。あれって行く所がなかったからじゃないの?仕事が欲しかったからじゃなかったの?
考えていたことがわかったのか、ブラウがクスッと微笑み、
「もちろん行く所がなかったということもありますが、リューディア様のそばにいたかったから、ですわ。他の人には付きたくありませんもの」
「………そうなの?」
「「そうです」」
綺麗に揃った。
「……じゃあ反対に聞くけど、二人はレオンハルト様の相手が私でいいと思う?」
「「だめなんですか?」」
……反対に聞かれた。
「……だって、彼はスーラジス王国の王子でしょう?私なんか他国から来たただの平民じゃない!どう考えても釣り合うとは思えないんだけど」
そうなのだ、さっき奥庭で「わたしでよければ」なんて返事をしてしまったけれど、あれは絶対あの時の雰囲気とかレオンハルト様の甘い言葉と声に流された感がある。
今思い出しても顔が赤くなる。しかし思い出せば思い出す程、私でいいのだろうか、という疑問が浮かぶのだ。あくまで(仮)の時は軽い気持ちで(本当になるとは思わなかったから)引き受けているが、いざ王子妃の立場になると思うと、大丈夫なのだろうか、と思ってしまう。するとノアとブラウが力説する。
「リューディア様はただの平民ではございません!『聖女』ですよ。その肩書きだけで十分です!」
「いやいや『聖女』なんて光魔法が使えれば誰でも」
「誰でもなれるものではございません!あの国がおかしかっただけです!現にこちらの国の『聖女』の皆様方は素晴らしい方々ばかりではないですか」
「そうですわ。それに聞いたところによれば『聖女』は貴族と同じ扱いらしいので平民云々と気になさる必要はないかと」
「そうなの?」
「「はい」」
なるほど、貴族と同じなのか。なら、いやいやそれでも、とうーん、と唸っていると、ノアがお茶のおかわりをくれた。
「私達は同じ『獣人』だから、ではないですが、レオンハルト殿下は素晴らしい方だと思いますし、ちょっとだけ、愛が重いかもしれませんが、リューディア様のお相手として何の異論もございません」
ちょっとだけって、先程奥庭からここに戻って来るときも
「婚約者なのだから」
と、満面の笑顔で手を繋いできましたからね。廊下で周りの視線が凄かったです。
「そうですわ、それどころかもう大賛成です。あのままハリーナ王国にいて「あの」第二王子がお相手という方が耐えきれませんわ」
いやいや一応あちらも王族……。
「本当に。あのままあちらにいなくて良かったですわ。しかしハリーナ王国はどうなっているのでしょうかね?あの『黄金の聖女』様達は頑張っているのでしょうか?」
「……どうでしょうね?大丈夫でしょう、とは思いたいけれども」
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「まだ目処は立たないのか!早く『聖女』達に祈らせろ!これ以上はもたん!」
「で、ですがどの『聖女』も『聖者』も無理だと……魔力がない、回復しないと言っており」
「何故だ?何故回復しないのだ?」
「……そ、それは何とも…」
ここはハリーナ王国の王宮内、執務の間と呼ばれる場所だ。先程から声を荒げているのはこの王国の長である国王陛下だ。怒鳴られているのはあの大神官だ。
リューディアがいなくなって一ヶ月。その影響が目に見えてきた。
明らかに輝きが悪くなっている『聖玉』。大神官が命じて残っている七人の『聖女』『聖者』に祈りを捧げさせてはいるが、一度目の祈りで魔力がなくなり、二度目以降は魔力が全回復する前に祈っているせいか、殆ど『聖玉』に魔力が注がれていない。輝きが戻らない。戻らないどころか日に日に輝きは無くなっている。
そして『聖玉』への祈りだけで魔力がなくなっているものだから、今までのように貴族の屋敷に出向いての治療ももちろんできない。それをあてにしていた貴族達から『聖女』達の家族に文句が上がり、そしてその怒りの矛先は全て大神官へと向かう。
さらにリューディアが行っていた街中の教会での平民に対する治療なども誰も行えず、その苦情は王宮に上がってくる。そして大神官へと向かうのだ。
「ナーヤスの婚約者だったあの『聖女』がいたときはこんなことはなかった!一人いなくなったくらいでこの体たらくとは残りの者は何をしているんだ?お前もナーヤスも残った『聖女』の方が優秀だと言っていたではないか」
大神官は汗を拭いている。確かにスーラジス王国からの申し出で誰か一人『聖女』を出すときに彼女より残りの者の方が優秀だと言ってしまった。それはその時周りに『聖女』達の親である貴族達がいたからだ。
唯一孤児院出身であるリューディアを行かせればいい、との雰囲気になってしまっていたからだ。
「とにかく!この事態を何とかしろ!大神官もだが、ナーヤス!」
「はい!」
王族席の所にいた第二王子であるナーヤス殿下が返事をする。
「お前もあの娘をスーラジスにと言ったのだから責任はある。どうするかをすぐさま考えろ!」
「…………はい」
流石国王陛下には何も言えないのか、苦々しい顔をしながらも頷いた。
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