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13.宿屋にて 4


「要因、ですか?その黒獅子のお姿が?」

「はい。獅子自体は王族にはよく現れるのでそれほどではないのですが、問題は色でして」

「色?黒色が、ということですか?」


 はい、といいながらレオンハルト王子殿下は座り直した。


「実は第一王子である兄も獅子に変化します。色は茶色です。ちなみに第二王子は獅子ではありません」

「同じ獅子ならどうして?」

「先程も言った通り黒色が珍しいからです。今まで獅子は何人もいましたが皆茶色です。それが普通なのですが、何故か私は黒でして」


 確かに黒色の獅子などは聞いたことがない、初めてだ。


「違う色が生まれたということは何かあるはずだ、と訳が分からないことを言い出されましてね、こちらとしてはいい迷惑です」

 顔は笑っているが、目は笑っていない……?

「ただ単にこじつけでしょうね、私を担ぎ上げたいだけの。そしてその配偶者に娘をねじ込み、あわよくば王太子妃にと」


 なるほど。第三王子に嫁がせてもあくまで三番目だ。第一王子である王太子に子ができれば、ほぼほぼ王位継承権など無くなるに等しい。


 だが、第三王子がその獣人姿を理由に次期国王にと祀り上げられれば一気に王太子妃、しいては王妃だ。そしてその子供は国王となる可能性が出てくる。

 国の中枢に入りたい貴族様にとっては美味しい立場だ。なるほど。 


「私はそんな立場は望んでいない。寧ろ今も王位継承権など放棄したいくらいなのです。政略結婚などまっぴらごめんです。ですので五月蝿い声を排除するためにどうすればいいか考えて、リューディア殿に婚約者になっていただこうと」

「……すみません、最後理解が追いつかないのですが……なぜ私が……?」

 多分眉間に思いっきり皺がついていたと思う。途中までは理解できた。最後の一言だけが理解できない。


「私が国内の貴族から婚約者を決めるとそこの家がどうなるかがわからない。今は中立かもしれないが他の家に取り込まれないとも限らない。ならば全く関係のない他国から選べばいい。そしてその相手の身分は問わない。問わないし、できればない方がいい」

「………その親からの干渉が入らないからですか?」

「その通りです。そしてこちら側にも牽制ができる、私には後ろ盾はない、もちろん持つ気もない、とね」


 確かにその通りだ。全く肩書きのない婚約者だとその後干渉される可能性はないだろう。


 だからあの条件、だったのか。


 ハリーナ王国での身分、肩書きを放棄してくること。


 あの条件によってやって来た私は貴族でもなくなり(元々養女だが)、『聖女』とは言っても平民扱いだ。そんな者が第三王子の婚約者になってもはっきりいって第三王子側には何のメリットもない。後ろ盾にもならない。


 要は国内外に対するアピールだ、私は継ぐ気はないという。


「ちょうどと言っては何ですが捕虜の方々がおられたので、これはいいかなと交換条件にさせていただきました。あなたの意思を無視したことだけは謝ります」

「いえ、それは大丈夫です。寧ろ自由にしていただいてありがとうございます」

「あぁそう言えばあちらの第二王子と、でしたっけ?よろしかったのですか?私より王位継承権順位は上かもしれませんが」

 真剣にではなく少し笑っている。わかって言っているのだ。ならばこちらも。

「上かもしれませんが、人としてはかなり下かと」

 

 なるほどと笑っている。


「では問題ないということで、これより私の婚約者という立場を引き受けてもらえますか?何不自由ない生活は保障いたしますし、足りないものなどは言ってくだされば準備いたします」

「わかりましたが、捕虜という肩書きで入国したのに王都についたら婚約者になっているっていうのはおかしくはないのですか?」

「その点に関してはいくらでも。リューディア殿さえ了承していただけるのであれば、後はこちらに任せてください」

「ならば私はこの先何をすればよろしいのでしょう?捕虜だと思っていたので戦場や教会などに派遣されると思っていたのですが」

「そうですね、それは追々説明いたします。まずは王都につくまでは景色や街並みを楽しんでください。なんなら買い物でも」

 とてもにこやかな表情で言われた。


「あぁあとは」

 スッと立ち上がってあっという間に私の前に来た。速い。構える暇もなく、彼の右手が頬辺りに伸びてきた。


「髪にふれても?」

「え?あ?」

「その一部分だけ黒いのが気になりまして。それが魔力を使った反動が現れる箇所なのですね。あれだけの回復(ヒール)を使ってそのくらいということはリューディア殿はかなりの魔力持ちですね」


 ストールを纏っているため黒くなっている部分は見えないはずだ。どうしてわかった?


「……見えましたか?隠していたつもりなのですが」

 彼はフッと優しく微笑む。

「隠れてますよ。でも少しだけですが反動の魔力が漏れています。よほどの者じゃないと気づかないでしょうが」


 それはすなわちレオンハルト王子殿下はよほどの者ということで。


「すみません、魔力が回復すれば色も戻りますので」

「……癒やされればよろしいのでしたっけ?」

「……っ何故それを…」


 知っているのか。ノアとブラウ、三人以外には知られてないはずだ。どうして?


「すみません、少し調べさせてもらいました」


 とても軽やかに、涼やかな微笑みとともに告げてきた。







 





本日もありがとうございます。

明日も更新予定です、お待ちしております。


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