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第三章「起業」その2

フレアとリナウスの屋敷を訪問してきた金髪の女性と若草色の髪の毛の女の子。

まずは、金髪の女性の自己紹介から話が始まります。

「お初にお目に掛かる。私の名はエシュリー・ザウナ・シルビム。貴殿らの活躍はよく耳にしているぞ」


 丁寧な言葉遣いにフレアは思わず面食らう。

 貴族が身分の低い者に対して礼儀を払うことはほぼない。

 フレア自身も初見で蔑んでくるような田舎貴族と対面したことは幾度もあった。


「は、初めまして。フレアと申します」


 フレアが頭を下げる他方で、リナウスは訝しげな顔でエシュリーをじっと眺めてからこう言った。


「ザウナね。クロミア大陸北部にザウナ公国というのがあったような気がするんだがね」

「うん。平和でとても住みやすそうな国だったよね」


 フレアはリナウスと旅の道中で訪れた過去を思い出す。

 かつてランメイアの参謀として仕えていた軍師のザウナが建てた国で、寒冷地のせいか冬の気候が厳しくはあるも誰もが助け合いながらも暮らしており、治安が良いだけで無く福利厚生もしっかりとしている、という印象を彼は抱いていた。


「隠しても仕方ないであろうか。私はザウナ公国の第二公女である」

「公女というと、お姫様ってこと?」


 フレアがまじまじとエシュリーを見つめると、彼女は恥ずかしそうに顔を背ける。


「そう言うのはよして貰いたい。私など王位継承権もない、ただの一族の厄介者である」

「そ、そうなんですか」


 エシュリーの青い瞳が悲しみに曇っているのを悟り、フレアは言葉を濁してその場をごまかすことで切り抜ける。


「おっと、そんな事情があるとは知らなかったね。私のことはどうせ知っているだろうから自己紹介はしなくてもいいかい?」

「うむ、大丈夫である」


 エシュリーはそう答えながらも、リナウスの格好が気になるのか不思議そうな眼で観察している。


「そいつは助かるよ。ところで――」


 リナウスは頻りに少女を気にしていた。

 侍女にしてはあまりにも弱々しく、失礼ではあるがむしろお荷物になっているといった印象しか浮かんでこない。

 もしや、エシュリーの家族なのだろうかとも思ったが、二人の顔に共通点がまるで見当たらない。

 道を彷徨っており、たまたまエシュリーに保護されたのではという説明の方が理に適っているような気さえした。


「あのさ、ちょいといいかい?」


 リナウスは声を掛けるも、少女は怯えているのか、エシュリーの後ろへ隠れてしまった。

 フレアからすれば本能で凶悪な存在を恐れているのだと思っていたが、リナウスの反応からするとどうにも様子がおかしい。


「やれやれ」


 リナウスが呆れた顔で肩を竦めていると、エシュリーが申し訳なさそうな顔をする。


「アルート。どうしたというのだ?」


 アルートと呼ばれた少女は今にも怯えた子犬のような目でじっとエシュリーの顔を見上げていた。


「その子は?」

「私の――、まあよい。後で説明しよう」


 エシュリーはアルートを落ち着かせるためか、その頭を丁寧に撫でている。


「それで私達に何の用かい? もしや、私の首を取りに来た、のかな?」


 リナウスはクスリと笑う。

 その楽しげな笑みは、まさに獲物をなぶる猛獣のようであり、アルートは恐怖のせいかすっかり腰砕けになっている。


「め、滅相もない! 貴殿らの行っている活動についての話を聞きに参ったのだ!」


 エシュリーが声を張り上げると、背後にいるアルートがビクリと身体を震わせている。


「理由は?」

「後学のためである。貴殿らの行動に不満を持つ者もいるが、私は素晴らしいことだと思っているぞ」

「フレア、どうするんだい?」

「悪い人には見えないかな。折角のお客さんだし、とりあえずは話を伺おうよ」

「フレア殿、申し訳ない」


 深々と頭を下げるエシュリーを見ていると、フレアの警戒心も自然とほぐれていく。


「それじゃあ、屋敷の中で聞こうかね」

「感謝する」

 フレア達がエシュリー達を伴い、庭を抜けて屋敷へと向かう最中、彼女は怪訝な顔をする。


「立派な屋敷ではあるが、この庭は……」

「これかい? 私なりのこだわりでね。気にしないでくれたまえ」

「僕は気になるのだけれども」

 

 エシュリーが嫌そうな顔をするのも無理はない話だ。

 庭は誰がどう見ても荒れ果てている状態で、名前もわからない雑草が好き勝手に背比べをしているありさまだ。


「庭師を雇う金を勿体ぶるのはわかるのであるが、せっかく庭がある以上手入れぐらいはしたほうがよいと思われるぞ」

「そうかもしれないね。ただ、私としては名も無い草だろうが、皆頑張って生存競争に勝ち残ったからこの庭の居住権を得た以上邪魔するのは可愛そうだな、と思うのさ」

「随分と慈悲深いものであるな」

「ふふ、こう見えても私は弱者の味方でね。さあ、こっちさ」

 

 確かに庭の印象は最悪としか言いようがないが、屋敷の中に入ると廊下に飾られた鎧や壺をエシュリーは眺めつつ、感嘆の声を上げていた。


「中々豪勢な屋敷であるな」


 ソファーに腰掛けたエシュリーは感心している。

 その一方でアルートは興味なさそうな顔をしており、その手はしっかりとエシュリーの手を握っていた。


「ふふ、中古物件だがね」


 やがて、応接間へとたどり着くと、それぞれがソファーに向かい合う形に腰掛ける。


「はて、早速伺ってもよろしいであろうか?」

「は、はい」


 毅然とした態度でエシュリーが話し出すその隣ではアルートがちょこんと座っており、飾られている風景画を眺めている。


「単刀直入に尋ねよう。貴殿は何故亜人達を守るため尽力されているのであるか?」

「ええっと、その――」


 本当に単刀直入に聞いてくるとは。

 ひとまずフレアは頭の中を整理することにした。

フレア達は亜人達を守るために活動していたようです。

さて、一体どういう経緯があったのでしょうか?


面白いと思いましたら、いいねやブックマークをしていただければ幸いです。


それでは今後ともフレアとリナウスの活躍をお楽しみに。

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