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57.自室にて


「で、ノアとブラウはいつから知っていたの?」


 奥庭から自室に戻ってきたリューディアはソファに座り、ノアに淹れてもらったお茶を飲みながら二人に尋ねた。


「いつから、とは?」

 ノアが不思議そうに聞き返してきた。

「レオンハルト様のこと」

 あぁと二人同時に頷く。


「そうですね、しいて言うなら最初から、ですかね」

「最初?」

「はい、最初」

 ブラウがニッコリと笑って答える。ノアも頷く。


「えっと最初って、あの国境の所?」

「あぁ確定したのはあそこですけど、リューディア様が黒猫と思われていたあの黒い子獅子を保護した時には何となくですが気づいてました」

「そうなの?」

「はい。あの時点で黒猫ではないと気づいていたのですが、黒い子獅子と気づいた時にもしかしてとは思いました」


 獅子の『獣人』はめずらしく、かなりの身分が上の者しかならない、と知っていたのと、現在のスーラジス王国の王子の方が獅子になるとは知っていたので、ハリーナ王国にいる時点で見つかってはいけない、何か隠密の最中だということに気づいたという。でも口には出せずにいたところ、三日でいなくなったのでほぼ確定だと思っていたと。


「でも三日間の子獅子の様子を見ていて必ずリューディア様の元に戻ってくるとは思っていました」

「え?何で?どういうこと?」

 ノアとブラウはお互いに見合って、ねぇ、と頷きあっている。私一人、訳が分からない顔をしている。するとブラウが説明をし始めた。


「リューディア様は気づいていなかったですけど、治療した子獅子が意識が戻った時、リューディア様の膝の上だったじゃないですか」

「……そうだったかしら?」

 申し訳ないが覚えていない。でも治療する時にはその箇所に触れているほうがよいので、多分意識のない黒猫(黒子獅子だが)を膝に乗せていたのだろう。

「そして目が覚めた時にリューディア様が声を掛けたんですけど、覚えてませんか?」

「ごめんなさい、覚えてないわ。私、何て声を掛けたの?」


 いつも通りの治療だから無意識にやっているため、はっきり言って何も覚えていない。


「いつも通りの優しい微笑みで『もう大丈夫よ、私がそばにいるからね』って額に口づけしたのは……覚えてないですよね」

「……ごめんなさい、まったく」

 両手を挙げて、降参ポーズを取る。

「多分ですが、その時にあの黒子獅子、レオンハルト殿下はリューディア様に恋に堕ちてます」

「………は?え?」

 驚いて声にならない私に二人はさらに続ける。


「元々『獣人』って警戒心も人より強いですが、助けてもらったり、見返りのない行動というか、愛情というか、そういったモノに対しては一瞬でその人を判断して、堕ちるんですよ。もちろん下心があったり、見返りを求めた行動はそういうモノだと気づくのでその人に堕ちることはないのですが」

「リューディア様の場合、あの時は本当に黒猫に対していつも通りよ何の見返りも求めない、求めるどころか反対に無償の愛を与えたので、レオンハルト殿下は一瞬で堕ちて、その心を鷲掴みにされたはずです」

「いやいやいや、そんなことわからないじゃない?」

 私の否定に二人は同じように首を振る。


「『獣人』同士だからというのもありますが、間違いなく堕ちてます。あの目覚めてからいなくなるまでの二日間、リューディア様を見つめる瞳が違ってましたから」

「だからいなくなったけれども、あの様子だと必ずリューディア様の元に戻ってくるだろうなとは思ってましたけれども、まさかこんな風に囲い込んでくるとは。本当に『獣人』の愛情って凄いですよね」

 そう言って微笑んでいる二人がいる。


「……じゃあ二人はスーラジスからの話が来た時に気づいたの?」

「いえ、あの時点は。もしかしてとは思いましたが国同士の話でしたし、そこまでは、と思っていたんですけどね」

「でも国境の所でレオンハルト殿下の姿を見た時にあ、と思ってブラウに確認したらブラウも気づいていたので間違いないな、と」

「……何で言ってくれなかったの?あの時の黒猫です、って」

「言おうかとも思ったのですが」

「ですが?」

「あの二人から言うなよオーラが凄かったので」

「二人?」

「レオンハルト殿下とサナハト補佐官です」

 あぁ彼か。

「でも、オーラだけでしょう?わからないじゃない?」

「あのあと、宿屋でリューディア様とレオンハルト殿下がお二人でお話されてたじゃないですか」

「あぁしたわね」

 確かに人払いをして二人だけで話し込んだ。


「その時廊下に出た際、サナハト補佐官に言われたのです」

「サナハト補佐官に?何て?」


「レオンハルト殿下の応援をしてくださいって」


 応援って………。


「ですのでリューディア様には申し訳なかったのですけれども、言わずにお二人の応援をしておりました」



本日もありがとうございます!


新章的な感じになりますが、最後に向かって突っ走る予定ですので、もう少しだけお付き合いくださると嬉しいです。


明日もお待ちしております!

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