表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/82

35.執務室にて 2

リューディア視点に戻ります。


「……それは一体どういうことだ?」


 執務室のソファで私の横に座って話を聞いていたレオンハルト様は不思議そうに尋ねてきた。サナハト補佐官も同じ様な顔だ。私はニッコリと笑って答えた。


「安物、なんですよ、その宝石類」


 パッと見た目でもうすでに、宝石などに詳しくないリューディアでさえわかるくらいだ。貰った時点ですでにサリアス伯爵の懇意にしている宝石商に鑑定してもらった。


 結果は……安物。


 偽物ではなく、あくまで安物。一応宝石は宝石だが二流品かそれ以下であると。言ってはなんだが、王族が手にするような物ではないらしい。ましてや王子が贈り物として使うなどとは。


 鑑定結果としては宝石四点で4、50万くらいが精一杯らしい。


「ならば購入時の価格は?王族に対して10倍の値段をふっかけたということか?」

 レオンハルト様の疑問ももっともである。リューディアは楽しそうに笑って答える。

「いいえ、ふっかけたのではなく、お仲間かと」

「仲間?」

「はい。請求書などは店が価格を決めるのですからいくらでも書けますよね。そして国庫から婚約者への贈り物という名目でたいした検査も受けずに払われています。目視などはしていないでしょうね。その価値との差額分は宝石商と第二王子側で山分けかと」 


 レオンハルト様もサナハト補佐官も驚いている。まぁずさんとしか言いようがないですからね。


「ついでに経理の書類を確認するとその他にも私、婚約者宛と書かれた支出がいくつかありました」

「……もしや」

 レオンハルト様の呟きに私はニッコリと笑って答えた。


「どう見ても、どこを探しても私は持っていない、貰ってもいないモノでしたね。髪飾りとか宝石とか。ドレスは年に数着ありました。おかしいですよね、私が貰ったドレスは一着しかないのに。どこかのご令嬢方に渡ったのでしょうね」


 もう悲しいとか残念な気持ちを通り越して笑うしかないといったのが正直な気持ちだ。


「宝石に関しては王子や売った店としては私に渡したという実績があればいいだけで。確かにあのままハリーナ王国にいたら夜会などには殆ど出ませんし、あの宝石類を身につけることなどないでしょうから誰からもどこからも安物とバレるはずがないとふんだのでしょう。もし着けると言われたらその時だけ理由をつけて別の宝石を持ってきたでしょうね」


 ノアとブラウも何も言わずに頷いている。


「だけど思ってもみないことが起きました。私のスーラジス王国行きです。婚約者の立場が解消となるのは嬉しかったことでしょう、他のご令嬢と堂々とお付き合いできますからね。でも私が貰ったモノをスーラジスに持っていってしまったら?自分の知らない、目の届かないところで身に着けたりして、誰からか指摘を受けたら?そんな安物を身に着けて、と。そしたら私は正直にハリーナ王国の王子から貰ったものだと答えますよね。するとそんな王子のくせに安物しか贈れないのかと後ろ指をさされるのは間違いないでしょう」


 レオンハルト様もサナハト補佐官もなるほど、といった顔になる。どうやら気づいてくれたようだ。ナーヤス王子もここまで察しがよければ少しは良かったのにと思う。


「だから、国から出すな、なのか」

 私は頷く。

「そう言えば神殿の私の部屋に置いていくと思っていたのでしょう。現にドレスは置いておきましたし。そして回収してしまえばもう誰にもバレないし、差額をお店と二人、懐に納めたこともバレることはなかった。そして私がいなくなった後どうやらすぐに部屋に入ったみたいですね。でもなかったので色々探り、サリアス伯爵に預けたと思ったようです」

「そしてオークションにかかることを知ったと」

 その通りです、と私はニッコリと笑う。


「そしてオークション前に鑑定に出すとサリアス伯爵が言ったのでこれはまずいと思ったことでしょう。新聞社にも私がナーヤス王子からいただいた宝石を孤児院のためにオークションにかけると発表したと聞いた王子が自分の矜持を守るために取る行動は一つしかありません」


 私がそう楽しそうに言い切るとレオンハルト様も同じようにニッコリと笑って


「自分で買い取る、しかないな」

「その通りです」


 お茶を一口頂いてから続ける。


「経理に500万ゴールドで買ったと申請してあるのだから、とサリアス伯爵はそれ以下では売らないと宣言してありますし、どうやらこの手紙によると数日後に王子が買い取りにきた際に実は600万ゴールドで欲しいと言っている人がいると言ったそうです。ですので王子は結局650万ゴールドで買い取ってくれたみたいですね」

「お義父上は中々だな」

 レオンハルト様が楽しそうに笑っている。


「でもその650万ゴールドはどこから?また国庫からの支出になるのでは?」

 サナハト補佐官がもっともなことを尋ねてくる。リューディアはニッコリと笑って

「孤児院のオークションの物を先に買い取るだけですので、あくまでこのお金は孤児院への寄付扱いです。ハリーナ王国では孤児院や教会への王族からの寄付は国庫から支出は認められません。個人的になります。ですのであくまで今回の650万ゴールドは王子個人のお金からの支出になるはずです」 


「儲けた分より払わねばならないのか」

「そういうことです」


 私は最上級の笑顔で答えた。

 

本日もありがとうございます。

明日もお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ