2,王都到着
あー、焦った…。まさかシエルド商会の人と出会うとは思いもしなかったな…。しかも、とんでもないもの渡されたし…。
ちなみにシエルド商会とは、代々アルベルト王国の王族がお世話になっている商会で、さっきの商人は俺の側近だった人の弟だ。そして商会の代表取締役で、まぁ、いわゆるお偉いさんだ。幼い頃に数回しか会ったこと無かったからうろ覚えだったけど、ホントにそうだったとは。しかも渡されたの一部の地位が高い貴族か王族ぐらいしか持つことを許されないコインだし。扱いづらいよ…。
はぁ…、もう王子にはなれないのに『王子として』って言われても困るよ。
そんな呑気なことを考えてたら眠くなってきた。王都にはもう少し掛かるだろうし、しばらく寝てよ。多分この後は強い魔物が出るようなところ通らないだろうし…。
そうして俺は寝た。
「…ん…んん…」
「起きてください…もうそろそろ着きますよ」
「んぁ…ん…わかった…」
フィアに揺すぶられて起きた。気がついたらもうすぐ王都に到着しそうだった様で、珍しくぐっすり寝ていた。
「おはようございます。珍しくぐっすり寝ていた様でしたが、寝不足ですか?」
まだ眠い体を動かして、荷物を整理してたらそんな事を聞かれた。
「いや…ちょっと疲れてただけだから大丈夫」
そう返すと「それならいいですけど…」と、不満そうな顔をしながら返ってきた。これは全然信じてない時の顔だ…。これは一人になれなくなってしまったな…。
しばらくしていると3年振りに戻って来た、どこか懐かしい王都が見えてきた。そうすると馬車が王都から少し離れた場所で止まった。
どうやらここで到着の様だ。俺たちは馬車を降りて、入るための行列を素通りして門に向かった。
門に着くとやっぱり門の騎士に絡まれた。
「あの、ちゃんと列にお並びください。横入りは違反ですよ。できないのであれば、力付くで並ばせますけど」
「いえ…、僕は王様からの依頼を終わらせたので戻って来たんですけど」
「なら、依頼書を見せてください」
と言われたので、バックから偽物の依頼書を取り出して見せた。本物の依頼書はあるけど本名とかが書いてあるし出すのが面倒だから偽物のにしといた。
「…確認しました。では、通ってください」
「ありがとうございます」
そう言って通ろうとしたら…
「とでも言うと思いましたか?偽物ではなく、本物の依頼書を見せてください」
気づかれてしまった。
「…何をおっしゃっているのですか?」
仕方がないから、全力でとぼける事にした。
「ですから、本物の依頼書を見せてください」
「いえ、本物も何もそれしか持っていないですよ?」
「とぼけないでください。これは精巧に作られていて一見わからないですが、全くの偽物です」
なんかこのままだと捕まりそうな気がしてきたから、本物を見せようか迷っていた。
「本物を見せてください。それとも見せれないのですか?」
「いや、そういう訳ではないのですが…」
「じゃあ見せてください」
と門の騎士と揉めていると何やら見知った顔が出てきた。
「そこまでにしなさい」
出てきたのはこの国の騎士団の団長、シルビア・メーデンさんだった。
「こんなところで何をしているのですか?」
シルビアさんがそう聞くと門の騎士が答えた。
「えっと、この旅人が本物の依頼書ではなく、偽物の依頼書しか出さなくてですね、本物を出せと言っているのに出すのを渋っていて」
「そうなのね。何で出さないのかしら?リアン君」
「だって、本名書いてあるじゃないですか、依頼書って。だからですよ」
「そう、わかったわ。通してあげてミサエラ」
門の騎士はミサエラと言うらしい。
「え?!何で通すんですか?!」
「だって彼、私の命の恩人だし。それに、彼Sらランク冒険者よ?」
えぇ…それ言っちゃダメなんだけと…。
「…っ…?!わかりました。通ってください」
(えぇ?なんかすごい睨まれているんだけど…)
そう思いながら俺たちは門を通った。
「ご主人様、バレてもよかったんですか?」
と、フィアにそんなことを聞かれてしまった。
「いや、全然良くないけど、彼女には恩があるからね。大丈夫だよ。それより王城に行こっか」
俺たちは一番最初に王城に顔を見せることにした。
王城に向かう道中雑貨屋によったり、屋台によったり、フィアにスカーフを買ったりしながら王都を散策していた。
「そろそろ王城に着くよ」
「はい。…なんだか緊張してきました」
フィアは目の前の王城を見て緊張してきた様だ。
「大丈夫だよ。王様は優しい人だから」
そう言う俺もだいぶ緊張していた。一度深呼吸をしてから門番に偽物の依頼書を見せた。すると思ったよりすんなり入れさせてくれた。
王城に入ると3年前と変わってなくて、戻って来たんだと実感した。そして謁見の間に案内された。謁見の間には王様や複数の騎士や大臣がいて、俺たちのことを見つめていた。騎士の中にはさっきのミサエラという
騎士もいた。すごいにらまれてるぅ…
「よくぞ戻ってきた」
そう言って王様は俺たちの事を見下ろしていた。俺たちは急いでその場に跪いた。
「顔を上げよ。久々に顔が見たい」
と、言われたので俺たちは顔を上げた。王様は俺たちの顔を見ると安心した様な笑顔を向けてくれた。
「ところで、依頼書を出してくれ本物のをな」
本物の依頼書を王様に手渡した。
「たしかに」
「お待ちください。そちらの依頼書本物ですか?」
するとミサエラから声がかかった。
「というと?」
そう聞かれたミサエラはさっきの出来事を話した。
「そいう訳でそちらの依頼書本物かどうか確認してもよろしいですか?」
王様は依頼書を渡してミサエラ俺たちに質問をした。
「なぜ偽の依頼書しか見せなかったんだ?」
「えっと、依頼書って本名が記載されていますよね?お恥ずかしながら本名をあまり知られてほしくなくてですね、そういう訳で偽名が書かれている偽物を見せていたのです」
「陛下、そのものは忌子で、かつてこの国を裏切った者ではないですか!」
だから嫌だったんだよな…この騎士…。
「何を言っておるのだ?そんな訳があるはずないだろう、何故ならそのものはとっくの昔に死んでいるからだ」
「ですが!」
「儂を嘘つきといいたいのか?」
「いえ、そういう訳では…」
「ならもう下がれ」
騎士はこちらをにらみながら下がっていった。
「それよりもおぬしらと対等な立場で話したい。だから騎士や大臣は出ていってくれ」
「っ?!陛下危険です!もし何かがあったら…」
「儂はでてけと言ったんだ、話せとは言ってない。わかったら出てけ、良いな?」
王様はそう言って俺たち以外の人を外に追い出した。
しばらくして王様は俺に「お帰り」と言ったから俺はただいまと言った。
「リアン、無事でよかった。みんな心配していたぞ」
「ごめん、ちょっと落ち着いてからじゃないと帰れなかったから」
「ところで、そこの獣人の女性は誰だ?」
王様もとい父さんはフィアのことを聞いてきた。しばらく緊張で硬直していたフィアがやっと喋った。
「私はフィアと申します。えっと、ご……、リアン様とはお付き合いさせていただいております。フェンリル族の族長の娘で、リアン様とは3年ほど前に捨てられているところを拾っていただいてそれ以来一緒に旅をさせていただいておりました」
「そうか…、リアン…。母さんを呼んでくるからそこで待っていろ」
そんなことを言われたから真実を伝えた。
「いいよ。父さん以外には手紙で知らせているから。それに父さん以外にもフィアのこと紹介したいし」
「え?」
「そういう事だから、フィアのことよろしく。じゃあ、僕行かないといけないところあるから」
そして俺はフィアを置き去りにして王城を出た。
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