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24.教会にて


教会に入って聞こえてきたその声はとても聞きやすい、身体に染み込んでくるような優しい音だった。


 レオンハルト様に促され、奥まで進むと何人かの人影が見えた。真ん中の初老の男性を囲むように女性二人、男性一人だ。初老の男性以外は皆私と同じ様な服を纏っている。どうやらこの国の『聖女』『聖者』の皆様だろうか。


 となると初老の男性は……。


「お久しぶりです、ガイ大司教」

「お久しぶりですな、レオンハルト様」


 大司教と言ったか、ならばこの方は。


「リュー、紹介するよ。この方はガイ大司教。我が国の教会の取りまとめ役だ」


 大司教で取りまとめ役って所謂最高位、トップの方ですよね?一番偉い方ですよね?そんな方が何故……。


「初めましてリューディアと申します。よろしくお願いいたします」

 頭を下げると優しい顔つきで

「こちらこそがお願いする立場です、今日はよろしく頼みます。しかしこれはこれは本当に素晴らしい方ですな。全ての色を均等に持っておられる。そして全ての色が濃い。これ程ほどの方は見たことがございません、よく我が国にいらしてくださった。歓迎いたします」


 え、色?見えている?ということはこの方もかなりの……。


「ガイ大司教自身も素晴らしい光魔法の使い手であり、選別者でもある。後ろにいる我が国の『聖者』『聖女』達は彼の導きだ」


 やはり。言うなればハリーナ王国の先代の大神官と同じか。力のある者を探し出し、見分けられる方だ。


 今のハリーナ王国の大神官とは明らかに違う。


「もうただの老いぼれですよ。では皆待っていることですし、早速お願いできますか?」

「あ、はい、よろしくお願いいたします」


 ではこちらへ、と後ろにいた茶色の髪の『聖女』の方に案内される。レオンハルト様に無理しないようにね、と声をかけられる。広い教会の中を四つに区切り、ブースができている。私が座る場所を教えてもらい、着席する。


「何かご入用の物などがありましたら白い服を着た者に声掛けください。あと対応できないような患者が来られた場合は遠慮なく他の者に言ってください。大司教もおりますし、私達も対応いたします」

「ありがとうございます」


 茶髪の『聖女』は、では、と頭を下げて自分のブースに歩いていった。他の二人も各々の場所に向かっている。どうやらこの四人で対応し、大司教は後ろで見ている感じか。レオンハルト様も彼の隣に立っている。


 ノアが後ろからボソッと

「リューディア様が対応しきれない方は誰も対応できないと思うのですが」

 自分の主人が軽く見られたのが許せないらしい。

「まぁまぁ抑えて……先程並んでいた方々を診る限りは大丈夫かなとは思うけどね。あの女性以外は」


 入り口が騒がしくなり、順番に人が入ってきた。大体五人ずつほどか。私の列には女性と子供しか並んでいない。他の女性『聖女』の方々には男性も並んでいるのに。レオンハルト様が手をまわしたのかしら。あの母親に抱かれた女の子もいた。二番目だ。


 まわりを見渡すともう一人目の方を座らせて診断を始めている。ならこちらも始めますか。


 いちどストールを広げて、きちんと被り直す。その時に見えた白銀の髪と銀朱の瞳に皆視線が集まる。 


「では始めましょうか。手を乗せていただいてもよろしいでしょうか」

「あ、はい」


 一人目の女性は座るなり手を、と言われて少し驚いている。四十代後半くらいだろうか。他の人を見るにどうやら問診から(痛むところはないか、とかどこの具合が悪いのか)始めている。普通はそうかもしれないが、自分はそんなことはあまり聞かない、先入観無しで診察したいからだ。

 

 おずおずといった感じで私が出した両手のひらの上に右手を乗せてきた。


「では失礼いたします」

 そう声をかけて軽く握り、目を瞑る。光を流す感覚で彼女の身体の中に意識を走らせる。


 ゆっくりと瞼を開くと不安そうな女性がこちりを見ている。


「最近目眩の回数が増えてますか?」


 私が放ったその言葉にハッと驚いた表情を見せる。 

「あ、はい!そう、そうなんです!クラっとくることが多くて……少し休んでいれば治るんですけど。段々と回数が増えてきたような気がして」

「あとはそうですね、胸がつかえる感じがしませんか?」

「そうです、その通りです!まさしく今日相談しようとしてました」

 最初の頃の不安そうな顔がなくなってきた。あといくつか質問をすると、まさしくその通りという言葉が返ってきた。


「では治療を始めましょうか。もう一度手を握らせていただきますね」

「はい」

 今度はすんなりと出してくれた。先程より少し強めに握り、一気に魔力を通す。


「いきます」


 時間にして一分程度、弱くだが彼女の身体に魔力をめぐらす。身体全体の血管に力を巡らせるためだ。それを終えてから手を握ったまま話をする。話の間も魔力は通す。


「どうしても女性の方は年齢と共に色々なところに不調が出ます。それは避けられません。あなたの場合はどこが悪い、ではなく全体的に弱くなってきています。その中でも血流の巡りが挙げられます。あとは」

 と考えられる理由をいくつか上げて、日々の生活を少し見直すことでできる対処法を教える。


「今治療したことでかなり改善できたと思います。また症状が出るようでしたらお声掛けください」

「あ、ありがとうございます!」


 身体が軽くなったと嬉しそうに帰っていった。よし次はあの子だ。お母さんに抱かれている気になった子。


「座ってくれる?」

 優しく声をかけると頷いてくれたので、母親に下ろして椅子に座らせるように指示する。


「じゃあ少しだけ手を繋いでくれるかな」

 私は椅子を降り、膝をついて彼女を下から覗き込むように目を合わせる。隣に立っていた母親が慌てるのがわかる。でもこの方が話をしやすいのだ。女の子も一瞬キョトンとしたが、うん、と頷いて手を出してきた。


「ありがとう。ちょっとだけ待っててね、治してあげるから」

 そう言って目を瞑る。瞼を開いて母親に質問する。


「この膝の傷はいつ頃ですか?」

「あ、二週間ほど前に転んで。洗って傷薬はつけたんですけど、中々治らなくて。傷口は塞がったのですけど痛がって歩けないと」

「なるほど。わかりました、治療しますね。よく頑張ったね、もうちょっとの辛抱だからね。膝触ってもいい?」

 

 女の子が頷いてからそっと彼女の膝に手を当てた。




 


 

 





明日も更新予定です、お待ちしております。


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