31.教会にて 6
「ハリーナでですか?そうですね、街中での奉仕活動はほぼ毎日どこかで行ってましたね」
「奉仕活動って三日前のような?」
「はい。あれとほぼ同じようなことを。大体一日十人前後でしたけれども」
皆呆気にとられた顔をしている。ノアとブラウは後ろで頷いている。
「毎日、ですか?」
サラが不思議そうに尋ねてきた。
「はい、毎日。あぁあとは神殿の『聖玉』への祈りも毎日。あれが一番大変でしたね」
「『聖玉』ですか?それは一体……?」
続けて尋ねられた。一応他国のかなり重要なことなんだけど、答えていいのかしら、と思ったけれども、知っている私を手放したのだから漏らされても仕方ないわよね。それぐらいのリスクはわかっているだろうし。
私はサラとメイラに『聖玉』について説明した。ハリーナ王国における防御の要であり、その力は『聖女』の祈りにより保たれている。
魔獣などの侵入もこの『聖玉』の力で防御しているはずだと。
「それは所謂力の増幅器のようなものでしょうか?直接その魔獣の侵入地に聖女様が防御の魔法をかけるのではだめなのでしょうか?」
「だめ、ではないのですけれど、その地に行くのが大変になりますよね、何箇所もあるし。神殿内の『聖玉』にさえ力を込めればその地に行かなくても防御できるので。ただその分、込める魔力の量は半端ないですけども」
「それを毎日ですか?」
はい、と頷く。
「え、でも他にも『聖女』様はおられるのですよね?リューディア一人が毎日しなくても分担すればいいのでは?」
サラがもっともな事を言ってきた。まさしくその通りなのだが。現にこのスーラジス王国では分担している。なんて説明しようか迷っていると横から声がかかった。
「ハリーナ王国の他の『聖女』や『聖者』はそこまでの力がないのだよ。一応微々たる光魔法は使えるけど、奉仕活動にでても一人が限度じゃないかな?それこそリューのようにピンポイントでどこを治療すればいいかはわからないからかなり時間がかかるだろうね」
思わずその声の持ち主、レオンハルト様を見てしまった。
「……よくご存知で」
思わず苦笑する。
「合ってた?」
「合ってます」
え、じゃあ、とメイラが手を挙げてくる。
「どうしてそんな方が『聖女』認定されているんですか?」
それももっともな質問です。どこまで言っていいのかな?ま、いいか。
「お金です」
「お金?!」
「はい。本来ならこちらスーラジス王国と同じで大神官様が神託を受けて、それに該当する者を国中から探し出すのですが、私を神託後、大神官様が代替わりし、今現在ハリーナ王国にいる『聖女』『聖者』の方々は新しい大神官様の神託です。七人いらっしゃいますが、何故か平民の方はおらず、全員貴族のご子息、ご令嬢ですね」
「……そんなことってあるんですか?」
「何故か、あるんですよ」
私が笑って言ったことで皆察した。
「じゃあもしかしてその大神官の方も」
「貴族の出身ですね。一応神官として修行はされてたはずなのでそれなりにある、とは思っていたんですけど」
「……そんな簡単というか、力がなくても大神官みたいな重要な地位につけるのですか?」
そう思いますよね、普通は。
「本来なら無理なのでしょうけれども、いくつかの、今の大神官にとってはラッキーな出来事が重なり、あれよあれよという間に決まりましたね」
私にしたらアンラッキーが続いたのだが。
「結局はお金ですね。大神官を任命するのも最終的には国王ですし、そちらと仲が良ければ。そして今の『聖女』様方も大神官のご実家と仲が良いお家の方々ですから」
私の話にサラとメイラは目を丸くしている。レオンハルト様は平静なので、このくらいはご存知なのだろう。
「え、じゃあリューディアがいなくなったら、どうなってるの?」
「どうなってるのでしょうね?とりあえず『聖玉』には毎日祈らないと見た目でわかるので誰かが祈っているとは思いますが」
「見た目?」
「一度遠くまで出かけていたことがあって、四日ほど神殿を留守にしてたんです。大神官には誰かが祈るようにとお願いしていったんですけど、結局は誰もしていなかったみたいで」
思い出して苦笑する。
「どうなったのですか?」
サラもメイラも興味津々だ。
「光というか輝きが半減していました。これはまずいと思ってすぐさま祈ったんですが、かなりしんどかったですね」
あの時は大神官に文句を言おうと思ったがそれどころではない、と必死に祈った。輝きを元に戻すのに髪の半分程色が変わったのを覚えている。まぁノアとブラウのおかげですぐに元通りだったが。癒やし時間はかなり必要だった。
流石に大神官もあの時のことを覚えているから、誰かに祈らさせてはいると思うのだが。
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