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3 おかしな人が三人も?

 ポーリィナは徐ろに立ち上がって、出口の扉に向かった。

 そして、出口の前で立ち止まり振り返る。

 デミスは呆気に取られていたが、ポーリィナが振り返ったことで笑顔に戻った。


 ポーリィナは頭がクラクラして息を絶え絶えにしていたが、気合を入れ直してデミスの目を見た。


「わたくしとノキウス公爵令息様との婚約などありえませんわ。

ゼビデッド。ノキウス公爵令息様がお帰りです。丁重にお見送りして」


 ポーリィナは家令ゼビデッドに『とっとと追い出して!』と指示を出すと、デミスにお辞儀をすることなく踵を返して部屋へと向かった。


 ゼビデッドがポーリィナに頭を下げると同時に、コーカス公爵家の私兵が入室してデミスの脇を囲んだ。デミスは暴れたが、コーカス公爵家の私兵も家令ゼビデッドも並の鍛えられ方ではないのだ。デミス如きでは揺らぎもしない。

 デミスを馬車に放り込み、馭者をも馬車に放り込み、私兵の一人が馭者を務めてデミスの家ノキウス公爵家の屋敷に向かった。

 後に二頭の騎馬私兵が伴い、馬車から逃がすこともなかった。


 ゼビデッドは王城に辞表を出すべく出仕したコーカス公爵へ執事を向かわせた。さらにデミスが持ってきた薔薇の花束を焼却するようにメイドに指示を出した。


 ポーリィナは精神的疲労で、メイドに支えられながらフラフラと部屋に戻るとソファーに横たわった。メイドがテキパキとお茶の用意をした。


「ねえ、ミーデ。わたくしの勘違いでなければ、ノキウス公爵令息様はわたくしとの婚姻を希望されていたように聞こえたのだけど?」


 メイドのミーデはポーリィナに遠慮することなく眉を顰めた。


「そうですね。

どうやればあのような考えになるのかさっぱりわかりませんけど、そのようでしたね。

昨日のアレでお嬢様との婚姻を希望って頭おかしいです。今までそんな素振りなかったですよね?

というか、希望していたというより、決定事項のようにおっしゃっていましたよ。

本当に何を考えているのでしょうね?」


 ミーデはポーリィナと同い年の子爵家次女で、学園に入学した三年前からポーリィナ専属メイド見習いをしてきた。二人は学園では友人としていつも一緒にいた。


「よかったわ。理解できないのはわたくしだけかと思っていたから」


 ポーリィナは起き上がって紅茶を口にした。ホッと落ち着く。


「いえいえ、学園でのお嬢様を知っている私でも理解できませんでした。家令様も戸惑っておいでだと思いますよ」


 コーカス公爵家では、昨日の卒業パーティーでの様子を使用人も含めて全員が状況把握していた。


「お嬢様。しっかりとお断りになり、立派でした」


「ありがとう。ミーデ」


 ポーリィナは部屋に戻ってきてからやっと少しだけ微笑むことができた。


「この後、お約束が二つございますが、いかがいたしましょう?」


「了承してしまったもの。会うしかないわ」


「家令様に頼んでもよろしいのでは?」


「うーん。ゼビデッドとミーデがわたくしから離れないでいてくれれば大丈夫よ」


 ポーリィナは来客の訪問理由への興味に勝てなかった。


「それはもちろんでございます。無理はなさらないでくださいね」


「ありがとう。頼りにしているわ」



〰️ 〰️


 午後一番での来客ユシャフ・オプーレ侯爵令息もデミスと同じ内容だった。


 ユシャフがポーリィナとの婚姻を望んでいるようなニュアンスが出た時点で早々に追い出した。


〰️ 〰️ 


 午後三時すぎの来客ビーレル・メッテル侯爵令息などは、玄関でいきなりプロポーズを始めた。冒頭の様子である。


「ポーリィナ嬢! 待たせたな。俺たちは結婚できるぞ!」


「断固お断りいたしますわ」


 ポーリィナは食い気味に断った。


「なっ! なぜだぁ!」


 三人目ともなれば、コーカス公爵家の私兵はビーレルの脇に構えていたので、その場で羽交い締めにし、馬車へと詰め込んだ。


 ポーリィナはビーレルが玄関を出るのを見送ることもなく、ミーデに支えられながらヨタヨタと部屋に戻った。


〰️ 



「なんなの? なんなの? 新手のイタズラ? 三人共どういうつもりなの?」


「ポーリィナ様って、天然小悪魔なのかもしれませんね……」


 ミーデは友人として話をするため、ポーリィナと反対側のソファーに座りお茶を飲んだ。


「天然小悪魔って何?」 


「今、巷で有名な恋愛小説本に出てくるモテモテなヒロインですよ。美人系またはかわいい系で、スタイルがよくて、いつも笑顔で、相談にものってくれて、お菓子作りも得意なんですよ。

ほら、ポーリィナ様そのものでしょう?」


「え? それってほとんどの高位貴族令嬢に当てはまると思うわよ」


「お菓子作りなんて、やる気次第でしょう?

一応婚約者だったライル王子殿下に強請られて作っただけよ。それもいやいや、ね」


「それでも、手作りで、きちんと三人の分も包装していましたよね」 


「だって、いつもライル王子殿下と一緒にいる三人なのよ。無視はできなかったでしょう?

一度目はライル王子殿下だけにしたら、チラチラチラチラと見ているのですもの」


 ミーデは苦笑いした。

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