表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/82

56.奥庭にて 6


 確かにこの流れだとハリーナ王国側は何の疑いもせずに私を差し出すだろう。スーラジス王国側の読みは正しかったわけだ。


「本当はリューの意思もきちんと確認してから連れてきたかったんだけど」

「私の意思、ですか?」

「そう。でもとにかくハリーナでの肩書きを取り払ってスーラジスに入国してもらうのが最優先だったから。後はリューの価値が向こうに気づかれる前にこちらでの立場をきちんとしたかったからね」

「意思はともかく、私の価値ってありますか?そんなのはないと思うのですが」

 レオンハルト様は一瞬驚いた顔をしたがすぐさま微笑んで

「本人は気づいてないのかもしれないけど、リューは最高の『聖女』だよ。多分今現時点で君を超える者はいない」


 いやいやそんなことはない、ですよね?


「間違いなくハリーナでもスーラジスでも一番なのは間違いない、回復の速さも含めて、ね。問題はハリーナがリューをそれだけの力を持っていると気づいてないところだ、あまりにも簡単に色々なことをこなしていたからだとは思うが、リューがしていた事は誰にでも出来ると思っている」


 ………その通りだ。現に私のスーラジス王国行きが決まった時にあのナーヤス第二王子と一緒に来ていた新しい『聖女』は引継ぎなどいらないと、平民の私にできているのなら伯爵令嬢の自分にできないはずはないと言っていた。


 魔力に平民や貴族は関係ないのに、と思った記憶がある。


「だからリューがいなくなるとしばらくはリューの残してきた魔力でどうにかなるだろうけども、その魔力が切れてきた頃に少しずつ気づくはずだ。他の『聖女』達では同じようにできないことを」

「………」

「そうなると向こうも考えて、君を自国に戻そうとするだろう」

「……してきますかね」

「間違いなくしてくると思うよ。だってそうじゃないと立ち行かなくなるのが目に見えてくる。でも」

「でも?」

「私はリューを手放す気はない」


 断定だ。絶対にない、という気持ちがあふれている。


 そう言い切ったレオンハルト様は一度立ち上がり、私の前に跪き、私の膝の上にあった手を軽く握って持ち上げて、軽く手の甲に口づける。

 あまりにもされたことのない行為なので慣れていない私は顔だけでなく、腕も、何もかもが赤くなっていくのか、わかる。


「…あ、あの………」

 頭の中が混乱し、言葉がでない。レオンハルト様はそんな私を包み込むような微笑みでもう一度手を握ってきた。


「あの宿屋でお願いしたのはあくまで私の婚約者という立場だが、仮に近いものだった」


 そうですね、婚約者(仮)でしたよね。レオンハルト様に言い寄ってくるご令嬢方を断るための、所謂目眩ましだったはずです。


「でもそう言わないとリューにとったら初めて会った人物からいきなり婚約をと言われても断わられると思ったし、そうなると色々と大変な事になるところだったから、とりあえず仮、ということでお願いしたんだ」


 そりゃあそうだ、何の面識もない相手にいきなり結婚を申し込まれても了承はしない。それどころか、距離を取るかもしれない。


「そして私という人物を知ってもらうところから始めようと思ったんだけど、この数週間で少しはわかってもらえただろうか?」

 レオンハルト様は私と目を合わせながら告げてきた。

「あ、はい。少しは、ですけど」

 私は正直に告げた。


「ならば、今一度お願いしたい。私レオンハルト・フォン・スーラジスはリューディアの事を愛しています。どうかこの手を取ってはいただけませんでしょうか?」


「………え、あの、その私とレオ様、レオンハルト様はすでに婚約者なのでは?」


 この手を取るも何も書類上は婚約は成立してあるはずです。今さらと言えば、今さらではないのだろうか。

 レオンハルト様は真剣な顔をしている。


「確かに私とリューは書類上は婚約者だ。でもリューの心の中では仮だからと思う気持ちがあると思う」


 ………その通りです。


「今日から、いや今この時から仮ではなく、本当の婚約者として、そして私とこの先一生を共にしてはもらえないだろうか」


 えっと、それは、その……と戸惑っていると、彼はニッコリと笑って私の手の甲に口づけをする。


「あの時、助けられた時から私の心はリューに捕らえられているんだ。どうか私の求婚(プロポーズ)を受けてもらえないだろうか?」


 何ですか、このシチュエーションは。格好良すぎでしょう?いや、そうではなく。


「……私なんかでよろしいのですか?」

 

 そうだ私なんてどこの生まれかわからないような孤児だし、見た目もこんなだし。こんな完璧に近い、それも王子様のお相手なんて務まるとは思わないのだが。


 私の言葉を聞いたレオンハルト様はギュッと手を握り直し、真剣な顔で告げてくる。


「リューが、リューディアがいい。リュー以外は考えられない。『獣人』の愛は重いかもしれないがリューに負担はかけないようにする、気をつけるから」


 そういえばノア達も言っていたなぁ『獣人』の愛は重いって。でもそれが心地よいと思ってしまう自分もいるわけで。


 深呼吸を一つする。


「私でよければ」






本日もありがとうございます。

明日も更新予定です、お待ちしております。

もうちょっと続きます〜。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ