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the Conditional Room  作者: 毛利圭斗
2/2

誤解と信念

この第二話で完結。


「2/3のほうか。」

ドアから入ってきた30代と見られる男はそう言うとすぐに部屋を出ようとした。

「待ってください。妹は…妹はどうなったんですか!」

半分叫び声のようにして、必死に呼びかける。

「言ったはずだ。指示に従っていれば危害は加えんと。用事は済んだからすぐに帰してやる。」

突然解放を宣言され戸惑うが、納得はいかない。

「用事って…。一体なんの目的でこんなことを…。」

男は少しため息をつき、正面を向いて問いかける。

「少年、年は?」

「17歳、高校2年生です。」

「数学は得意か?」

「…苦手ではないと思います。」

「じゃあ、『条件付き確率』って知ってるよな?」

「はい。一体何の話なんですか。」

条件付き確率。去年数学で習ったことだが、数学の先生が興味深い話をしていたのでよく覚えている。たしか、二人の兄弟うち一人が男子だったとき、もう一人も男子である確率は1/2ではなく1/3であるという話ー。頭の中で何かが繋がった。

「この状況、まさか…。」

「おお、優秀だな。その勤勉さと頭の回転に免じて、全部話してやろう。まず、ある兄弟のうち一人が女子だったときに、もう一人が男子である確率。これはわかるか?」

「2/3です。さっきあなたが言っていたように。」

「違う。この文章からではわからない。説明が不十分だからだ。例えば、街を歩いてる二人組にうち一人に声をかけ、そいつが女だったときにもう一人が男である確率はいくつだ?」

「…それは、1/2です。さすがに。」

「そう。そこを誤解している人が多い。ただ『二人のうち一人が女子だった』といっても、その一人に直接聞いて女子だとわかっただけでは、条件付き確率もクソもない。もう一人が男である確率も女である確率も等しく1/2だ。では、さっきの答えが2/3になるのはどういう状況だ?」

「二人の区別がついていない状態で、二人のうち少なくとも一人は女子だとわかっているとき…ですか?」

「そうだ。その状態だと、男一人女一人の確率が2/3、女二人の確率が1/3となる。それが可能なのは、今経験したような特殊な状況でのみだ。ただ、二人を区別した時点で確率は1/2になる。このことを誤解している人が多い。よくある例でいうと、コインを二枚投げてそのうち一枚が表であることを確認したところでもう一枚も表である確率は1/2に決まっておろう。」

男は穏やかな口調だが熱く語っていた。言いたいことは言い終わったのか、再び小さなため息をついた。

「それで、僕たちでその実験をしてどうするんですか?」

「お前らが解放されれば警察に通報される。そうしたらニュースかなんかでこの話は全国に広まる。ついでにここで行われた中身も広まってくれれば、条件付き確率について誤解してるやつも少しは減るって感じだ。」

「なぜ、そこまでしてこんなことを…。」

「そこまでは教える義理はない。そんなことよりこのドアの向こうで妹が待ってるぞ。突き当たりの部屋にお前らの荷物も置いてある。さっさと帰りな。」

そう言われ走って部屋を出たが、ふと立ち止まり振り返る。

「あなたの名前は?」

「そうだな…。『令和のフェルマー』とでも名乗っておくか。」

「ダサ。」



条件付き確率は高校1年生の数学の範囲です。まだ習ってなかったり、習ったけど忘れちゃったという人はネット等で調べてみるといいかもしれません。


最後力尽きて終わり方が雑になってしまいました…。

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