7話 話と冒険の準備は長くなる
歩く二人の右手にはみすぼらしい武器屋と防具屋が見える。いかにみすぼらしいと言っても、新しいプレイヤー達を迎えるには十分なほどの武器が揃えられているらしい。この周辺をうろつくなら買っておいて損はないらしく、初心者へのアドバイスがまとめられたウェブサイトには、ここで装備を整えるのはマストとのことだった。
また、職業によって武器や防具が制限されるということはないらしく、
――性能はもちろんのことだが、最終的には、それぞれが好きなものを使えば良い――
インターネットのカキコミでこの言葉を見つけたときは思わず胸が高鳴った。
「イズさんの職業はシューターって表示されていたけど、どんな職業なんですか」
とタイチがイズに聞く。
「シューターは中・遠距離を得意とした職業で、現在シューターの職業人口はそれほど多くはないみたい。この世界にはユニークな職業もあるんだけど、残念ながらシューターはそれほどレア度が高いわけじゃないみたい。スキルを簡単に説明すると、シューターはぶち込むんだ」
「そんなのわかるんですね」
これまで職業システムがあるオンラインゲームをあまりプレイしたことがなかったのでいまいちピンとは来ていないものの、技はシンプルでわかりやすいと思った。
「アイ・オーの公式サイトでは職業についてはあまり語られていないんだ。インターネット上に、個人が開設している攻略サイトがあるんだけど、そこにはこれまでに発見された職業についてもちょくちょく更新されているから暇があれば一度見てみたら良いと思うよ」と言って、タイチにブログのURLを渡すと、タイチは歩きながらそのURLをメモ帳に貼り付けた。
「アイ・オーが始まってから二か月くらいが経ったと思うけど、今のところ主が発見している職業は、なんと60くらいあるらしい」
攻略サイトを管理している人間を主と呼んでいるのはどこか笑えないだろうか。笑いながら考えてはみたが、現時点で職業が60近くも発見されているということは、その数を優に超える職業があるのだろう。ファイルの中身を解析することができれば、すべての職業を発見できるのだろうが、どうやら挑戦したことのある人間がいないのか、そういった話は聞かないらしい。この大陸のどこかに地道な調査をしている人がいるのかもしれない。
立ち止まったその先に、道具屋らしき建物を見つけたが、どうやら今日は閉まっているらしい。
――魔王も脅威の品揃え、大陸一の〇〇商店――
看板は古く文字も掠れており、肝心の店名を読み取ることはできなかった。