表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/82

43.廊下にて


「大丈夫?疲れたでしょう?」

 

 廊下を歩きながらヴィラス様が問いかけてきた。ヴィラス様と私が並んで歩き(隣でいいのだろうか、と思いつつ)前に一人、後ろに二人の騎士が付いている。このお三方も貴族出身なんだろうな、といらないことを考えつつ、ヴィラス様の方を見る。


「レオンハルト様と王妃様が殆ど対応していただいて、私は隣で立っているだけでしたので。でも王妃様やヴィラス様は本当に凄いですね、私は立っているだけで精一杯です。色々考えながら受け答えなどできそうもないです」

 苦笑しながら答えるとヴィラス様も笑ってきた。


「こればかりはね。慣れに近いものがあるから」

「ヴィラス様はどのようにして慣れたのですか?」

「私?私はそれこそ小さい時からジークの婚約者だったからずっと訓練というか、勉強させられてたから。もうああいった場所での笑顔は固まっているわ、きっと」

 クスクスと笑っている。この笑顔は素なのだろうな、とこれまたいらないことを考えてしまった。


「でもそのドレス、凄いわね」

「これですか?私には全然わからないのですが。レオンハルト様が用意してくださって」

「とても良く似合っているわ。流石レオンハルト殿下ね。もちろんそれを着こなしてるリューディアも流石だわ」

「いえ、私は。それこそノアとブラウ、女官の方によくしていただいて」

 本当に私は座っていただけで、いつの間にか別人のようになっていたから。凄いのはあの四人だ。

「でもレオンハルト殿下も準備はしてあったのね。そうじゃなければそれだけのドレス間に合わないし……」

「そうなのですか?私、ドレスとかってどれだけ日数かかるものとかは知らなくて」


 少し驚いたようなヴィラス様だったがすぐに笑顔に戻り

「大丈夫よ、全てレオンハルト殿下に任せておけば、ね」


 何となく気になる言い方だったが、それ以上尋ねるのは止めておこうと思ったのは他の事に気を取られたからだ。一瞬だが近くで「何か」を感じてしまった。思わず足を止めると皆止まり


「リューディア、どうかした?」

「………いえ、少し」


 怪しい行為と思われたのか騎士の方々も警戒態勢に入った。気になった方の廊下を覗いてみた。


「……あ」


 少し先にドレス姿の女性が目に入る。ドレスということはこの夜会の参加者の貴族であって。でも周りに人はいない。お付きの者やパートナーはいないのか?でもどうみても様子がおかしい。遠目から見ても具合が悪そうなのだ。


 先程からの気配は彼女か。


 そちらに向かおうといつも通り動こうとしたが、ドレスが邪魔をして速く歩けないことに気づいた。すると同じように気づいてくれたヴィラス様が騎士の一人に指示を出した。


「モリア、彼女を」

「はっ」


 流石訓練されている方だ。あっという間に状況を把握して動いてくれた。女性が倒れ込む前に支えることが出来た。ヴィラス様と私も側に寄る。


「大丈夫ですか?」

 ヴィラス様が女性に声をかけると声も出せないくらいだ。とりあえずは頷いてくれたので意識はある。


 ヴィラス様が私の方を向き

「どうすればいい?どこかの部屋に入った方がいいわよね?」

 私が頷くともう一人の騎士の方に指示を出して一番近い部屋を開けるようにしてくれた。流石王太子妃、色々と判断が速い。


 女性は一人で歩けそうもなかったので騎士二人で抱えて運んでくれた。開けた部屋に入りソファに座らせる。かなり顔色が悪い。


「リューディア、お願いしてもいい?」

「もちろんです」

 ヴィラス様のお願いに答えて、座っている女性の前に膝をつくようにして座る。ドレスの事は気にしないでおこう、レオンハルト様ごめんなさい、と心の中で思いつつ、女性に話しかけてみた。


「私はリューディアといいます。光魔法を使えるので貴方の不調の原因を治せるかもしれません。少しだけ手を触ってもよろしいですか?」


 女性は少しだけ目を開けてこちらを見てきた。答えられないほど酷いのか、それともやはり見たことの女の言う事などは信用できないのか。するとヴィラス様も近くにきて女性に話しかけた。


「ジュリア様ですよね?私の事はわかりますか?」


 女性はゆっくりと顔を動かして頷いた。


「彼女は『聖女』です。私を信用して治療を受けていただきませんか?彼女の力は私が保証いたします」


 するとジュリアと呼ばれた女性はそっと手を出してきた。許可をもらったと解釈しよう。


「ありがとうございます。では少しだけ失礼しますね」

 細い指を優しく包み込むように持ち上げる。瞳を閉じて少しだけ光魔法を発動させる。怪我ではない。身体の中だ。どこだ?どこが引っかかる?神経を集中させる。


回復(ヒール)


 誰の目にもわかるくらいの光が女性の身体を包む。もうちょっとだ。もうちょっと、と女性に負担がかからないように調整しながら様子をみる。コン、と音が聞こえた感じがする。良し、うまくいった。


 ゆっくりと瞼を上げて女性の様子を見た。

 


 

本日もありがとうございます。

明日もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ