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41.夜会にて 4


 思いっきり目が合ってしまった。さて、どう出てくるかな。あれ?でもこの人……もしかしてと思って凝視するとあちらが一瞬怯んだような気がした。


 あ、しまったと思った時には遅かった。いつもの癖で視線に魔力をのせてしまった。微々たるものだが魔力を持っていない人だとかなりきついらしい。がナースタッド侯爵は一瞬怯んだものの、これはこれはと声を出してきたので、魔力的には大丈夫だったみたいだ。


「そちらのお嬢さんですかな、最近教会で『聖女』の真似事をされている方は」

「真似事ではない」

 レオンハルト様がきっちりと言い直す。

「いやいや我が国にも優秀な『聖女』がいるではないですか!ハリーナのような国からやって来た『聖女』など、我が国の『聖女』の足元にも及ばないのでは?いくら変わった見た目をしているからと言ってもそれが魔力と関係しているわけでもないでしょうに。王子殿下も誑かすような平民の娘ですよ」


 隣のレオンハルト様と王妃様からカッチーンと怒りの音が聞こえたような気がしたが、そこは流石に教育の賜物、素晴らしい笑顔で答える。


「もちろん我が国の『聖女』達も素晴らしいですわ。でもリューディアもあのハリーナにはもったいない『聖女』ですのよ。我が国に来てくれてとても良かったわ。何せ一目見ただけで不調を言い当て治してくれたのですから」


 周りからおー、とか王妃様の治療を?とかが聞こえてくる。


「私の場合はちょっとした怪我でしたけれども的確に当てられてこちらが驚いたくらいよ。ナースタッド侯爵も診てもらったら?」


 おほほ、と聞こえてきそうな王妃様の笑顔だ。その笑顔が怖いのだが。


「私は不調などありませんので。平民の者に診てもらうなど」

 王妃様に言われて少し引いたかと思ったが、まだまだらしい。どうなるかと周りも興味津々で聞いていたが、一人の男性が間に入ってきた。


「いやいや、ナースタッド侯爵、このお方は本当に素晴らしいのですぞ」


 そう言ってきたのはこれまた威厳のある初老の男性だ。確か……。


「クラウド侯爵」


 そうだ、この方も覚えようリストに入っていた方だ。この国の重鎮にあたる立場だが、どちらかと言えば中立に近いはずだ。その方がこちらの、私のことを褒めてきたのだ。皆もえ?と不思議な顔をしている。


「い、いくらクラウド侯爵といえども、他国から来た、それも平民の娘を手放しで褒めるのはいかがかものかと。それとも何でしょう、クラウド侯爵もこの娘の見かけに騙されているのでは?」


 嫌な笑顔だ。この人は先程から自分の言ったことの意味をわかっているのか?私をけなすのはまだわかるが、その事によってレオンハルト様やこのクラウド侯爵さえもけなす事になっている事に気づいているのだろうか?かりにも侯爵という高位貴族の立場ならそれくらい気づけ。いや、それとも本当にわざとなのだろうか。


 しかし自分は他の事が気になってしょうがないのだが。


 するとクラウド侯爵は全てをわかっているような、諭すような優しい声で告げだした。


「ナースタッド侯爵もご存知だとは思うが」

「何をです?」

「『聖女』と呼ばれる方はそんな貴族や平民などと言った立場など気にはしていないということを。彼女らの前では皆人は平等です。ねぇ?」

 どうやら私に同意を求めているようだ。

「はい、もちろんです」

 その返事にフッと笑ってからさらに告げる。


「彼女はまだこの国に来たばかりで右も左もわからないだろうに、どこでもすることは変わらないとすでに教会で奉仕活動をしてくれているのですよ。そして突然の急患にもその素晴らしい魔力で対応したと。何十人と治療しその後でも、他の聖女達はお手上げに近かった患者をものの見事に治してみせたとか。他の聖女達も絶賛しておりましたし、街でもその話題でもちきりですぞ。まさかナースタッド侯爵はその事をご存知ないのか?」


 確かに治療はしましたが、街で話題?もちきり?え?レオンハルト様の方を見ると彼も笑顔で頷いてきた。どうやら本当らしい。


「し、知らないわけないでは、ない、か」

「ですよね?なら何故先程のような「真似事」と言ったような表現が出るのか、教えて頂きたい。彼女は「真似事」というような言葉で済まされる魔力の持ち主ではないですぞ。反対にこの国の聖女達が教えて貰いたがっているほどですから」


 そこまで持ち上げなくても……と思ったが、自分より格上になる者に言われて、指摘されたナースタッド侯爵は悔しそうな顔をして何も言い返せずにどこかに去っていった。


 この場の緊張感が少しほぐれた。するとレオンハルト様がクラウド侯爵に近寄り声をかけた。


「ありがとうクラウド侯爵」

「いえ、本当のことを言ったまでですから」

 と微笑む。そして私の方を見てさらに微笑んできた。


「聖女リューディア殿、この度は本当にありがとうございました」

「え?」

 何故お礼を言われるかわからなくて、思わず声が出てしまった。


「先日街で助けていただいた者は私の部下でして」

「……え?あの」

 獣人の方々ですか?と尋ねる前に彼は続けてきた。





 

本日もありがとうございます。

明日も更新予定です、お待ちしております。

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