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6/9

6 どちらが好み?

 デミス・ノキウス公爵令息はモテた。幼い頃から美しいと言われていたし、お茶会の誘いは後を絶たない。


 家の都合で行かなければならないお茶会に致し方なく出てみれば、その家のご令嬢からベタベタされることは当然で、そのご令嬢の目が離れた瞬間、他のご令嬢に茂みに連れ込まれることなど当たり前のようにされていた。


 家に送られてくる恋文は、いつの頃からか読まずに捨てるようになった。


『本当の私のことも知らないくせになぜ熱烈な恋文など送ってこれるのだろうか?』


 そう悩んだ結果、相手は自分の身分と顔しか見ていないと結論付けたデミスは自然に女嫌いになった。


 両親にはしつこいほどに縁を持つように言われていたが、どうしてもその気になれず、デミスの中では爵位は弟に譲ってもいいとまで思っていた。


 デミスが十五歳の時、王宮でのお茶会に招待された。第一王子であるライルとは同い年だ。翌年に学園へ入学するにあたって、側近を選ぶのだろうと、ノキウス公爵は息子デミスに説明した。


 ノキウス公爵の説明のように王宮の庭園には男しかいなかった。デミスの他にはユシャフ・オプーレ侯爵令息とビーレル・メッテル侯爵令息がいた。選ぶというより、呼ばれた時点で選ばれていたようだ。


 お茶もそこそこに騎士団長子息ビーレルとライルが剣の稽古に行ってしまった。仕方なく、デミスとユシャフが二人でお茶していた。


「あら? ライル王子殿下はいらっしゃいませんの?」


 美しさと愛らしさを併せ持つ少女が庭園に入ってきた。だが、その少女はデミスを見てもユシャフを見ても特に目を輝かせるような仕草はなかった。

 ユシャフはデミスとはタイプが違うが美男子である。ユシャフは大きな愛らしい目は少し垂れていて、整った顔つきは女の子のようにカワイイ。

 デミスは、いろいろなお茶会で会っているユシャフとは人気を二分していることをわかっている。なので、どちらにも反応しないその少女を不思議に思った。ユシャフもそう思っているようで、大きな目をさらに大きくさせて驚いていた。


『体格のいい男が好みなのかもしれないな。ここにビーレルがいないから騒がないのだろう』


 デミスは女なら見目のいい男がいれば、騒いだり秋波を送ったりするものだと思っている。

 その少女がライルの名前を出したことなどすっかり頭にない。なぜなら、ライルは三人と比べると容姿は普通であるのだ。

 ライルのために補足するが、決してブサイクではない。


「お嬢様。執務室かもしれませんよ」


 お付きのメイドがその少女に声をかける。


「でも、こちらにいらっしゃるから同席するようにと王宮メイド長に言われたでしょう?」


「王妃様のご指示とは仰っていましたが」


「あの、どなたをお探しですか?」


 二人の少女の会話からユシャフが声をかけていた。


「これは失礼いたしましたわ。

わたくし、コーカス公爵が長女ポーリィナと申しますの」


 美しいカーテシーで挨拶をしたポーリィナにデミスもユシャフもびっくりした。おそらく同じくらいの年齢だと思われる少女がこんなに完璧なカーテシーをするのを初めて見たのだ。


「こちらはわたくしの付き添いのミーデです」


 ミーデはお仕着せを着ており、メイドらしいお辞儀をした。ミーデはまだコーカス公爵家のメイド見習いになったばかりでポーリィナの専属ではないが、ポーリィナがミーデを気に入り何かと一緒に行動していた。


 デミスとユシャフも自己紹介をした。


「わたくしたちは王妃陛下がこちらでライル王子殿下とお茶をするようにと仰いまして参りましたのよ」


「そうですか。殿下はビーレルと剣の稽古に行ってしまわれました」


「そうでしたのね。では、わたくしたちは下がりますわ。失礼いたします」


『え? 帰るのか? これはチャンスとばかりにここに居座るのではないのか?』


 デミスとユシャフの驚きにも我関せずとポーリィナはミーデとともに帰ってしまった。小悪魔笑顔を最後に見せて。

 普段女性のいるお茶会で何度も愚痴り合ったデミスとユシャフは顔を見合わせてポーリィナのありえない行動に首を傾げていた。


 ポーリィナはイケメンには全く興味がない。なぜなら、ポーリィナの兄はデミスやユシャフに勝るとも劣らないほどのイケメンだからだ。ポーリィナ自身も美しい。顔は三日で飽きるという。この時点ですでに十五年見ているポーリィナはイケメンに飽きている。


 ポーリィナはそんな二人の容姿よりも、ポーリィナを、いや、自分たちと同じくらいの少女を見ただけで一瞬侮蔑の眼差しをした二人の自信過剰さに嫌悪感を抱いたほどだった。


〰️ 〰️ 


 学園へ入学すると、すぐにライルがポーリィナを三人に紹介した。容姿でも頭脳でもライルに勝っていると思っているデミスはいくらライルの婚約者とはいえ自分の容姿に靡かないポーリィナが信じられなかった。


 しかし、ライルの側近候補と言われる三人はポーリィナとの接点は増えていった。ポーリィナはさすがに公爵令嬢で、まさに淑女の鑑だ。浮ついた様子の少女たちに囲まれていたデミスはポーリィナがとても魅力的に感じた。

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