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55.奥庭にて 5


「……じゃあ付き人二人っていうのも」

「ノアとブラウのことも調べた。絶対一緒に来てくれると思ってたから」


 あぁそうか、『獣人』の特性をわかっているのだ。あの二人は助けてもらった恩は忘れないし、その人から離れることもよしとしない。なら一緒に、ということか。


「でも」

「でも?」

「迷ったのは本当。もしリューが第二王子の事を好きだったらどうしよう、って。仲良くないように見えるけど、本当のことなどわからないし、実はってこともあるかもしれない」


 ………大丈夫です、そんなことは一つも、これっぽっちもなかったです。


「しばらく調べてもらったけど、そんな素振りはなさそうだし、何より第二王子の態度が酷いと報告が上がってきた。夜会なども違う女性と出席したり、贈り物も他の女性にしていると。それも一人ではなく何人にも」


 段々とレオンハルト様の声が怒りはじめている。確かに他の人からみたらかなりのモノですよね。一応婚約者がいるのに、ですからね。まぁその婚約者である私が何も言わないから助長したっていうのもあるんでしょうけど。しかしスーラジス王国の諜報員、すごいですね……。私は溜息を一つついた。


「……一度だけ」

「?」

「一度だけ言ってみたことはあるんですよ。私は婚約者ですよね?って。そうしたら『あくまで婚約だ。結婚したわけではないし、自分は認めてない。勝手に決められてこっちは迷惑だ』って。それを聞いたらもうどうでもよくなってしまって。それ以降何も言いませんでした。なら、と私も割り切って婚約者らしいことなどしなくなりました」

 苦笑して話すとレオンハルト様が手を繋いできた。

「私にとっては嬉しい限りだったんだ。こんな所にいていい人ではない、と。ただただその力を搾取しているだけじゃないか、と。ならこちらにもらっても良いのではないかと」

 そんなふうに思ってくれていたのか。確かにあのままだとハリーナ王国の『聖女』として一生を過ごすことになり、ずっと祈り続けていただけだろう。それ以外の選択肢はないと思っていたから。


「ハリーナ王国は白の聖女の魔力をみくびっている。白の聖女ができることは誰でもできると思っている節があると報告が上がり、ならと計画を進めさせてもらった」

「計画ですか?」

「そう。いかに自然にスーラジスに入国させるか、だね。やはり捕虜交換として、が一番しっくりくるか、ということで国境の戦いを利用させてもらった。元々ハリーナ側から仕掛けてきたし、それなりの条件なら向こうものむだろうから」


 確かにあの戦いはハリーナから仕掛けたと聞いている。でも捕虜を捕まえるのも大変なのではないだろうか。

 

「本当ならあのくらいの戦いだと私が先頭に立たなくても大丈夫だったんだけど」

 何だか今サラッと凄いことを言いませんでしたか?

「いくら敵国とは言え、怪我をさせるのも何だからと、私が出て捕まえてきた」

「………捕まえて?」

 そんな簡単に捕まるものなのだろうか?仮にもハリーナ側も騎士や兵士でそれなりの訓練はしているはずだ。


 レオンハルト様はニコリと笑う。


「『獣化』させてもらったんだ」


 なるほど。黒獅子の姿か。あれなら確かに強いだろう。


「黒獅子だとジャンプすればかなり遠くまで一気に跳べるからね。狙いたい人物の近くまで跳んで、咥えて戻ってきた」

「……は?」

 咥えて?え?訳が分からない顔をしているととても簡単そうに説明する。

「首の後ろ辺りの衣服や鎧をこう、ちょっと噛んで持ち上げるんだ。そしてまたジャンプしてスーラジス側に戻ると大体の者は戦意喪失しているからその隙にこちらの兵士が縛り上げる。それを繰り返したんだ三十人」

「………」


 えっと、凄い簡単に言ってますけど?


「ただやみくもに選んだんじゃないよ。それなりに地位のありそうな騎士とか強そうな者を選んだから。そうじゃないと可哀想だからね、弱い人選ぶと」


 いや、可哀想とかじゃなくて。まぁ確かに国境で会った捕虜の三十人は皆元気そうだった。侯爵家の令息の方とかいましたしね。ダナン侯爵家でしたっけ、挨拶はしたけど。あと騎士の方が数人と兵士の方々。

 

 いくら訓練をしていたとしても、いきなり目の前(後ろ)に自分よりも大きい黒獅子が現れたら一瞬どころか、かなりの間怯むのは間違いない。そうするとまさしく赤子のように咥えられるだけである。


 その場の混乱ぶりが手に取るようにわかる。


「まぁその勝ち方のせいで、私の周りが五月蝿くなったというのもあるんだが」

 レオンハルト様が前髪をかき上げる。そういえば最初の宿屋でハリーナ王国との戦いの勝ち方が凄かったせいで担ぎ上げられそうだと言っていた。

 確かにそんな圧勝だと皆様担ぎ上げたくなりますよね、うん。


「それで予定通り捕虜を手に入れて、ハリーナ王国にはあくまで捕虜交換ということで申し入れをしたんだ」





 


本日もありがとうございます。


まだまだ続きます、とは言えませんがもう少し続きます。


明日も更新予定です、お待ちしております。

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