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21.応接間にて 3


「何かありましたか?母上。ヴィラスも義妹達も」


 そう言って応接間に入ってきたのは第一王子で王太子のジークハルト殿下だ。

 王妃様に促されてヴィラス様の隣に腰掛ける。


「この場に呼ばれる理由が良くわからないのですが」

 と微笑みながら話しかけてきた。流石兄弟、似ている。


 王妃様が呼んでくれたのだ。お忙しい王太子を呼びつけられるのはこの方ぐらいだ。


「あなたが一番重要なのよ。ジークハルト、聞くけどもヴィラスの予定は把握してるの?」

「ヴィラスの予定、ですか?大体はわかっているつもりですけれども」

 何か?と言った顔をする。まぁ仕方ない。

「この先遠出の予定はある?視察とか」

「遠出ですか?ヴィラスはないかと。確認しますか?」


 ますます訳が分からないといった顔をしているジークハルト王太子殿下に王妃様はサラッと告げる。


「確認はいいけど、しばらくは遠出の予定はだめよ。安静にね」

「………え?それはどういう」

 と言ったところで気づいたのか、バッとヴィラス様の方を勢いよく振り向く。ヴィラス様は頬を少し赤らめて微笑んでいる。


「……もしかして…」

 ジークハルト王太子殿下の呟きに王妃様がヴィラス様の方を見ながら頷く、彼女も頷き、下腹部に手をあてながら口を開く。


「……御子が」

 消え入りそうな小さな声だったが、隣に聞こえるには充分だったみたいだ。王太子殿下は一瞬動きを止めたあと、ガバッとヴィラス様を抱き締めた。


「………った!やった!嬉しいよ、ヴィラ!」


 パチンと王妃様の手にあった扇の音がする。


「落ち着きなさい!ジークハルト」


 その声で我に返った王太子殿下は、ごめんごめんとヴィラス様から離れる。


「嬉しいのはわかりますが、あなたがヴィラスに負担をかけてどうするのですか!抑えなさい」

「……すみません」

 と苦笑する顔も兄弟そっくりだ。


「まだ初期らしいので発表はまだよ。この場限りで。わかったわね?」

 王妃様の声に部屋の中にいた騎士も女官も侍女も皆頭を下げる。流石だ。


「でもよくわかりましたね?」

 ジークハルト王太子殿下がもっともな質問をする。

「リューディアのおかげよ」

「聖女様の?」


 そこで王妃様な先程からの一連の流れを説明してくれた。自分の足首の痛みを当てたこと、そして治してくれたこと。ランティアとヴィラスも診てくれて、気づいてくれたことを。


 流石にとても大事なことなので(リューディア)だけでなく、信頼のおける女性医療師も呼んで確認してもらったこともきちんと説明してくれた。


 するとジークハルト王太子殿下は私の方を見て頭を下げてきた。


「ありがとうリューディア殿。弟のことだけではなくヴィラスや母のことまで。他国に来て心細いことも多々あると思うがどんなことでも力になるから弟同様頼ってくれてもかまわないからね」


 弟そっくりの眩しい笑顔で言われるとありがとうございますとしか言えない。


「しかし凄いのですね、聖女の力というのは」

 感心したように呟くランティア様に王妃様も続く。

「本当ね。まだ初期の初期でしょう?気づくものなの?」

 王妃様が呼んでくれた女性医療師に尋ねる。

「いえ、医療師から言わせてもらうと無理ですね。妃殿下自体がまだ気づいてない段階ですし、お元気ですから診療もしませんし。私も少し光魔法は使えますが、使い手といたしましても妃殿下の異変には気づきません。リューディア様は気づかれたとか」

「そうね、ヴィラスに大丈夫かと声を掛けていたものね。あの時点で気づいていたの?」

 王妃様の問いかけにどう説明しようか悩みながら声を出す。


「そうですね、一瞬ですが何て言えばいいのでしょうか、光が見えるといいますか、違和感を抱くといいましょうか。今までその違和感が間違っていたことはないので自分を信じております」

「へぇ~凄いんだね。それは助かりますね母上」

「本当だわ。レオンハルトにではなく私がリューディアを欲しいくらいよ。スーラジスに来てくれて感謝だわ。手放してくれたハリーナにも感謝しないとかしら」

 と笑っている。少しは捕虜らしいことが出来たかしらと思いつつ、お茶を一口いただく。

 

 まぁまだ初期なので予断は許さないが、無事育ってくれて生まれてくれればお世継ぎだ。王位継承権の順番が変わる。レオンハルト殿下の継承権順位も下がり、彼の思惑通り国王にと担ぎ出そうとする輩も少しは静かになるだろう。


 そうなると婚約者(仮)もしなくてよくなるかしら、と思っていると一瞬胸の奥に何か走った。何だろう今のは。初めての感覚だ。あれ?何だ?胸に手をあてる。


 コンコンとノック音が響いた。女官が確認しに行き、戻ってきて王妃様に何か告げている。


「……本当にあの子はリューディアのことが大事なのね。いいわ入室を認めます」

 溜息を一つつきながら王妃様が何か許可を出している。女官は頭を下げて、また扉に向かっていった。



本日もありがとうございます!


もし少しでも面白いなと思っていただけたらブックマーク、いいね、評価の☆を★★★★★にしていただけると励みになり、とても嬉しいです!よろしくお願いいたします。


明日も更新予定です、お待ちしております。

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